新たなる仁義なき戦いへ
「ここがオレの魔王城だ」
ヴァルハリーザが足を止めると、大きな和風の城がすぐ近くにあった。
入り口はそこそこ広い。
中に入ると、大きな四角形の部屋になっていた。
「ここが魔王城ですか。一応、屋台もあるのですね……」
私は周囲を見渡す。
サクラ街道と同じように、お店が並んでいて、とても賑やかだ。
「今のままでも、とてもすごいけどネ」
「オレはこれ以上の発展を望んでいる。もっと大きくしたいんだ」
ヴァルハリーザが画面を開けた。
「これを見てみろ」
「何ですか?」
「レベルアップに必要なアイテムだ」
ヴァルハリーザが提示してきたのは、特別ミッションの内容だった。
南の魔王城のレベルアップに必要なアイテム。
西の雷鳴石。
北の氷結石。
東の時空石。
「これってもしかして……」
「他の魔王を倒したら手に入る、レアアイテムだ」
ヴァルハリーザが、ピリコを見て渋い顔になる。
ピリコも、恐らく把握しているのだろう。
「ヴァルハリーザを倒せば、南の桜芽石が手に入る。ここは東西南北の魔王が争い、ひとつの王を決める戦いなのよネ」
「もしそれで、魔王が倒されるとどうなるのですか?」
「魔王としての資格を失うのネ。もっとも、ワタシは魔王の役をボイコットしてヴァルハリーザに協力しているけどナッ!」
「それは頼もしいですね。応援してますね」
「何を言っている……?」
「はい?」
「貴様の強さ……戦力は揃ったも当然だろう。さぁ、今から西の魔王城に乗り込むぞ!」
「ええっ!」
(のんびりとアマノハクを探そうと思ってたのに……)
「そうと分かれば、直ちに出発なのネ」
「ピリコ、船を出す準備はできているか?」
「それはバッチリだナッ!」
「よしっ、流石は我が家来だ。行くぞ!」
ヴァルハリーザとピリコは、勢いよく魔王城から出ていった。
ひとまず私は、二人の後をついて行くことにする。
見失わないようにだけ、歩くペースを調整する。
こうして、再びサクラ街道を歩き始めた。
暫くすると、港らしい場所が視界に入り込む。
「ピリコ、先に乗り込め。パルトラもだ」
ヴァルハリーザが両腕を組んでにやける。
立派な船は、いつでも出港できる状態にあった。
「乗るのは構いませんけど、海が赤くないですか?」
「それはここが魔界ダンジョンだからネ。特別仕様なのだナッ」
「特別仕様……この海風も……?」
「従来のシクスオでは、人間の五感のうち嗅覚だけは未実装だったはずだネ。それがこのベータテストにて、なんと実装されたのだネ」
ピリコは自慢げに語る。
(口の中で塩を感じるのは、それでなのか……)
にしても、赤い海の居心地は良いかと言われると……どうだろうか。
「さて、いま動けるオレの戦力がすべて乗り込んだことだし、出港するか!」
ヴァルハリーザが最後に乗り込んで、船は出発した。
進む方角は、西である。
そこに西の魔王がいるはずなので、西の大陸に乗り込んで倒しにいくのだろう。
レアアイテムの為に。
魔王城の発展を望んで。
こうして、新たなる仁義なき戦いの幕が開けた。
お陰様で第五章スタート!!
お読みいただき、ありがとうございます!




