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大精霊の降臨


「あれが、大精霊で……」


 メイカは言葉を詰まらせそうになった。

 ついでに、とても悲しい気持ちにもなった。


 それは表情に大きく出ていた。


「大精霊は、おとーさん、そしておかーさんを殺した」

「メイカちゃん?」

「たとえここがまがい物な世界だったとしても、アタイは大精霊を許さない」


 メイカは、憎き想いを爆発させて魔法に乗せた。

 金色の網を右手に持って、空中に大きく飛び上がる。


「メイカちゃん……」


 メイカの周囲には、黄色い蝶が舞っている。

 それは、メイカの口から出た憎しみからは想像できないくらい輝いている。


「ほむっ。レアスキル、導きの蝶ですね」

「うん……そうだね、おねーちゃん」


 私の背中から声が聞こえてきたかと思うと、二人の少女が私より前に出てきた。

 片方の少女は金のスプーンを、もう片方は見たことある銀のフォークを持っていた。


「ソルルさんと、ルルナさん?」

「ほむっ。間に合ったような、間に合ってないような」

「おねーちゃん、今度からレアな道具は作ってもらうほうが良い」


「ルルナ、それは反省している。まさか伝説の鍛冶職人の手から禁断の楽器が、あっさり出てくるなんて思いもしなかった」


「禁断の楽器……? それってもしかして」


 ソルルの手には、鍵盤ハーモニカのようなものを持っていた。

 よく見てみると鍵盤部分がとてもいびつで、ほら貝のようなものを連想させる。


「ほむっ。禁忌の楽器、アルドモニカル。つまらない戦いを止める使い方は少々残念だけど、ジェイラのお兄さんを連れ戻すには、これしかない」


「おねーちゃんと一緒に……奏でる……!」


 ソルルとルルナは、演奏を始めた。

 それは以前、ノアが歌っていた精霊歌と非常に似ていた。


 これで大精霊のほうは、何があっても暴走しないはず。


「それじゃあ私は、メイカちゃんを……」


 天使の羽を動かして、メイカの元に飛んでいく。


『憎しみのユーザーに、精霊歌か。わけがわからない』


「アタイの人生に、大精霊さえいなければ!」

「メイカちゃん、ストップだよ」


 私は大精霊とメイカの間に入り込み、エグゼクトロットを取り出した。


「パルトラさん、そこをのけてください」

「メイカちゃんの気持ち、確かにわかるよ。けど、いますべきことは違うよね?」

「それは……」


『憎しみが、収縮していく……?』


「オシリスさん、ちょっと驚かせちゃったかもね。ごめんなさい」


『我は気にしない。そなたらこそ、我が地上に現れてさぞ混乱を招くだろう』


「そんなことないよ。それよりも……ジェイラというプレイヤーが消滅してしまったらしいけど、今からでもどうにか出来るかなって」


『うむ。その程度の望みは、容易い』


 オシリスは、口らしき部分から人型のアバターを吐き出した。

 それは全身真っ白で、ゼロとイチの数字が無数に飛び交っていた。


『我の内部は深淵ダンジョンそのもの。修復方法は知らんぞ』


「なるほど……。ありがとうございます」


 いま落ちていくアバターは、ジェイラで間違いない。


 ここまでくればやることはひとつである。

 シクスの修復で、元に戻すだけだ。




 †




 目が覚めると、呆れた顔でノアが待っていた。

 いや、髪が赤いのでシクスという名のアカウントでログインしているのだろう。


「ドジを踏んで、すまなかった」


 僕がまず口に出したかったのは、謝罪の言葉である。


「ジョーカーお兄様が無事でしたら、ノアはそれだけで嬉しいのです」


 ノアはこれといって怒ってなかった。

 それどころか、周囲がにぎやかでそれに釣られて笑顔が飛び出しているというか。 


「まぁ、これでも現実世界で二週間は目を覚まさしてないみたいですからね。ノアも心配しましたよ」

「二週間……僕の身体は大丈夫なのか?」

「それはニケ様の素早い手配で病院送りでしょうね。シクスオへのログインを続けて、栄養失調してしまうごく一部の重課金プレイヤー様と同等です」

「僕は復帰したばかりの身柄なんだけどなぁ……」

「えへへ。またジョーカーお兄様とシクスオで遊べますか?」

「それはもちろんだ」


 寝てばかりは駄目なので、ひとまず起き上がる。

 賑やかだったのは、たくさんのダンジョンマスターが集まってワイワイ何かの製作をしていたからだった。


「ところで、ここは何処だ?」

「ジョーカーお兄様、ここは天界クラムベルンのクラフトルームです。今は六カ国ダンジョンマスター交友会に向けての準備をしているところです」

「そうか……メイカはどこにいる?」

「メイカ様なら、パルトラ様のお傍にいますよ。今回は六カ国のダンジョンマスター以外にも、お手伝いしてくださる方が数名いて助かってますね」

「それならよかった」


 僕は、ダンジョンマスターの集まりに向かって、視線を泳がせる。


 メイカの他には、ソルルとルルナ。

 それ以外には、アルカナダイヤと赤髮の青年――タクト、アプフェルハート、緑髪の男の娘――クラブポン、フィースペードと呼ばれる者もいる。


 流石にニケの姿は見かけなかったが、きっと何処かで見ているはずだ。


「パルトラさんに、新たなシステムログを観測しました」

「ネフティマちゃん、何かな? えっと、ぎくっ……」


 ログを確認したパルトラは、心の底から悲鳴を上げそうになっていた。


「またレアスキル獲得のお知らせ……。これでよっつ、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので楽しくダンジョンを作りたいなー」

「うわ……おかーさんの本音が駄々洩れですね」

「このゲームの私って本当に何なのかな? というか、メイカちゃんはどうして私のことをお母さん呼ばわりしているのかな……」

「それは内緒なのです」


 メイカは笑う。もう、なんの迷いもない。


 そこにネフティマの解説が加わる。


「パルトラさんの四つ目のスキルはエレメンタルサークル。解放条件は大精霊との接触を図ること」


 効果は、自分を中心とする円形に入ってきた精霊に応じて、あらゆる行動に追加効果が発生するようになる。

 このサークルは一定時間で消失する。


「使い道、難しそうだね……」

「パルトラさんの新たなスキルは、精霊魔導士が傍にいれば、割と使い勝手がよさそうに思えるけど」

「ソルルとルルナちゃんね。ダンジョンそのものの難易度も考えないとだけど、一応検討はしてみよう」


 パルトラは鋭い目つきで、ソルルにとルルナに視線を送る。

 賑やかさは、まだまだ続いていきそうだ。  



「さてと、僕は一度ログアウトするよ。現状、僕自身がどうなってるか確かめないとだし」


「そうですね。ノアもお供します」


「ああ、よろしく頼むよ」

















 この日から約一週間後。


「七色の宝石たちよ。暁の空に舞い上がれ――」


 大きな銃声が響き渡ると、僕の愛用するいつもの銃から七色の光弾が解き放たれた。

 これは、六カ国ダンジョンマスター交友会の開演宣言となる合図だ。



これにて本作品は完結です。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!!



こうしてひとつの物語が終わってしまうと、少し寂しいところがあります。

ダンジョンで遊ぼう!!のストーリーは元々三十万文字くらいのスケールで書こうとしていたので、自分自身としては満足しています。



~今後の活動について~

次に書く小説の題材はまだ決めてませんが、ハイファンタジーあるいは現代を舞台にしたファンタジー設定が絡む事件性のあるものか。

新作を公開したらお知らせしますので、またその時は何卒よろしくお願いします。

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