表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで遊ぼう!! ~VRゲームの世界ですが、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので楽しくダンジョンを作りたいと思います~  作者: 愛原ひかな
第5章 西の魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

136/166

赤い海を泳いだ先に


 フウリンの居場所は何となく分かりそうだった。

 サクラ街道から道を引き返すと、殺伐とした原っぱがあるが、そこから海も見えるのである。


 この殺伐とした原っぱの道外れのところに何かあれば……。


「降りる場所でしょうか。行ってみよう」


 私は黒っぽい石の階段を、ぴょんぴょんと降りていった。

 徐々にだけど、塩気を感じさせてくる。


 やはり海が近いのかな?

 あとは、フウリンさんがいるかどうか。


「お待たせしました、フウリンさん!」

「あら、来たわね……?」


 フウリンは、西の方角に頭を向けていた。

 見つめている方向に、フウリンの目的地がある。


 そう、海の先。

 渡るには、船を使用するか泳いでいく必要がある。


「パルトラさん、さっき買ったのを……」

「えっと、はい」


 私は装備品変更の画面を出して、先ほど購入した赤いしましま模様の水着に着替えた。

 すると、フウリンが手をつないできた。


「人魚でなくても長時間泳げるようにするから、じっとしてて」

「わかりました」

「じゃあ、や、やるよ?」

「お願いしますね」

「もう、なんか気が狂いそうになる!」


 両目を閉じたフウリン。

 口を動かして、詠唱した。


 すると、フウリンと私の全身が青く光って、謎の加護を私に与えた。


「これで泳げるようにしたから、行くよ!」


 フウリンは私の手をぐっと握りしめたまま、赤い海の中に飛び込んでいった。


「むごっ!?」


 赤い海の中に入り込むと、視界がかなりぼやけたが、すぐに周囲を認識できるようになる。

 人魚の魔物タイプによる加護のお陰なのか、水中でも息が出来た。

 これなら海を渡れそうである。


「これが海の中の、景色ですか……」

「そうよ。西の魔王城までそこそこ距離があるから、泳ぐスピード上げるけど……」

「私のことは気にしなくても大丈夫ですよ。それにしても、これが魔物の能力ですかね」

「魔物型アバターには、最初に与えられるスキルに加えて、いろんな効果をもつ『モンスタースキル』というものが与えられるのよ。モンスタースキルはドロップアイテムの出現差に影響を及ぼさない仕様だけど、上手く使えば良いのだけど有効活用出来そうな場面が割と限定的というか」

「モンスタースキルに、ベータテスト版ねぇ……」


 シクスオにあるレアスキルとはまた別の枠として、能力を得てるのかな。

 私が持っているスキル、堕天の解明のヒントにもなりそうではあるが……。


「もう着くわよ?」


 フウリンが泳ぐ速度を緩めたかと思ったら、目の前に壁があった。


「ここが西の魔王城ですか? 早いですね」

「入り口はたしか……この辺りに触れたら、あっ」


 フウリンが壁を触っていると、白い光が解き放たれて視界を遮った。

 だけど、すぐに元通り。

 変わったとしたら、両足が地面についていることだった。


「ここが西の魔王城……」

「ええ、地下エリアだけど」

「魔王城の地下迷宮って感じですね」


 私はその場で見上げていた。

 遺跡らしい地形に階段があって、ところどころに青い水晶が設置されている。


 青い水晶は天井からぶら下げられている感じなのだが、直接手に触れられない位置にあった。

 ひとまず私は着替えて、元の服装に戻した。


「それで、私にお願いしたいことがあるというのは」

「す、水晶を壊してほしいのよ!」

「なるほどです。もしかして、あの水晶を全部壊すと、フウリンさんの目的を果たせるのですか?」

「果たせるかは分からないけど、ギミックを解除できるのなら進歩が進むというか」

「壊すと何かイベントみたいなのが、あるのですね?」

「一応、そ、そんなところよ! 早く壊して!」


 フウリンは私に対して命令してきた。


「もしかして、フウリンさんは自力で壊せないと」

「うっ……」

「フウリンさん自身が、魔法で壊しちゃうのは駄目なのですか?」

「試したけど、魔法が届かない。あと、あの水晶には魔法ダメージ大幅軽減があるから、隕石のひとつや二つをぶつけても壊れないと思う」

「魔法に対しても強度があるのか」


 水晶を壊すとしても、飛び道具が必要。


 商人がお勧めしてきた武器……弓ならきっと破壊可能なのかな。

 でも、シクスオの飛び道具は、基本的に魔法タイプに分類される。

 だとしたら、弓矢を飛ばしても魔法ダメージ大幅軽減されて水晶の破壊には至らない。


「いや、よく見てみると水晶と天井の間に紐のようなものが見える……」


 水晶を落下させれば、破壊可能化もしれない。

 つまり、狙うのは水晶本体ではなく、水晶のほんの少し上の部分。


「上手くいけば、水晶を壊せるかもしれません」

「えっ? パルトラさん、それは本当なの?」

「とりあえず、やってみます。あまり期待されては困りますけど」


 水晶を見つめる私は、商人の店で買ったばかりの弓を構えた。

 魔力を込めると、弓矢が勝手に生成される。


「いきますよ!」


 手元に強く引いていた右手を離すと、弓矢がひとつ、青い水晶に向かって飛んでいった。


本作品『ダンジョンで遊ぼう!!』の連載開始からちょうど1年となりました。


今回もお読みいただき、ありがとうございます!

これからも何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ