東の大陸に行こう
北のクラフトルームは、北の魔王城にあった。
リスポーン先の地点からとても近い位置にあるので、私は人の目を気にしながらクラフトルームの中へと入っていく。
マスター権限を、ニケに変更。
サブマスター権限がヴァルハリーザになっていることを確認すると、すぐに北のクラフトルームから出ていった。
それから、南のクラフトルームでもやることがある。
ここのマスター権限も、ニケに変更しておく。
変更したら、南のクラフトルームから出ていった。
「おう、用事は終わったのか?」
声を掛けてきたヴァルハリーザは、いつでも出港できるように準備を済ませていた。
「私がすべきことは終わりましたので、東の魔王城へ向かいましょうか」
「よし、じゃあ……出港だ!」
ヴァルハリーザが東の方角へ振り向くと、船が動き始める。
目指すは東の大陸。
どんな景色が広がっているのか楽しみで、ワクワクが止まらない。
「そういえば、ピリコさんとフウリンさんがいませんね」
「あの二人なら用事があるから本日ログイン出来ない、と言ってたな」
「そうですか、残念です」
「その代わりだが、モブ共がたくさん乗り込んでるけどなっ!」
『うっすー!』
ヴァルハリーザの船には、私以外にもたくさんのプレイヤーたちが乗っていた。
見た目が緑のゴブリンと、魚の頭を持っているインスマウス族というのと、ピンク色の肌が見え隠れするリザードマンの三種類がいた。
各々で近隣の魔王を支持してきたプレイヤーたちで間違いないのだけど、数が多すぎて逆に暑苦しくも思ってしまう。
東の大陸とみられる地形が薄っすらと見えている以上、距離はそんなにない。
到着するまで我慢できないことはないのだけど、何か良い方法はないものだろうか。
船の進行させる上で邪魔にならない場所があれば……。
「堕天使さん、こっちに来て」
細めのヒモが浮かんでいて……魔力の流れも感じ取った。
「声の主は……エルトリディスさん……?」
「操縦席にいますので、是非とも」
「行きます!」
即決した私は、操縦席に向かった。
ヴァルハリーザの船にある操縦席は室内となっており、扉が一枚あった。
それを開けると、見覚えのある商人の後ろ姿があった。
「お待ちしておりました。堕天使ルトラさん!」
こちらに振り向くと、すぐにほほ笑む。
「やっぱりエルトリディスさんでしたか……なんでここに」
「とりあえず、お隣の席が空いてますので座ったらどうですか?」
「あっ、ありがとうございます」
私は着席する。
その横にいるエルトリディスが、ヴァルハリーザの船を操縦していた。
操縦といっても、大きな進路方向がない限り、ハンドルに軽く手を添えているだけで大丈夫そうだった。
「到着までどうぞごゆっくり」
「そうだね……。このまま眺めながらゆったりと出来そうです」
賑やかすぎる外とは違い、ここでなら身体を休めることが出来そうだ。
窓の外には赤い海の景色が広がっている。
ゆらゆら、ゆらりと船が揺れるも、ゆりかごの中で揺らされているだけという感覚だったので気にもならない。
このままのんびり、プチ船の旅。
大きな襲撃とかは発生せず、ヴァルハリーザの船は目的地へ順調に進んでいった。
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