妹と合流する
三カ国ダンジョンマスター交友会の開催から半年が経過したある日。
「妹が心配するから、そろそろ出向こうとするか」
久しぶりにログインすることを決めていた僕は、自室のベッドに横たわった後、スマートフォンの電源を入れてアプリを立ち上げる。
今回は主に仕事の為だとはいえ、シックス・スターズ・オンラインの世界にまた飛び込んでいくだなんて、ここ数年間は考えすらしていなかった。
ぽつんと、大きな鏡。
そこに映り込むのは、僕のアバターである。
紺のマントを身に着けた、青髪の少年。
マントの下は、ごく一般的な学制服なのだが、軽やかで動きやすいつくりになっている。
『おかえりなさい、ジェイラ様』
白い文字が浮かび上がると、シクスオのワールドマップが目の前に現れた。
最後にログインしたのが記憶にないくらい久しぶりすぎて、ワープ先の座標選択肢が出現していた。
妹との待ち合わせ場所は、迷宮神殿オシリスのギルドとは少し距離がある位置に存在する『アップクレスト』という街だ。
ワールドマップに地名が出ているのでわかりやすいのだが、ゲーム内の雰囲気はかなり変化してしまっていると思われる。
不用意に探索しようと思うのならば、すぐに迷子になってしまいそうだった。
座標を決めて、僕はダイブした。
目を一度閉じて、流れに身を任せる。
シクスオの世界に到着したら、まず最初に妹と合流することを目指す。
「お兄様ー!」
早速だけど、妹の声が聞こえてきた。
妹は、僕の居場所を既に把握されているのだと思う。
一直線に向かってくる、綺麗な足音も聞こえていた。
「ジョーカーお兄様ー!」
妹の声が徐々に大きくなってくる。
これはもう、下手に動かないほうが良いかもしれない。
目を開けた僕は、暫くこの場に待機することにした。
雲ひとつない青い空に、黒色の城壁のような壁が続く十字路。
妹の声がしたのは、背後だ。
僕が後ろに振り向くと、青い神官服に身を纏う金髪の女の子が階段を上がってきた。
「ノア、元気にしてたか?」
「えへへ……ジョーカーお兄様こそ、お元気そうで安心しました!」
「まぁ、僕がシクスオに入ったのは、調査のお仕事をするためだけど」
「それはわかっています。でも、ジョーカーお兄様がシクスオに戻ってきて、ノアはとっても嬉しいです!」
ノアの瞳はキラキラと輝いていた。
「とりあえず、彼女に会いに行こうと思うのだが」
僕は、ノアの頭を撫でた。
「えへへ……はぐれないように、ついてきてくださいね!」
ノアは来た道を引き返そうとした。それに僕はついて行く。
僕が言った彼女というのは、異変調査レポートその1の重要人物に該当する。
そして、僕の目的は異変調査レポートに基づき、精密な調査報告書を書き上げることである。
第4章がスタートしました!
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