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アビストローム遺跡の深淵に踏み入れて


 迷宮神殿オシリスのギルドから出ると、すぐに回れ右をした。


 ギルドに向かって、ニケから貰った鍵を使用する。

 そうすることで、開かずのルームへ入ることが出来る。


「行くか」


 僕は、隠れダンジョンの扉を開けた。


 アビストローム遺跡の深淵。

 意識が一瞬で途切れて、また戻ってくる。

 すると、紫色の太い一直線の道が続いていた。


「ちゃんとした敵もいるみたいだが……」


 徘徊していたのは、緑っぽくも見える黒い人の形をしたモンスターと、赤い狸だ。

 前者はクロニクルナイト、後者はデスラクーンドッグで間違いないだろう。

 いずれにしても、高レベルモンスターだ。迂闊に近づけばたちまちリスポーンしてしまうだろう。


「ジェイラさん、ここからどう進みますか?」


「立ち止まっていても仕方ないが……どうするか」


 僕の属性銃をもってしても、複数いる高レベルモンスターを一網打尽にするのは難しい。

 ここからもっと潜んでいると思われる大精霊のことも考えるとなると、あからさまに戦力が足りない。

 ソルルはここに一人で潜り込んで、リスポーンした。


 僕も同じように探索しようと思うのならば、返り討ちに遭う可能性が高い。

 幸いにも僕の後ろには扉があるので、ダンジョンからの脱出はできそうだった。


「一度引き返してノアと話してみたい」


 扉を開けた僕は、このダンジョンから一度離れてみる。

 その……つもりだった。


 足場がなかった。ダンジョンの外の景色が、見れなかった。

 僕の左足が、空宙にあって。


 黒い奈落へと落ちていく。


「えっ……ジェイラさん?」


 メイカの声だけが聞こえていた。

 落ちていく先は、どこに繋がってくる?


 それはわからない。けど。


 不可解な現象が発生しそうだ。


『不正なアバターを検出しました。三十秒後、キャラクターが削除されます』


 耳元に大きなアナウンスが聞こえてきた。おそらく僕のことだろう。

 体はどこまでも落ちていき、止める者は存在しない。


「ジェイラさん、どこですか?」


 メイカは僕を探している。


「こっちだ」


 と言ってみるも、返事は返ってこない。


 これは詰んだかもしれない。

 しかもアバターの削除となると、どうすることも出来ない。


 シクスオに復帰して、結局こうなるか。

 自分が手掛けたゲームのひとつとはいえ、最後はあっけない終わり方をするものだったか。


「ごめん……」


 僕は両目を閉じて、システムのルールに準じて身を任せることにした。


「おとーさん……ここにいましたか。ほんと、何を言っているんですか?」


「えっ?」


 両目を開けると、目の前にメイカがいた。

 実際には、メイカと手を取り合って落ちている状況だった。


 それに僕のことをお父さんって。


「理解ができないが、メイカって僕の娘なのか?」

「少し語弊があります」

「厳密には違うってことか。こんな状況だけど、詳しく教えてもらえるかな……」

「はい。アースディールでは、ジェイラと名乗っていた者がおとーさんで、パルトラさんがおかーさん。姿はふたりともそっくりでした」


「存在しなくなった世界線か」


「そうです。でも、どうしてアタイが存在し続けれるのか、謎なんです」

「メイカが存在出来る理由か。大精霊が関与している?」

「わかりません。もし対等に接することが出来るのなら、大精霊に訪ねてみたいですね」


「対等にか、そうできたら良いな……」


『三十秒が経過しました。キャラクターを削除をはじめます。また、不正なアバターを検出しました。三十秒後、そのキャラクターが削除されます』


 容赦ないアナウンスが流れてくる。


「僕はもう、駄目かもね……。メイカは、早く戻る方法を探して……」


 徐々にだが、僕の体が透けていっている。

 このまま進行すれば強制ログアウトになって、以降シクスオにログインできなくなる。


「人違いって言われるかもだけど、おとーさんがここで消えるくらいなら、アタイも消えて構わない……!」


「駄目だよ。ニケさんから貰った鍵があるだろう?」


「開かずのルームへの鍵ですか……?」


「そうだ、よ!」


 僕は銃をメイカに向けた。

 リスポーンさせる。この状況でメイカを救うには、これしかない。


「解き放て、黒瑪瑙の煌めき――」


 完全に消えてしまう前に引き金を引いて、銃声を響かせた。



 †



 ノアからのお誘いを受けて、たまたま迷宮神殿オシリスのギルドへ出向いた矢先。

 いまにも泣きじゃくりそうな銀髪少女の、メイカがいた。


「あれっ、どうしたのかな?」

「ぐすっ……パルトラさん。ジェイラさんがこの世界から消えちゃった……」


「ジェイラさんが消えたって、どういうこと?」


「ううん……アタイには、やることがあります……」


 メイカが手に取り出してきたのは、六本の鍵だった。

 その鍵の束をみた瞬間、私は開かずのルームを開く道具が目の前にあることを何故か理解してしまった。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。

エレメンタルバレット編も、いよいよ終盤に入ってきました。


ここから視点がパルトラに戻りますが、この後はどうなっていくのでしょうか?

続きが気になった方はブクマ等よろしくお願いします。

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