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青い水晶を壊して


「なあっ……」


 フウリンは言葉を失う。

 素人ながら、狙いは完璧だったからである。


 飛ばした弓矢が、青い水晶を吊るしていた細い紐に命中すると、プツンと切れる音がして青い水晶が垂直に落下してきた。


 そのまま待機していると、ガラスの破片が砕けたような音が聞こえてきた。


「これで、仕掛けのひとつが割れたのね?」

「フウリンさん、そうです。青い水晶は粉々になってしまいましたが……」


 恐らくは、これで大丈夫である。


 ただ、紐で吊るされている青い水晶はまだまだ残っている。

 これらを全部破壊することで何が起きるかまではわからないが、フウリンにとって何かメリットでもあるのだろう。


 あれっ、もしこれをやって結果的にフウリンが魔王としての素質を上げることになったら、ヴァルハリーザやピリコは西の魔王に勝てなくなるのかな?


 そこは別に深く関与しなくても、大した問題にはならなさそうだけど……。


「次、壊してくれないの?」

「フウリンさん、ちょっと待ってくださいね」


 その場で見上げた私は、狙いを定めやすそうな青い水晶を探す。

 壊れていない青い水晶がどれくらいあるのかは未知数だけど、弓矢を作成するのに魔力が必要になるだけで手間もかからない。

 このギミックをクリアするには、ごく一般的なファンタジー世界と比べても幾らか楽になりそうだ。


「次に届きそうなところは……少し上でしょうか。階段を上りましょうか」


 私はフウリンに訪ねた。


「えっ、あっ。別に大丈夫よ!」

「フウリンさん、どうしたのですか?」

「こんなにあっさりと青い水晶が壊れるなんて、お、思ってなかっただけです!」


 何かに対してムキになろうとしているフウリンが、まっすぐに歩いていく。

 フウリンの行く先には、階段が設置されている。どうやらここから上の方へと上がれそうである。


「足元が暗めだから、あたしが先に進みます!」

「では、あの水晶に狙いをつけているのでちょうどよさげな位置への道案内をお願いします」


 私は指をさして、次なる標的をフウリンに明かした。


「べ、別に……頼りにされても困るだけだし!」


 顔を赤らめるフウリンは、足の動きが早くなる。


「恥ずかしいのかな?」

「違います! ただ、その、何というか……現実世界と違って優しい人がここには多いというか。ベータテスト版というのもあると思いますけど!」

「そうですね。ベータテスト版が終わって正式リリースとなると、もっと多くの方が遊びに来られるでしょうし、それだけ優しい方に出会えると思います」

「それは当然よ。その為には、この地下エリアのヒミツを解かないといけないから」


 フウリンは足を止める。


「ここからなら行けそう?」

「ふむ……」


 足元を見ると、だいぶ階段を上ったようにも思える。


 私が標的にしている青い水晶との位置は、ほぼ水平である。

 吊るしている紐もくっきりと見えるので、思ったより悪くはなささそうだ。


「やってみます」


 私は魔力を使って弓矢を生み出すと、肩の力を抜いて解き放った。

 狙いは正確だった。やや右に逸れたように思えたが、魔法の効果が乗っている弓なので、紐に直撃しなくてもプツンと切れてしまう。

 そのまま落下して、ガラスが割れた音が響き渡った。


「これで二つ目ですね。青い水晶はあとどれくらいあるのでしょうか?」

「そ、そうね。あと四つだったと思う」


「四つですか。全部でむっつ……」


 フウリンが解こうとしているギミックに対して、微妙にいやらしさを感じたが、特に気にしないでおこう。


 それはそうと、このギミックを解除するといったい何が起こるのか。

 想像は容易く出来なかったけど、少しずつワクワクしてきて。


 小鳥が鳴くように、何かを口ずさみたくなった。


お陰様で第五章スタート!!

お読みいただき、ありがとうございます!

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