大精霊の召喚方法
『迷宮神殿のダンジョンマスターよ。我ら、大精霊を召喚したいというのか』
(オシリスの声がするけど、いったいどこから……)
『驚くのも無理はないが……現在は、大精霊の手を貸せる状況にある』
(オシリスさん、それは本当ですか?)
『条件が二つある。ひとつめは、大精霊が持っている元々の姿を連想させにくい形態を創造すること。二つ目は、オから始まる果実を添えること』
(わかりました。詠唱の際に込めれば良いのですかね)
『それで構わない』
(ふむ……やってみます)
オシリスとの対話? を終えた私は、魔力を杖の先端に集めていく。
「オレンジ・オシリス・オシリスマン!」
精霊を召喚する魔法を頭の中でイメージして唱えると、私の目の前に人型のアバターが召喚された。
ひとことで述べるなら、黒髪の武士。
戦隊モノを意識しているのか、橙色のヘルメットが頭部に装着されていた。
ただ、オシリスマンが手に持っているのは、黒き羽を広げた混沌の杖のようなものである。
それをオシリスマンが強く握りしめると、風が吹き荒れる。
「なんだこれは、うあー!」
ゴブリンのアバターたちが次々に空へと吹き飛んでいく。
「ほう、敵が一瞬で」
「いなくなったネ」
ヴァルハリーザとピリコは感心していた。
「えっへん。これが堕天使のチカラです!」
周囲を警戒しながら歩き始めた私は、オシリスマンの姿をチラ見する。
ふっ。
オシリスマンがニヤけた。
『また手を借りたくなったら、召喚したまえ』
私だけにそう伝えたあと、サッと姿を消してしまった。
その素早さは戦隊ヒーローというよりかは、忍者のようにも思えた。
「とりあえず、拠点地に向かいましょう」
「そうだな。まずは拠点地に帰還して、それから開拓の続きだ」
ヴァルハリーザが笑うと、ピリコも笑顔になった。
ここから先、神殿の凸凹した道が暫く続いた。
それを乗り越えると、広い殺伐とした原っぱに辿り着く。
ここでお花をたくさん植えれそうな雰囲気もあるが、ヴァルハリーザとピリコは見向きもせず通り過ぎていった。
私はただ二人の後ろについていった。
「ここが、オレの拠点地だ」
ヴァルハリーザが足を止めると、桜の花びらが入り乱れた道があった。
「サクラ街道、それが魔王ヴァルハリーザの拠点地となる正式名称だネ」
「とても賑やかそうですね……!」
道の左右には商店街のようにお店があった。
その殆どがユーザーによって管理されているご様子。ここは天空都市セラフィマにあったエンジェルマーケットに近い構造になっていそうだった。
「ヴァルハリーザさん!」
「何だ?」
「サクラ街道ってお城とかあるのですか? 魔王の拠点地と聞いていましたが」
「それもあるが、まだ建設途中だ」
「たしか土地だけ確保していたはずよネ。レアアイテムが必要なんだとかネ」
「ピリコの言う通りだ。城の開発には、いくつかのレアアイテムを欲求されてるんだが、道のりは険しく……」
「それで完成に至ってないのですね。すみません、気を悪くしてしまいそうなことを伺ってしまいました……」
「気に知るな。ベータテストが終わるまでには完成に漕ぎ着けるつもりだ」
サクラ街道を先行して歩いていくヴァルハリーザは、心穏やかそうな顔になっていた。
周囲のプレイヤーは、そのヴァルハリーザの顔をみると元気が出るらしい。
ヴァルハリーザに対して、一礼してはどこかはしゃぎたそうにして立ち去っていく。
「皆さん、好きなようにベータテストに馴染んでますね……」
「そうだネ。そうだ、パルトラさんって、何かやりたいことってあるのかな」
「うーんと……」
サクラ街道の光景がとても新鮮だったので本来の目的たるものを忘れていた。
ベータテストを管理しているのは、アマノハク。
私を魔界に導いたのも、彼女である。
まずは、何のために私の元に出向いて戦いを挑みに来たのか。
直接お会いして、真相を確かめたいところではあるが……。
お陰様で第五章スタート!!
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