chapter3-8
今年もよろしくお願いします。
集団でこちらに襲い掛かってくる赤豹たち。
銃や刃物で武装した彼らを正面から対峙するのは得策ではない。
ただ、彼らは思っていたよりもバカだった。
「ちくしょう!みんなやられているぞ!!!」
「ミシマさんは何処だ?何処にいる?」
「応援を呼んでくれって言われたけど、これじゃあ全滅しているじゃねぇか!」
「どうするんだ?下手に表に出るのはマズい……」
「まだ襲ってきたヤツがいるかもしれねぇ……上の階にいくぞ!」
おいおい、ここで逃げてくれたほうがありがたかったんだが……。
どうやら俺と対峙したいらしい。
バカなやつらめ。
余程自殺志願願望があるらしい。
普通自分達の仲間がやられていたら逃げるだろう。
これで死に急ぐようなら、まさに死んで肥やしになって欲しいレベルだぜ。
階段で待機し、奴らが階段を使って登ってくるのを待っている。
透視魔法を使えば集団で移動してきているのが手に取るようにわかる。
自衛隊の高性能サーマルスコープ並の感度だな。
シホの作ってくれる魔法の調合は完璧だ。
人数も16人前後……。
5階と4階からも隠れていた赤豹の構成員が下りてきている。
恐らく別の場所で隠れていた奴が増援を呼び出したな。
ゲームならボーナスタイムか、もしくは得点が加算されそうだ。
階段を一歩、また一歩登っていく。
いいぞ、そのまま近づいてこい。
すると、上から大きな声が響いてきた。
「おーい、待ってくれ!まだこのマンション内に襲撃者がいるみたいだ!」
「どういう事だ?しっかり守っていたんじゃないのか?!」
「そうじゃない!持ち場を動くなと命じられていたんだけど下の階から銃声が響いてさ……とにかく、まとまったほうが対応しやすい。一旦全員集まって行動しよう!」
「分かった!3階で落ち合おう!」
2階から3階に集団で登ってきたヤツらが、4階と5階から降りてきて合流しようとしている。
馬鹿め、そんなことをしたら3階に到着した頃合いを見計らって襲撃を食らうだろうが。
まぁ……そこまで頭のいいギャングじゃないし、インテリ系のヤクザに比べたら脳みそが筋肉で出来ているような連中だな。
「どうだ……3階までが襲われたみたいだが……襲撃者を見たか?」
「いや、俺は見ていない……というか、どうして4階を襲ってこないんだ?」
「分からねぇ……分からねぇけど、猛烈に嫌な予感がしてきた……」
二つのグループが3階の階段フロアで合流した瞬間を見計らって、俺は空間電気伝達魔法の入った試験管を投げつけた。
どうしてまとまって行動してしまうんだろうか……。
一人が投げつけてきた試験管を反射的に叩き殴った影響で、周囲に電流が流れこむ。
「ああががががががが」
「だだだだれれれかかかか」
「びびびびびびびびびっ」
ビリビリと音をたてながら痺れて倒れ込んでいく。
……いや、さっきと同じパターンじゃないか。
それもドミノ倒しみたいに複数の赤豹の構成員が折り重なって階段で倒れ込んだ影響で、手すりの一部が折れて3名ほどが落下して骨がボギッという音を立てて折れてしまったようだ。
気の毒に……。
赤豹たちはあっけなく散っていく。
倒れてしまっている連中に銃弾を浴びせて物理的に黙らせる。
増援を含めて、これで赤豹は全滅しただろう。
こいつらには魔法を使えるヤツが一人もいないらしい。
まぁ、異世界は魔法が使えて当たり前……というのは間違いだらけだ。
魔法の力というのは先天性の能力が必要な上に、異世界側でも魔法を自由に使えるのは総人口の1%にも満たない。
大半はこの世界と同じ普通の人間だ。
外見を除けばそこまで大きく分かるような要素はないのだ。
人類みな平等……なんてことはない。
異世界も異世界で魔法が使えるものが富を独占して活動しているんだから。
こちらでは日本が魔法技術を独占して魔導工学を産み出して日常生活に欠かせないデバイスとして活用している。
つまるところ、魔法を制する者が世界を制するのは何処も一緒なのだ。
「さて、ここから脱出するぞ……ルナを連れていくか」
赤豹を片付けた俺は十菱金融の鞄を手に取ってから、ルナを連れてマンションを後にした。




