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chapter1-6

シホと一緒にご飯を食べる。


シホを椅子に座らせてから、電子レンジにハンバーグ弁当を入れる。


今日は二回も電子レンジを使う日だな。


まぁ、あれは使ったというよりもぶち壊した部類に入るが……。


電子レンジでハンバーグ弁当を過熱している間に、マグカップに紅茶を注ぐ。


取っ手のあるコップのほうがシホが飲みやすい。


目が見えない状態でも、ある程度モノが何処に置いているか分かる。


時刻は深夜の1時に迫ろうとしているけど、夜食もたまには悪くない。


ペットボトルの蓋を外して、彼女のマグカップに紅茶を注ぐ。


「はいよ。無糖の紅茶だけどいいかな?」

「うん!大丈夫だよ!」

「それじゃあ、先に紅茶で乾杯するか」

「いいね、かんぱーい!」


シホがグイッとマグカップを出してきた。


俺は彼女に合わせるように自分のグラスに軽く当てて乾杯した。


マグカップとグラスで乾杯……。


珍しい組み合わせかもしれないが、この部屋ではいつも通りの光景だ。


「紅茶は身体にいいからね~お酒飲むよりずっといいよ」

「そうだね……お酒だと晩酌セットで始めちゃうからね……」

「そういえばセイ君って、仕事終わった後はお酒飲まないよね……」

「うん、ちょっとね……お酒は完全に休みの日だけって決めているんだ」

「休みの日かぁ……じゃあ、今日とか?」

「今日か……確かに今日は丸一日予定はないからいいかなぁ……どこか行きたい場所があるのかい?」

「実はさ……原宿駅の近くに出来た喫茶店に行って見ない?美味しいパンケーキがあるってラジオでやっていたんだ!」

「パンケーキか……いいね。あの甘くてもっちりとした食感が好きだよ」

「よしっ!それじゃあ喫茶店に行って一緒に過ごそうね!」

「ハハハ、喫茶店でデートってのもいいね。好きな時、好きなだけ甘い食べモノが沢山あるからね……それに、店内の落ち着いた空気っていいよね」

「セイ君の好きなアイスコーヒーだってあるはずだし、そこでゆっくり過ごしていつもと違う空気を味わいたいの!」

「そうだね……おっ、そろそろハンバーグ弁当が出来た頃合いだ」


今日の予定は決まったようだ。


先ず朝9時まで寝てから、車で原宿に向かう。


そこでシホの行きたがっている喫茶店で時間を過ごし……余裕があれば他にもお店巡りでもしようかな。


それにシホは甘いモノが大好きだ。


普段は部屋にいることが多く、外出も俺が休みの時ぐらいにしかしない。


それだからこそ、一緒に外に出ることが好きなんだろう。


俺もシホと一緒にいたいからね。


電子レンジの中に入れていたハンバーグ弁当も温まったようだ。


弁当を取りだしてテーブルの上に置くと、すでにホカホカだ。


「「いただきます!」」


深夜1時……。


夜食の時間だ。


デミグラスソースのついたハンバーグ、その上には目玉焼き。


ハンバーグの下には惣菜替わりのスライスされた玉ねぎが詰まっている。


その横には麦飯とポテトサラダまで付いている。


これだけのボリューム満点で価格は一個1500円……。


これはコンビニ弁当にしては破格の安さだ……。


ハンバーグ弁当ラスト二個だったのが幸いだった。


もしハンバーグ弁当が無かったら、高級志向向けの弁当や総菜を買うしかなかった。


あの時あったのは1万円の天然牛ステーキ弁当か、もしくは信州産蕎麦粉使用のかき揚げそば(3千円)と北海道産の天然サケ弁当(5千円)ぐらいだ。


カップ麺もあるにはあるが、夜食でカップ麺は太りやすい上に、シホの好きな醤油味のラーメンが無い。


むしろ彼女が苦手な辛味をマシマシにした激辛ラーメンしかなかった。


結果として安く済んだことに越したことはない。


シホにはスプーンを渡してハンバーグ弁当を食べている。


一口、また一口と口に運ぶ度に美味しさを表現しているのか、耳をぴょこぴょこ動かしている。


俺も彼女を横目にハンバーグを一口食べる。


ハンバーグの肉汁が口の中に染みわたる。


美味しい料理を食べながら会話を弾ませる。


「……美味しいね。デミグラスソースも濃すぎず、それでいて薄すぎず……ちょうどいいね」

「やっぱハンバーグ弁当はこうでなくっちゃ!麦飯が進むわぁ!」


それにしても、シホはスプーンを上手に使ってハンバーグを落とさずに食べている。


麦飯やサラダも上手に掬い上げている。


以前よりも感覚が鋭くなったのだろうか……。


前までは、スプーンからこぼれてしまうことが度々あった。


だけど、ここ最近テーブルが汚れたことはない。


ちょっと聞いてみるか。


「ははは、良い食べっぷりだ。……ところで、シホは最近感覚が強くなってきている感じがするかい?」

「うん、最近より一層鋭くなってきている感じがするんだ……音を鳴らして物の位置が分かるようになってきたよ」

「マジか……」

「たぶんだけど……視力を失った代わりに自分自身で感覚強化の詠唱魔法を付与したからだと思うけどね……」

「魔法の付与だけでも、かなり変わるんだなぁ……」

「最近は両手を広げた範囲ならどんなモノが置かれていたりとか、目で見ていた情報を肌と耳で補って察知できる感じかなぁ……すごいなぁ……」


シホが目が見えないが、ちゃんと何処に何が置かれているか……といった事が分かるようになったという。


軽く息や音を出して、その音をどこで反射しているか耳が拾って、それを脳に伝達しているようだ。


本人曰く、感覚強化を行う詠唱魔法を指先や耳に付与すると約2メートル範囲の状況がある程度把握できるらしい。


中途失明をしてしまった人が、視力の代わりに聴覚感覚や触覚が鋭くなる異種感覚間可塑性という話は聞いたことがあるが……。


シホの場合はそれよりも強化されたような状態……。


音で反射する感覚を掴み、位置を把握しているようだ。


まるで潜水艦のソナーみたいだ。


とはいえ、デメリットも存在するようだ。


「辛い食べ物とかは駄目になっちゃったね……感覚が鋭くなったせいか美味しさよりも『痛み』が強く出ちゃってさ……」

「そういえば辛さって痛みを転換しているって聞いたことあるよ……以前は辛いのも平気だったよね?」

「うーん、好んで食べる程ではなかったけど、辛口でも大丈夫だったわね……」

「……そういえば中学の時、京都の修学旅行先で激辛ラーメンチャレンジがあってさ……俺は涙流してヒーヒー言っている隣で平然と食べていたよね……」

「よく覚えているわねぇ!あの時私だけが完食したのよね~……他の皆はセイ君含めて撃沈していたけどね」

「シホ、もう一度あの激辛ラーメンチャレンジやれる?」

「いや、絶対むり!!!やった瞬間に口の中にナイフが突き刺さるような感覚で悶え死ぬわよ!!!」

「ははは、冗談だよ冗談」

「全く、でもセイ君はそんなことをする人じゃないのは知っているわ」


お互いに笑いながらハンバーグ弁当の半分を食べてしまう。


こんな感じで会話を弾ませながら食べる飯は旨い。


二人だけで、仕事の事などを忘れて堪能できる時間だ。


パクパクとハンバーグが胃の中に投入されていき、サラダや麦飯もハンバーグと一緒に呑み込まれていく。


シホと合わせるように食べた結果、20分程度で完食した。


空になった弁当箱はリサイクルに出せる。


パパッと水洗いをしてから飲み干したコップなども片付けた。


それから、俺たちは軽くシャワーで身体を洗った。


一日の疲れを洗い流してくれる。


シャワーで互いに身体を洗い終えてから、ベッドで就寝する。


就寝の前に、俺たちは身体を抱き寄せる。


肌と肌が重なり、俺たちは一人ではない事を確認し合う。


いつも通りの日常。


シホの身体を抱きしめながら、俺は彼女に言う。


「おやすみ、シホ……」

「おやすみ、セイ君……」


清掃人としての一日が終わり、俺はゆっくりと眠りについた。

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