chapter3-10Extra
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神奈川県川崎市
川崎市内は戦場のような様相を呈していた。
この街を実質的に牛耳っているギャング集団「赤豹」が警察とヤクザから総攻撃を受けていたからだ。
街中では銃弾と魔法が飛び交い、大勢の人間が事件に巻き込まれないように自衛も兼ねて部屋に閉じこもっている。
赤豹たちは自分達の権威保持と勢力拡大に則り、ギャング集団の枠を超えて自分達のテリトリーを守るために徹底抗戦を開始しているのだ。
銃は勿論の事、異世界でも魔法技術に長けている者達が警察やヤクザの取締から逃れるために、ありとあらゆる手段を講じて抵抗している。
「こちら川崎15!川崎15!現在国鉄鹿島田駅前!赤豹たちの抵抗が強すぎる!構成員は銃だけではなく魔法(MF)を使用し、同行していた警察官(PM)3名が死亡!増援を求む!どうぞ!」
「こちら中央、こちら中央、現在国鉄鹿島田駅周辺にて赤豹による対応に苦戦している。付近にいる者は増援を送られたしどうぞ」
「川崎6、川崎6、現在かしまだ駅前通りにおいて赤豹の構成員と交戦中、なお犯人は対戦車砲のような大型砲で武装しており、こちらとしても鹿島田駅周辺は重武装の戦闘員で固められており、突破は難しい。どうぞ!」
「川崎17から本部、川崎17から本部、川崎第六ツインタワーマンションから狙撃を受けています!現在現場で対応に当たっていますが対応が難しく、同行していた祟目新聞の記者が負傷」
警察の無線からは悲鳴混じりの声が絶え間なく聞こえてくる。
本来であれば軍事組織である自衛隊を投入するべきなのだが、警視庁が赤豹を潰すためにメンツをかけて討伐を指揮しているのだ。
しかし、すでに警察の対応能力を超えている状況であり、自衛隊への出動要請も時間の問題であった。
警察無線を傍受している自衛隊の通信車両では、惨劇の内容が筒抜けであり、無線から聞こえる悲鳴までも通信員に響き渡っている。
「駄目ですね……警察だけじゃ対応できていないっすよ……川崎競輪場付近にいた赤豹は逮捕ないし殲滅しましたが、鹿島田駅周辺に籠っているのは重武装した連中です」
「おいおい、奴さんガチの戦争にでもしている気か?」
「内戦中の中国や東南アジア諸国から密輸した武器じゃないっすかね?無線からだと最新鋭式の装備品ではないみたいですし、警察相手なら第三世界基準の武器でも十分通用しますよ」
「そうか……ま、いずれすぐに俺たちに出動要請がくる。それまで聞き漏らさないように注視しておけ」
「了解っス!」
自衛隊は後方で待機しており、彼らもまた対魔法戦闘を重視する装備で固められている。
通信車両から出てきた部隊長であるオークの大央郷治は、出動命令を今か今かと待っている状況であった。
一方で、警察も必死に応戦を繰り返していた。
このうち国鉄鹿島田駅で仲間の警察官がやられてしまい孤軍奮闘していた警察官も、右足を撃たれてしまい、もうすぐ天国からお迎えが来そうになっていた。
だが、そこに大柄の男が現れてきて警察官に応急処置を施してきたのだ。
「おうおう、警察がもっとシャっきりせんか!」
「あっ、あんたは……」
「関東紅屋会若頭の寅田だ!ホレッ、止血剤使え!」
「あ、有り難いッ!」
ヤクザも合流して世にも奇妙な善と悪が一つになって応戦するという珍しい構図が出来上がってしまったのだ。
関東紅屋会が中心となって赤豹狩りをしている。
それは警察以上に過激な手法であり、一部のギャング構成員はヤクザではなく警察に自首したほどだ。
とはいえ警察もヤクザも、この赤豹というギャングだけは決して許すつもりはない。
だが、それ以上に厄介だったのが赤豹の戦力であった。
寅田たちの目の前に旧ソ連で生産・配備されていたT-64戦車が現れたのだ。
しかも、ご丁寧に漢字で「蒙古」と書かれて赤色で塗装された戦車だった。
そう、赤豹の戦車だ。
「クソッ、やつら戦車まで繰り出して来やがった?!」
「おい警察公!お前んところの部隊は戦車はあるか?!」
「そんなものないよ!!!あるのは自衛隊だけだッ!」
道路では赤豹が東南アジア諸国から密輸した第二世代戦車を使って、警察やヤクザめがけて砲撃をする有様だ。
事態は、どんどんエスカレートしていくのであった。




