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打開策を探して


「……というか、私の出番はなさそうですけど」


 二十くらいの相手に囲まれているとはいえ、斧を黒光りさせていたヴァルハリーザに前にはあまりにも無力すぎた。

 おまけに痺れを切らしたのか、ヴァルハリーザの背中の裏で、フウリンが雷のハンマーを振り回していた。

 ヴァルハリーザに加勢していたのだ。


 こうなってしまえば、北の魔王を匿おうとする集団が壊滅させられるのは、時間の問題となる。

 ヴァルハリーザとフウリンが暴れ倒して、素材アイテムだけが地面に落ちていく。

 私は気休め程度に火の球体でも飛ばそうと考えたが、これから先の消耗を考慮して使用を差し控えた。


「お二人さん、お疲れ様でした」

「お、おう……!」

「何よ。全然相手にならないわね」


 戦闘を終えたヴァルハリーザは北の魔王城がある方向を気にして、ため口を漏らすフウリンは不完全燃焼であることを肌身で感じていた。

 全然歯応えがなかったのは否めませんが……。


「ここから先は、北の魔王が統括する領地です。私たちの目的が北の魔王さんを奪回するということならば、それ相応の準備する場所が必要ではないでしょうか?」

「敵とみなした者は全部オレが倒す」

「では、魔神ダイダロみたいなのが急に目の前に出現して襲ってきたら?」

「それはだ……」


 ヴァルハリーザが黙り込む。


 説教じみたことを言っているつもりはないのだけど、ピリコがいない現状では私がヴァルハリーザのことを見ておかなくてはいけない。

 南の魔王であるヴァルハリーザが強いのは間違いないのだが、不測の事態にまで完璧に対応できるとは言い難い。

 特にピリコ自身が何かを隠しているおり、それが明るみになった際には、ヴァルハリーザが理性を乱して暴走するなんてことも想像出来てしまう。


 そうならないようにするためにも、いまここで心身ともに休めれる拠点を作っておきたい。

 一つの提案を、ヴァルハリーザに持ち掛けているのだ。


「よ、要するにルトラは探索しやすい拠点地がほしいってこと?」


 ヴァルハリーザより先に理解を示してくれたフウリンは、ちらちらと船の様子を伺っていた。


「み、南の大陸から出港した際には乗り込んでいた冒険者さんは、一体どこへいかれたのですか」


 ヴァルハリーザに対して向けられた言葉なのだが、私も思わずあっ、と口出ししてしまった。

 北の大陸を目指した上でのことだ。抜け落ちていた何かのひとつが分かってスッキリしたと同時に、現状では戦力面で厳しいことを痛感する。


「戦力がこの場の三人なのは否定できないが……仕方ない。西の大陸の制圧が完了してからは、その地で更なる発展の為に冒険者は西の大陸に全部置いてきた」

「な、なんて勿体ないことを!」

「仕方ないだろう! 西の大陸に置いてきた冒険者には魔王城のレベルアップに必要な物事をしてもらっている。あれはあれで必要不可欠なことだよ」

「うむむ……!」


 フウリンは、ヴァルハリーザが決めたことに納得されていない。


「ひとまずフウリンさん、落ち着いて下さいね」

「わ、わかったわ。すーはー」


 深呼吸をした直後のフウリンに、小声でごめんなさいと謝られた。

 私が中間に入って事なきを得られるのであれば、それに越したことはないのだけど……。


「さてと、ここにいる皆で状況を共有できたことですし、拠点地の作成をしましょうか」

「ここはピリコの管轄内だが?」

「一時的に借りるだけです。最終的にはヴァルハリーザさんの管轄となるのですから、心配は何も要りませんよね?」

「ああ、そうだなっ!」


 ヴァルハリーザが開き直っていたことを目視してから、私は拠点地の作成に取り掛かる。


 拠点地といっても、いま必要とされるのは、シクスオの各ダンジョンに存在しているクラフトルームに相当するものである。

 クラフトルームへのアクセスを行える場所さえ確保できれば、ピリコに対抗するための戦力を作成可能となる。

 それに加えて素材アイテムも必要になるが……さっき倒した冒険者が落としていったものがある。数が限られているので長期戦は望めない。


 いま一度、作成したいものを頭の中で整頓する。


 偵察のモンスターの作成及び地形確認。

 前衛部隊の作成。

 隠しダンジョンの調査隊。急に現れた大型モンスターの警戒。


 この三つを実行すれば、総戦力として見ても太鼓判を押せるラインになると思う。


 あとは、情報が欲しい。

 クラフトルームに繋げるためにはどうすれば良いのか。


 天翔る銀河の(アンドロメダ)創造天使(クリエイト)を使うと良いのかもしれないけど、確証はない。

 機密性が高い情報を取り扱っていて、信頼もそれなり築けるであろう者がいてくれたら。


「あっ……」


 該当しそうなのがひとりだけいた。

 その方は、恐らく船の中にいるはずで……。


「ヴァルハリーザさんの船で、かくれんぼの攻略をしないといけませんね」


 私は赤い堕天の翼を広げて、ヴァルハリーザの所有物である船に乗り込む。


お読みいただき、ありがとうございます!

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