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アビストローム遺跡を探しに


「アビストローム遺跡、どの辺にあるかな。ノアちゃんも気になっている?」


「えへへ……そうですね。ノアも気になるところです」


 パルトラとノアが、気を楽にして僕の後方からついて来る。


「ジェイラ、どうかした?」

「ネフティマか。その……なんというか」


 周囲にいる冒険者の視線が、気になってしまうというか。

 特にパルトラとノアに向けられているような気がするけど、僕からは立場的に言葉にしにくくて。


「同行者にダンジョンマスターが二人もいるから、かしら」

「たぶん、そうですよね……」

「ジェイラ、この世界はダンジョンマスターが軸になって自然の循環が行われている」

「元々ドロップシステムがそういうコンセプトで作られたこと、確かなんだけど」


 冒険者との間で、変な噂とか広まらなければ良いのだけど……。


 アビストローム遺跡を探すことより、ここまで一目を気になるとは思わなかった。

 そして、壁の突き当りで一旦立ち止まる。


「右と左か。どっち進もうか」


 僕は少し悩む。


 ここまで住宅街が続いていた。

 そして、左右の道どちらにせよ、同じような住宅街が続く。


 もしも遺跡らしい建造物があれば、すぐにでも分かりそうなのだが。


「ヒントがほしい……聞き込みでも始めるか?」

「ジョーカーお兄様がお手上げですか……ノアのお友達さん数名に問い合わせてみましょうか」


 ノアはメッセージ画面を出して、文字の入力をはじめた。


「ノア、ありがとう」

「いえいえ。ジョーカーお兄様にお役に立てるだけでも、ノアは幸せですので」

「あと悪いけど。……そもそもの話、遺跡の規模ってどれくらいなんだろうか?」


 僕が疑問を投げかけると、皆が耳を傾けた。


 アビストローム遺跡が大精霊を祀っているとしたら、それなりの大きさはあってもおかしくはない。

 だけど、遺跡の形跡すら見受けられないので、容易く発見出来ないくらいには小さいものかもしれなくて。


 もしそうならば、太陽の紋章を持っている者が潜んでいることを想定して、冒険者の中から聞き出す必要性も出てくる。


「ジョーカーお兄様、オシリス出身のフレンド様にひとまず送りました」


 ノアはニッコリすると、僕は頷く。

 ただ、返答が来るまで時間が掛かりそうではある。


「あの、ちょっとすみません」

「パルトラさん、どうしたんだ?」

「ジェイラさんに伝えてから薄々感じ始めたけど、黄昏の刻を意味する時間帯が分からなければ先に進まなさそうな気がしてきて」

「黄昏の刻を意味するもの……」


 これを何を示しているのか。

 謎解きのようで、ノーヒントなんだよね。


「単純に考えるのであれば、黄昏は夕暮れのタイミング。セーフティ期間が終わるのが午後五時だから……」

「ネフティマちゃん、流石だねっ!」


 パルトラが褒めたたえて、頭をなでなでし始めると、ネフティマは頬を少し赤くした。


「単に私は、観測してきたから。全部ではないけど」

「それでもネフティマちゃん、ナイスヒントですよ!」

「褒めるのには、まだ早い」


 ネフティマは顔をしかめている。

 アビストローム遺跡を発見するまで、ネフティマ自身は気が抜けなさそうだ。


「仮に黄昏は夕暮れのタイミングだとして、深淵を覗き込むのはどうするんだ?」


「ジョーカーお兄様、皆様で待ってみますか……?」

「ノア、メッセージの返信が一通でも届いたのか?」

「お兄様、そんなところですね」


 ノアは画面を閉じる素振りを見せると、ギルドが建っている方向へ振り返った。


「あそこを中心地として……」

「ノア?」

「いえ、なんでもないですよ。こういう謎解き、ジョーカーお兄様とするのはいつ以来なのでしょうか」

「謎解きか。いつ以来かは分からないなぁ」

「えへへ……ノアもですよ」


「そうか」

「お兄様からの反応が、少しばかり薄いですね……なんと言いますか……」

「普段からそんなものだろ?」

「それは、そうなんですが……」


 いつの間にか、ノアの顔が天に向いていた。


「空の色……黄昏……の……?」

「今は青い空だが、じきに夕方になれば……いや……」


 僕は引っ掛かっていた。


 このゲームの街中は、時間経過で太陽が沈んだりしないはずだ。

 これまでのアップデートにも、そのようなことが実装されたというお知らせは存在しない。


 だったら、このゲームの黄昏ということは……何者かによって作られないといけない。


「ジョーカーお兄様、ギルドの外壁に魔法陣が出てきました」

「やはり、何者かが絡んでいる」


 僕は目を細めてギルドの外壁でも確かめようとしたが、それをする必要性はなかった。


 魔法が使用されてからおおよそ十数秒で、大空が紅色に染まりきる。



「お兄様……これはもしかして……」


「ノア、わかってるよ」


 僕は目の当たりにしてしまった。


 黄昏の刻というものを。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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