堕天しちゃいました
それにしても、リスポーンの待機中はとても不思議な気分になりそうだ。
真っ暗な場所に、シクスオのデモムービーが流れているモニターが目の前にあった。
復活までのカウントもある。
十五秒程度から始まったので、もう間もなくシクスオの世界に戻ることが出来る。
五、四、三、二、いち……。
カウントが終わると、眩い光が空間を包み込む。
「うっ……えっと……」
気がつくと、私は神殿のような見知らぬ場所にいた。
「おい。キサマ、何者だ?」
目の前にいた白髪交じりの青髪男性が、いきなり話しかけてきた。
その青年はゆらゆら揺れる黒いマントを身に着けており、顔が逆三角形みたいだった。
「えっと、自己紹介ですね。私はパルトラです。……貴方は誰でしょうか?」
「ハハ、よくぞ聞いてくれた。オレの名はヴァルハリーザだ。ここ、魔界ニブルワールを統括する新魔王様であるぞ!」
「ヴァルハリーザさん、ですね。ニブルワールってどこなの?」
「魔界ニブルワールは、天界と遂になる広大なダンジョンである。一応だが、運営の者によると未開拓な新ダンジョンだそうだ」
「未開拓な新ダンジョン……?」
紫色の外装だけど、神殿っぽいダンジョンというのなら、私の天翔る銀河の創造天使で全貌を確認することくらいは出来るはず。
左手を広げてみたものの、何故か言葉が止まった。
手の部分から違和感があった。
具体的な部分で言うと、左手の人差し指。
私の手では外せない、赤い指輪が付いている部分だ。
スキルを発動出来そう?
それはわからない。
念の為、ステータスを先に確認してみた。
「これは……」
私の固有スキルが、画面上からなくなっていた。
代わりにあったのは『堕天』というスキルのみだった。
その堕天というスキルの効果は、不明になっている。
「キサマ、どうした?」
「私、どうしちゃったのでしょうか」
「それはオレにも分からない。ただ分かるとしたら、新魔王になったオレの最初の仲間に相応しいということくらいだ!」
「えっと、よろしく……お願いします……」
「こちらこそよろしくだ。……ところで、キサマはいつまで座っているのだ?」
「あっ、えっと」
リスポーンした後からまだ一歩も動いていない私は、三角座りを無意識にしていた。
ひとまず、試さないといけない。
私が白い天使の羽を出せるかどうかを。
「羽が生えてきた。これはまた立派な赤い翼なことだ」
「赤い翼、ですか?」
「ふっ、そうだ。その赤い翼に赤い瞳、何なら髪の一部だって」
「えっ、えええっ!」
慌てて自分の格好を確かめる。
ヴァルハリーザの言う通り、全体的に赤色に染まっていた。
特に変わったのは、悪魔のような赤い翼になっていたことだ。
これってつまり……。
堕天使パルトラの誕生。
私、堕天しちゃいました。
さて、これからどうしようか。
固有スキルが使えないから、現状ではやはり……。
私は立ち上がると、ヴァルハリーザの両手を取り囲む。
「この後は、貴方について行けば良いのですかね?」
「ふっ、本当にオレについてくるつもりなら歓迎はするが……怖くないのか?」
「堕天してしまった以上……構いません」
「そうか、わかった。ではオレの拠点へ案内しようではないか」
ヒラリとマントを揺らすと、いつの間にか私に背中を見せていた。
暫しの間、ヴァルハリーザと行動を共にする。
これが最適解だと思わざる得なかった。
お陰様で第五章スタート!!
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