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東京清掃人 ~異世界と繋がる日本に潜む者~  作者: スカーレッドG
チャプター3:模範的清掃活動
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chapter3-9

「おぉっ!内守さん!その鞄は……!」

「ええ、赤豹たちを片付けて来ましたわ、これで問題ないか確認願います」


恵比寿駅前で待っていた水落さんに鞄を手渡す。


ちなみにルナは俺の5メートル程手前で待っている。


自然に振る舞うように立っているお陰で、水落さんには不審に思われていない。


水落さんは鞄を受け取ると、パスコードを入力して中身の確認を行っている。


じーっと眺めた後、どうやら中身に異常が無い事を確認し終えて安堵の表情を浮かべた。


「ありがとうございました……これで依頼していた任務は問題ありません」

「それは良かった……追加報酬はどのくらいになりますか?」

「そうですね……鞄も外装がすこしだけ凹んだ程度ですので、この程度であれば許容範囲内です。中身の書類も無事でしたし、一度も開錠された形跡はありません」

「それは何よりでした……では、報酬の送金をお願いします」

「ええ、勿論です……これを」


水落さんが渡したのは高額入金用のデータチップだ。


俺はデータチップを携帯に差し込む。


チップカードの残高は700万円……。


無事に回収できたことで200万円の増額だった。


いいね。


すぐにデータチップに入っている金額を預金口座に送金する。


これで口座合計金額は2300万円だ。


「それじゃあ、お世話になりました。今後十菱金融をご利用の際にはサービスをしておきますよ」

「それは有り難い。よろしくお願いいたします」


水落さんはペコリとお辞儀をして駅構内に去っていった。


……これで一件落着といったところか。


後ろにいるルナはハンドバッグをギュッと握りしめたままこちらをずーっと見つめていた。


「……どうかしたか?」

「いえ、貴方……清掃人クリーナーなの?」

「ああ、そうだが……何か言いたいのか?」

「……貴方がいなかったら私は乱暴されていたわ……」

「ギャング連中がよくやる手法さ……暴力に性加害……大抵はギャング悪行セットとしてやるもんだよ」

「……私はどうやって貴方に借りを返せばいいかしら?恋人になったほうがいい?」

「おっと……それは……」

「私としては、これでしか貴方に借りを返せないわ……どうするの?」


ルナは俺の身体に押し付けている。


自発的に。


さっきまで赤豹のミシマに乱暴されそうになっていた女性だ。


それなのに……。


あえて、自分の身体を差し出すつもりか?


「わりぃな……俺には想っている人がいるんだ」

「でも、お礼が出来ていないわ。私だって22歳よ……ドワーフとしては立派な歳よ」

「ルナの気持ちは分かるが、一旦落ち着け」

「じゃあ、何でもするわ……雑用でも、なんならその時だけの関係でもいいわ」

「その時って……どんな時だよ」

「ムラムラしている時に私が貴方の……」

「ストップ、それ以上言わなくてもいい……言わんでもいい……」


マズいな……。


ルナの目は完全に俺に惚れちまったみたいだ。


目が輝いている。


それに、さっきから俺の身体から離れようともしない。


マジか……。


いや、赤豹から危ない所を登場して助けたから、一時的な吊り橋効果でそうなっちまったのかもしれねぇ……。


とにかく、ここは穏便に済ませよう。


「……とにかく、お前さんは新しい宿でも部屋を探すべきだ。その分の金だって渡したっていい」

「……だめ」

「え?」

「……お金だけじゃない。私に必要なのは貴方なのよ?命の恩人には最大の礼と仁義を生涯にかけて尽くす……それがドワーフの掟でもあるわ。それを破ることなんで出来ないのッ!」

「あ……そう言う事か……」


どうやらドワーフの教えというのは厳格に守られているようだ。


基本的に同族意識の高いドワーフいえど、命の恩人には一生仕えることが決まりとなっているらしい。


たとえ異種族であったとしても、命を救ってくれた相手には一生奉仕をしてでも身を捧げる。


頑固な性格が多いと言われているだけに、ルナの意思は曲げる事が出来ない。


というか、それをやったら彼女は奉仕すらも出来ない女という烙印を押されてしまう。


「だからさ、私を雑用でもいいから貴方の傍で仕事の手伝いをさせてほしいの。こう見えても腕は立つわ」

「……失礼だけど、仕事はなにをやっていたんだ?」

「在宅ワークよ。依頼された武器や防具の修理を請け負っていたわ。でもあの赤豹たちが全部駄目にしてくれたし……仕事もないわ」

「そうか……分かった。同居人と相談してみるよ。同居人がOKを出せばいいが、そうでなかったら諦めて別の物件に住んでくれ……それでいいか?」

「ええ、いいわよ」


ここまでグイグイと言われると、流石に無下に扱うことはできない。


やむなく、俺はシホに連絡を入れてルナの説明をした上で一緒に暮らす事はできないか相談することにしたのであった。

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