表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/165

月のバジリスク


「月の紋章のモンスターがいる……ということは」


 ソルルが去り際に存在をほのめかしていた、月の精霊魔導士が近くにいる可能性が高い。


「とにかく、倒すよ」


 パルトラが天使の羽を輝かせて、少しばかり周囲が明るくなった。


 スポットライトのスキルだ。

 それが広範囲にいき渡ったので、パルトラのスキルレベルはかなり高めなことが伺える。


「戦闘ね。サポートを、パルトラさんに合わせるよ」


 キラリが鎌を軽く振ると、キラリの背中からエメラルド色の妖精の羽が生えてきた。


「二人とも、地面から足が離れているけど……どういうこと?」


 パルトラは天使で、キラリは妖精。

 何となく分かっていたけど、四足歩行するバジリスクが攻撃を当てやすいのは消去法で僕になる。


『シャーッ!』


 素早い動きで接近してくるバジリスクは、予想通り僕に狙いを定めてきた。


「やれやれ、こうして僕だけ損する立ち回りを要求されるのか」

「軽やかな妖精のダンスを」


 キラリが詠唱らしきものを喋ると、僕の両足が軽やかになった気がした。


「これは、使えそうだな」


 右足を軽く一歩踏み込むだけで、バジリスクの背後に回り込んだ。

 銃弾を向けて、頭部に狙いを定める。


「解き放つ、紅玉の煌めき」


 赤い五重の魔法陣が重なり合うと、僕はニヤついた。


「灼熱の弾丸よ、燃やしつくせ!」


 銃口から発射された銃弾がバジリスクに直撃すると、赤い炎が噴出した。


『シ、シャ!?』


 炎が纏わりついた状態になるバジリスクは、動きを止めた。


「ジェイラさん、やりましたか!」

「いや……パルトラさん、まだ終わってないね。炎属性はそこそこ効いているのだが、このバジリスクには耐性がある」

「そう。油断しないこと」

「油断ですか? それなら……えいやっ!」


 バジリスクに向けてエグゼクトロットを投げたパルトラは、どことなく子供っぽくみえた。


『シャ……』


 無事にバジリスクに突き刺さると、四足歩行の足の力が抜けて地面にへばりついた。


「あっ」

「とどめ刺したな」


「えっと、別に問題ないのでは?」


 パルトラは気づいていなさそうだが、召喚されたモンスターから召喚主の居場所をあぶり出す方法が存在している。


 闇属性と風属性の銃弾を合わせて作ることのできる魔法『裏切りの種子』を当てれば、召喚主の場所をサーチする効果を発生させれるのだ。

 ただこれは、召喚されたモンスターを倒してしまうと使用することができない。


 また、空を飛んでいるモンスターにも無効。太陽の精霊魔導士が連れているコカトリスに対しては、この効果は発揮されない。


「とりあえず、二人とも戦闘お疲れ様だね」


「そうだね。最後、がっかりだけど」

「えっと、私への評価なんか低くなっていませんか!?」

「何も気にしないよ。次、行こうか」


 僕のひと声でダンジョンの探索が再開される。


 キラリが使用したサポート魔法の効果は、既に解除されていた。効果時間は思ったより短いようだ。

 効果的に使えるかは不安材料となるが……月の紋章を持ったバジリスクを倒せるのであれば、戦力は問題ないと判断できるので、不要な心配を抱え込まなくて済む。

 今夜の探索は、とてもはかどりそうである。


「またお外ですね……」

「ここから二つの分かれ道だから」

「左の道はルビーアイ炭鉱行きの駅があるから、目的地ではないと思うけど……キラリさん、合ってますか?」

「うん。パルトラさんの直感は正しいよ」


 キラリが右の道に視線を向けた。


「ホタル草は、そっちにあるのか?」

「ダンジョンを進めば、滝があるから」

「滝……水辺ということか?」


「キラリさん、ついでに熊のレアモンスターもいるのかな?」

「それはわからない……」


 採取ポイントは最悪どうにでもなるとして、レアモンスターは流石に運任せということか。

 無事に遭遇することが出来たらベストなんだけど……。


「滝の音が聞こえだしてきたか」


 僕たちが進んでいく道の前方から、滝が流れ出る音が微かに聞こえてきた。


「黒き清らかな渓谷の滝って、どのくらいのサイズなんだろう?」

「いままで私はこっち方面の探索をしたことがなくて……」


「かなり大きいよ。巨大な魚のモンスターが潜んでいるくらいには」


 両手を大きく広げるキラリは、ドヤ顔をかましていた。


「釣りあげたら刺身にしたいね」

「刺身か。それは美味しそうだな」


「でも釣り竿がないから、直接水辺に飛び込んで刈り取ったほうが早いと思うよ」

「水辺モンスターには、どんな属性が有効かな?」

「大きい魚は凍らせる一択」

「なるほど」

「キラリさん、ジェイラさん、私たちの目的はホタル草を探すことですよ!」


「それくらい、わかってるよ」


 パルトラの気分が、ご機嫌ななめになってしまうことが一番よくないこと。

 今回は採取ポイントを探すついでに、水辺を覗き込む程度にとどめておこう。


 それと、薄々だが気を付けないといけない。

 僕たちの背後から、追跡している者がひとりいることを。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ