落とした装備品の再利用
「早速ですが、フレアウルフ二匹との戦闘が始まってしまいました」
たまたま、ダンジョンの出入り口を徘徊していたフレアウルフ二匹が、冒険者と目が合ってしまったのである。
今回の冒険者は、単独だった。
片手剣を両手で構える金髪の男だ。
「はあっ!」
男はフレアウルフの一匹に降りかかるが、ダメージが入っていないようにみえた。
装備品が弱いのだろうか。
見た目は茶色っぽい。一応SRの武器でありそうなので、フレアウルフにダメージは与えられるはずなのだけど。
『燃えろ、燃えろ』
『燃え上がれ、冒険者よ』
容赦ないフレアウルフ二匹は男を取り囲み、ぐるぐると回り続ける。
「暑い……マズいな……」
男はその場でひざまずく。
熱気により、徐々に男の体力を奪っていく。
「打開策……は……」
何もしなければ、いずれ力尽きてしまう状況に陥っていた。
「よし。この一撃に、賭けるしかない!」
男は全力でフレアウルフに斬りかかろうとした。
だがしかし、剣による攻撃は虚しくも空振りしてしまう。
『燃えろ、燃えろ』
フレアウルフが突進して、男は大胆に転倒する。
そのまま噛みつかれてしまい――。
「ぐあーっ!」
男は持っていた剣を落として、リスポーンした。
これにて戦闘終了。私は、男が落としていった装備品の詳細を確認する。
土の剣か。フレアウルフに対しては、全然ダメージを与えれないことはないが有効打でもないので、単なるパワー負けとみて間違いない。
「とりあえず回収しておいて……」
SRの装備品は、思ったより手持ちが少なめである。クレイキューブの地下迷宮でこれまでに倒された冒険者が落として言った装備品の大半がノーマル、若しくはレアであったからだ。
再利用するにも、レア度の低いものから考えていくほうが丸いかもしれない。
それで、どうしようか。
レア度の低い装備品は、モンスターにでもしちゃう……?
でも、モンスターにして見た目が良さげと思うのは、剣くらいである。
「とにかく、作ってみよう!」
今回は実験検証ということで、装備品のランクがRである鋼の剣をひとつ手元に用意した。
「グールを生み出した要領で行けるはず……」
足元に魔方陣を描き、その上に鋼の剣を置く。
闇の加護をもたらす精霊の源を使ったモンスターの作成、これでもし上手くいくなら相当便利なものである。
欠点は魔力を操る行為なので、作り過ぎると私自身が疲れてしまうことだ。
――この大地に幸をもたらす闇の精霊よ、我の声に耳を傾けたまえ。
詠唱を終えてから、鋼の剣を確認してみる。
見た感じ、これといって変化は見受けられない。
「叩いてみようかな?」
試しにエグゼクトロットの先端で、鋼の剣を叩いてみると。
『ワガハイの眠りを妨げる者は、何者だ?』
鋼の剣が、ぷかぷかと浮かび上がった。
「いきなりすみません。ご迷惑をおかけしました」
『いやいや、特に気にしてないぞ!』
持ち手付近から目が開いていった鋼の剣は、もはやモンスター当然である。
このモンスターの名前は……。
『ワガハイは、リビングブレードだぞ』
くるくると縦回転する仕草は、なんだか可愛く思えてくる。
「リビングブレードというモンスターの名称は、ギルドで見せてもらった一覧になくて」
『それは……そうか。そうだな、ワガハイに触れてみなっ!』
ピタッと止まったので、私はリビングブレードの表面を触ってみた。
特に代わり映えのない鉄の武器だ。
でも、わざわざ私に触れさせるのには、何か大きな理由があるのだろうか。
その山勘は的中する。
「えっと、これはっ!」
黒の欠片が交換可能になりました。
そのようなアナウンスが流れたので、私は急いでアイテムの交換画面を開いてみた。
「黒の欠片が追加されています!」
早速、エネミーポイントを使って交換した。
『それを使えば、ワガハイをたくさん呼べるぞ!』
「とりあえず、ダンジョンに送りますね」
リビングブレードを一匹、ダンジョンの地下一階層に送り込んだ。
それから、魔方陣の上に黒の欠片をひとつ置く。
「さっきみたいに、レア度の低い剣を置いて……」
魔力を少量注ぎ込む。すると、リビングブレードがまた出てきた。
さっきの奴とは、別の個体で間違いないだろう。
「一つにつき、一個で……魔力もそんなに必要ないとなると……」
これなら大量生産できる。
もっとたくさん作って、ダンジョンを賑やかにしていきたい。
「パルトラ、どうしたんだ?」
「えっとですね……。フィナがいない間に、クレイキューブの地下迷宮に出現するモンスターのレパートリーが増えたのです」
「ああ、ごめん。見てなかった。お花摘みに行ってたから」
「リビングブレードという、剣の形をしたモンスターを作ったのですよ」
「聞いたことのないモンスター名だ。やっぱり、パルトラは凄いな」
「お褒めのお言葉、ありがとうございます。これによって余った装備品をどう扱うかの問題は解消されたも当然です」
「そうか、それはよかった」
「それでですね、運用方法の情報共有ですが……」
私はログに書き込んだ。
レア度の低い剣は、モンスター化して運用。
剣以外のレア度の低い武器を、今後ゾンビ系のモンスターに持たせる用として一定量キープしておく。
レア度の高めな装備品はアレイに聞き渡して分解させ、SSR装備品に作り替える。
このSSR装備品は、ダンジョン内の宝箱に入れる用である。
その他、余ったものはエネミースコアに変換させておく。
「うむ、悪くないな。あとは宝箱に関してだな……」
「それはですね、今からアレイさんの元に行きます!」
風神の和太鼓を片手に持って、アレイの工房へと向かう。
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