新たなモンスターを作成します
「襲ってきそうなモンスターは近くにいないね」
念のため、周囲の安全を確かめておく。
ソルシェイドが大きい体だから、ワープさせる範囲も大きめで意識しておかないといけない。
「ダンジョンに戻りますよ!」
エグゼクトロットの先端を地面につけると、ワープゾーンが出現した。
転送先は当然、私が所有する記憶の石像を設置ある部屋だ。
「ほう、ここでダンジョンの中身を操作しているんやね」
アレイは早速、ダンジョンの様子を示している立体型の地図に注目する。
関心度は思ったより高いようにみえる。
「モンスターの配置とかできるということは、宝箱を置くことも可能ということやね?」
「そうですね。今からモンスターを生成して新たに置こうと思っているのですけど、一緒にされますか?」
「ボクは遠慮しておくよ。このマップを見ながら新しい装備品を考えてみたいと思うから、出来れば部屋をひとつもらえると嬉しいやね」
「わかりました。新しい部屋をダンジョン内に作りますので、装備品の作成等はそちらでお願いします」
「恩に着るやね。ところで、フィナ殿はこの後どうするやね?」
「あたしはパルトラについて行く。モンスターを生み出すところが、みたいから」
「この場でモンスターを作成するのですけど」
「パルトラ、そうだったの?」
「まだ言ってませんでしたっけ?」
私はすぐさま記憶を掘り返す。
そういえば、フィナが来てから一度も新しいモンスターを作り出してなかった。
今から作れば納得できるかな?
「先に、こちらから作成しちゃいましょうか!」
デーモンウルフのコアを三つ取り出した私は、歯車のようにつなぎ合わせる。
ここにひとつ手を加えると、強化したモンスターが生まれたはず。
「今回は……火の魔法石を合わせます!」
フィナから頂いた火の魔法石を手元に出して、デーモンウルフのコアに混ぜ合わせると、バチバチと小さな火花が飛び散った。
「歯車が、回り出した?」
「そうですね……」
歯車から垂れてきた炎の球体が地面に落ちると、そこからウルフの形を成したモンスターが誕生した。
炎の体を震わせる四足歩行の獣。二歩、三歩と前に歩く。
「フレアウルフやね。少なくとも、フィールドマップで出現する奴らよりレベルが高いやね」
「レベルが高い……」
私はすぐにステータス画面を開き、確かめる。
――ってこれ、モンスターのステータスをみてもわからない。フレアウルフは、私がフィールドマップでまだ出会ったことのないモンスターだから、比較のしようがない。
出現場所は、フェニクル近辺。
今後、行く機会があればチェックしておきたい。
「もしかして、魔法石を媒体にしているから、ですか?」
「そうやね、フィナ殿の言うとおりや。ひとまずパルトラ殿はセンスあるみたいだし、これなら装備品の作りがいがありそうやね」
ソルシェイドを手懐けるアレイは、大声で笑わないよう堪えている。
「ひとつ良いものをみせてもらったやね。装備品作成のアイデアも湧いてきたから、ぼちぼち作業部屋に連れていってもらえるやね?」
「はい。アレイさん専用の作業スペースは、もう出来てますよ!」
頷いた私は、アレイの足元にワープゾーンを作り出していた。
「ワープで連れていってもらう前にひとつ、ボクとフレンド登録しとくやね」
私の元に、メッセージが送られてきた。
フレンド登録しませんかという表示画面だ。
私は、迷うことなく承認する。
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
アレイに感謝を伝えると、私の頭を軽くぽんと触ってきた。
「あとは……たしかフィナ殿は、以前やってたやね?」
「うん。パルトラに出会うまでは登録を保留にしていましたけど」
「何かの縁やね。今後もよろしくやね」
「今日お会いしてまだ二、三回程度ですが、こちらこそよろしくお願いします」
「では、ボクはしばらく装備品の作成に籠もっているから、なんか用があったらすぐに声をかけてやね」
そう言ったアレイは、ワープしていった。
「アレイさんは、凄いお方ですね……」
「うん。そうだな」
モンスターの作成をしただけなのに、鋭い視線でなんでも見抜く力がある。
それは、強力な鑑定スキルでも持っているのかと思えるほどだ。
「とりあえず、このフレアウルフをダンジョンに放ちます」
私はエグゼクトロットを取り出して、軽く振る。
ダンジョン内のモンスターの転送はこれでもできる。
プレイヤーと違って、ダンジョン内で移動させるのが楽だと思える。
『吾輩も運んでくれないか?』
「あっ、ソルシェイドさんのこと忘れてましたね……」
ソルシェイドに対して、エグゼクトロットを振る。
これでアレイの元に送っておく。
「あとは、コアの設置……」
また新しい部屋を作り出して、フレアウルフのコアとなったものを設置する。
これによって、ダンジョン内にフレアウルフが徘徊し始めるので、道中では強いダークスライムだけが出てくる状態でなくなった。
「ふへっ……」
「パルトラ、疲れました?」
フィナと二人っきりになって、少し静まり返る。
「ゆったり寛ぐのも悪くないと思いますけど、もうひと仕事したいですね」
私は、酸の土をため込んでいる部屋の監視画面を出した。
「ここにお肉を投与したら変化するのかな?」
「たぶん?」
「じゃあ、やりますね」
私は所持アイテムの一覧を出して、酸の土がある部屋にお肉を送り込んだ。
すると、お肉は酸の土によって、腐敗し始めた。
でも、すぐに腐敗しきった肉にはならないので、暫く眺めるだけのお仕事になりそう。
「ふと思ったのだが、パルトラはアンデッドを作るんだよね? スケルトンくらいの弱めなモンスターを作るのかなと思っていたのだが」
「作り出すのはグールですね。スケルトンにするには、骨の質が足りないといいますか……」
「なるほど。強い骨といったら……ドラゴン?」
「そうですね。基本的には、強いモンスターから取れるでしょう。あとは、スケルトンは基本的に剣や盾を持っていますので、その辺りの装備品も用意しないといけないのもありますよ」
「スケルトンの作成、意外と手間が掛かりそうなんだな」
フィナは何度も頷いていた。モンスターの作成難易度と強さは直結しないということは、強いモンスターもその気になれば量産可能という意味にもなる。
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