どうやって目的のダンジョンに行く?
「ノア、おやすみなさい」
シクスオからログアウトすると、そのユーザーが召喚したモンスター等は自動的に消失する。
ノアが呼び出したエルトリアが消えていく様子を見届けた僕は、フレンド一覧表を開ける。
フレンド登録希望の通知が一件。
シクスという、ユーザー名からだ。
一切の迷いなく僕は承認した。
この『シクス』というユーザーは、僕の妹が持っている修復用のアカウントだ。
ノアとは別の名義を使用するようになったのは、三カ国ダンジョンマスター交友会が行われた後だと聞いている。
そんなアカウントから、僕に直接メッセージか……。
――お兄様、今夜は三十分だけします。
メッセージを読み取った僕は、現在の時刻を確認する。
体感だとそれほど時間経過していないように思えるのだが、夜にログインしてからそこそこ時間は過ぎていた。
「ジェイラさん、準備とか大丈夫かな?」
「僕はいつでも行けるよ」
「それなら、行こうね。ネフティマちゃんはお留守をお願いします」
「少し不快だけど……パルトラさんのお願いは聞き入れる」
「あっ、ネフティマちゃんが所持スキルをお借りしていくよ」
エグゼクトロッドの先端が、ネフティマとくっつく。
スキル玉生成技能、発動。
パルトラはスキル玉を生成すると、それを僕に渡してきた。
ネフティマが所持していたスキルは、月光の処刑人。
一風変わった追加効果もある、身体能力強化系のスキル。
このスキルの発動にはアメジストが必要なのだが、僕にとってはなんの問題にもならない。
「ネフティマを置いていくとなると、戦力は大丈夫なのか?」
「それなら心配要らないと思う。それよりも遠くへの移動手段が限られているというか」
「目的のダンジョンには、どうやって行くつもりで?」
「空を飛んでいく。お昼ごろみたいに、ジェイラさんの体をつかんでもらったら……」
「それで良いか」
遊覧飛行は割と心許ないが、僕とパルトラだけで外のダンジョンへと行くとしたら、それが望ましいだろう。
「ジェイラさん、とにかくお外に行こう」
「そうだね……」
「えっと、それでは――」
パルトラは風神の和太鼓を回して、転送に僕を巻き込んだ。
ワープ先はクレイキューブの地下迷宮、ダンジョンの入り口。
そこから歩いて地上を目指す。
パルトラと二人っきりで。
「よし、ここから……」
「まだ地下なのに、もう飛んでいくのか?」
「そのほうが早いからね。それに」
パルトラは僕の腕を掴むと、天使の羽を懸命に動かしはじめる。
「低空飛行なら、万が一ジェイラさんを落としちゃってもリスポーンはしないと思うから」
「そうか……」
ひとまず信用するしかなかった。
「それでは、出発です!」
パルトラの大きな声が聞こえると、僕の両足が地面から離れた。
黒き清らかな渓谷までは、そこそこの距離がある。
これから長い低空飛行での移動が始まるのかと思うと、何かと退屈な気分になりそうだ。
「ジェイラさん、何か不満でもあるのですか?」
「いや……顔に出てたか?」
「ノアちゃん程ではないですけど、私も雑談くらいは出来ますよ?」
「雑談ねぇ……シクスオのレアドロップについてとか、いろいろ苦労したエピソードがあったりするのだが」
「やっぱりその話はなしで!」
パルトラは急加速し始めて、僕は風の圧力で振り落とされそうになった。
でも、パルトラに腕をしっかりと握られており、途中で落ちてリスポーンすることはなさそうである。
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