六つの鍵とダンジョンマスター
「その鍵はどこで手に入れたのかな?」
「ニケという方から受け取りました」
「ニケさん……」
ニケが関わっているということは、ジェイラは仕事として隠しダンジョンを探索したということかな。
その最中に、何らかの問題が発生してジェイラが消えた。
ひとまず、そのように推測しておく。
とりあえず、ノアが来るまで待ってみる。
「あの……その……」
「メイカちゃんだっけ? 何か言いたいことがあったら遠慮なく言ってね」
「この世界のダンジョンマスターとお話したいことがあって。この鍵を貰ってから、はっきりと理解したけど……」
「ふむふむ。それは、何かな?」
「この六本の鍵は、ダンジョンマスターが持っておくべきだってことを」
メイカは立ち上がった。
ジェイラが消えていった、悔しさの感性を押さえつけて。
「だから……まずは一本。パルトラさん、お願いします!」
「えっと、わかりました」
私は鍵をひとつ受け取った。
なくさないようにだけ、気を付けたらよさげだろう。
「そろそろ来る頃合いかな?」
「パルトラ様、お待たせしました」
オシリスのギルドに、ノアが顔を出してきた。
「ノアちゃん。至急、他のダンジョンマスターにも来てもらうように出来ないかな?」
「パルトラ様、珍しいお願いですね。わかりました」
ノアは慣れた手つきで、各ギルドマスターにメッセージを送った。
「パルトラさん、他のダンジョンマスターさんはすぐ集まりますかね?」
「それは大丈夫、かな……?」
「移動用の和太鼓アイテムを所持しているはずなので、すぐに来ると思いますよ」
ノアがそう言った矢先に、次々と魔方陣が出現した。
ルークとエマ。
セレネ。
キラリ。
ギベオ。
各国のダンジョンマスターが、一瞬でこの場に集まった。
「初めまして。アタイはメイカです」
メイカは、ダンジョンマスターに対して順番に鍵を渡していく。
「諸事情があって、アタイはジェイラという方と一緒に、大精霊が眠っているという隠しダンジョンに入りました」
『隠しダンジョン……?』
私とノア以外の皆が一斉に、戸惑い始めた。
隠しダンジョンのことを知らないのには無理もない。
「その隠しダンジョンですが、そこでジェイラは消滅してしまいました。大精霊との接触は愚か、システムの不条理に触れたみたいで」
「なるほど。それで急にお兄様のアカウントが消滅したのですね」
「えっ、知ってたのか……?」
「フレンド登録画面からですけど。でも、ジョーカーお兄様がせっかくシクスオに復帰されたのに勿体ないですね」
「なんとか、出来るのか?」
「ノアはいったんログアウトします。また来ますので、少々お待ちください」
と言ったノアは、シクスオからログアウトしていった。
そしてすぐに、ノアと同じ服装をした、赤毛の髪をもつ美少女がログインしてくる。
「こちらのアカウント名は、シクスです。修復用アカウントになるのですが、この姿で人前に出るのは極力控えたいですね」
「赤ノアちゃんだ!」
「パルトラさん、あまり大きな声で通称を話さないでください……恥ずかしいので」
顔を少し赤くするノアにお構いなく、メイカは続きを喋ろうとしていく。
「その鍵は隠しダンジョンを開くためのアイテムです。ですが、お願いがあります」
『お願いか……』
「同じタイミングで、ダンジョンマスターの皆様が鍵を使ってください。場所はこの世界の各国にあるギルドです」
メイカは話し終えたのか、その場に座り込んで大きく息を吐いた。
「メイカちゃん、お疲れ様ですね……」
自分の出身国となるギルドに、鍵を差し込む。
それが、ダンジョンマスターにしかできないことのひとつなんだろう。
「皆、やろう。きっとすごいことが起こる気がする」
私がそう言うと、他のダンジョンマスターが一斉にワープする。
それぞれの国で鍵を使う。
タイミングはダンジョンマスターの共有メッセージで楽勝だ。
私はメイカから目が離せない気がしたので、ノアが仕切る。
「それでは行きますよ、いっせーのーで!」
六つのギルド各場所から、ダンジョンマスターが一斉に鍵を使用した。
開かずのルームの扉が開いて、色が飛び出していった。
火の鉄道都会フェニクルは、赤。
水の都アクエリアは、青。
大地の農園帝国ベフュモは、黄色。
神風の集落トルードは、緑。
天空都市セラフィマは、白。
迷宮神殿オシリスは、紫。
それぞれの光は球体の形になった後、異形に姿に変えつつ実体化していく。
大精霊の降臨。
ギルドの建物から目を離して空を見上げる。
紫色の蛇のような長い胴体に、黒き翼を持つ――。
神の竜と思わしき存在。
私、パルトラのすぐ近くにオシリスが現れた。
今回もお読みいただき、ありがとうございます。
遂に大精霊が降臨ですね。物語もいよいよ大詰めとなります。
最後まで楽しんで頂けると幸いです!
続きが気になった方はブクマ等よろしくお願いします。




