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東京清掃人 ~異世界と繋がる日本に潜む者~  作者: スカーレッドG
チャプター2:ホット・セーブ
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chapter2-6

スローモーションでゆっくりと動いていく景色。


周囲からしてみれば、突然客が立ち上がる瞬間までは同じように見えているだろう。


だが、それもほんの一瞬の出来事。


こっちは野球中継での審議映像を見ているぐらいにゆっくりと動いているように感じている。


それなのに、身体は機敏に動いてくれるんだ。


周りがスローモーションで動いている反面、自分の身体と意識だけが通常通りに動いてくれる。


これが時間遅延魔法の恐ろしい所さ。


つまり、魔法を付与された人間の動態そのものを早くさせる魔法でもある。


時間遅延魔法と呼ばれるのも、周囲がスローモーションのようにゆっくり動くからだ。


当然、こういった魔法は規制対象にもなるしスポーツ大会ではドーピング扱いにもなる。


取り扱えるのはごく一握りの有資格者だけさ。


ま、今回は緊急事態故に使ったわけだ。


女子高生たちに銃を向けて脅しをするようなクズなんざ許しちゃおけねぇ。


ヨシムネの銃口を真っ先にバニーリアンの女子高生を連れていこうとしている男の眉間目掛けて発砲。


「んなぁ?」


50口径弾が男の頭をぶち抜く。


オークを仕留める程の威力……。


並の人間種が耐えきれるわけがない。


頭が浮き上がるようにしてそのまま首が180度曲がるかのようにえぐれている。


こりゃひでぇ。


辺り一面に血しぶきが飛び散ってしまった。


俺、何かやっちゃいました?


うーん、これだと殺っちゃいましただな。


とはいえ、これも正当防衛だ。


社会のゴミを清掃しているし、問題ないな。


俺は清掃人……汚れ仕事を請け負う人間さ。


そして相手はギャングで銃を発砲して店員に怪我を負わせ、強奪行為と婦女暴行までやっている連中だ。


そして何より……。


「お前たちは俺とシホのデートを台無しにしてくれたッ!!!」


それだけでも許せん!!!


どうせ警察はギャングを取り締まろうとはしない。


なら、ゴミは掃除をするに限る。


頭がお花畑で出来上がっている平和主義者みたいに酒飲んで対話で解決しましょう……なんてのは夢物語にすぎない。


こういった対立で必要なのは力。


その力を行使できる人間が必要なんだ。


続けて視界に捉えている連中にも続けて引き金を引く。


「あえっ?」

「んほっ?」

「いくっ?」


赤豹たちは何が起こったのか理解出来なかったみたいだ。


男が立ち上がったかと思えば、次の瞬間には視界はブラックアウト……永遠の眠りにつくって寸法さ。


魔法でなけりゃこうはいかない。


世界記録のガンマンでもない限りは無理さ。


他の人間から見たら、あっという間に店内にいるギャングが撃ち殺されたように見えるだろう。


体感時間では20秒が経過しているが、まだ他の人は1秒程しか経過していないだろう。


まだ間に合う。


外にいる連中にも鉛玉をプレゼントだ。


「釣りは要らねぇ。お代はお前さんたちの命さ」


運転手はハンドルを握ったまま死ぬ。


頭を撃ち抜かれて、そのままぐったりと身体が押し付けられてクラクションが鳴りっぱなしだ。


かわいそうに、ジェロームはこれで『事故車』扱いだ。


血しぶきが飛び散った車なんざ買いたがるのはいねぇ。


そして外の見張り員も同様にプレゼントだ。


オークに獣人族……。


骨格がしっかりとしている種族。


普通のタイマンなら勝てない。


だけど、50口径弾の直撃に耐えきれる構造ではない。


銃弾が体内に入り込んだ瞬間に、臓器だけでなく骨まで砕く。


心臓なら一発で爆発四散する代物だ。


ヨシムネの弾倉が尽きる頃には、店内と外の赤豹たちの死体が出来上がっていた。


ジャケットによく似合うじゃないか。


血塗れの赤豹……。


レッドレパードにはお似合いの死化粧さ。


「残りは……あと一匹ッ!!!」


撃ち殺した赤豹たちを飛び越えて、ハンスリー君の元に駆け寄る。


店の奥に駆け寄ると、そこでハンスリー君は金庫を開けさせられていた。


UZIを構えている男の頭を狙い撃つ。


リーダー格の男だけに、俺が駆け寄ったのを察知してこちらにUZIを向けてきた。


「てめぇっ?!」


素早いな。


フェアな状態なら俺が負けていただろう。


だが、生憎こちらは時間遅延魔法を付与してもらっている。


それがお前さんの敗因だ。


来世での勉強代に俺からのプレゼントさ。


弾倉に残っていた最後の弾丸を発砲する。


「あがるだっ」


頭を突き抜けて、そのまま金庫に張り付くようにぐったりと倒れた。


握っていたUZIも離れて地面に落ちる。


これでギャングの残りはいない。


赤豹たちは死んだのだ。


最後の一人を殺すと同時に、時間遅延魔法の効果が解けた。


「あれ……っ……これはっ……」

「ハンスリー君、大丈夫かい?」

「あっ……あなたは……」

「すまないね……すぐに助けられなくてごめん……」

「いっ、いえ……」


目の前の男が血を吹きだして倒れている事に驚くハンスリー君に駆け寄って無事を確認する。


左の頬に銃で殴られた傷が出来ているが、針で縫うほどの深い傷ではない。


リザードマンの皮膚であれば、一週間程で治るだろう。


まぁ……これなら皮膚科を受診したほうが良さそうだが……。


「……あの、赤豹たちは?」

「俺が殺したよ。安心して、客に犠牲者はいない」

「でも……一体どうやって……?」

「それは企業秘密さ。ま、知らないほうが良い。それが一番だ」

「そっ、そうですね……」

「とりあえず歩けるかい?」

「は、はいっ……なんとか……」

「手を貸すよ。ほら、捕まって」

「あっ、ありがとうございます……」


ハンスリー君を立ち上がらせてから、店内に戻るとそこにはスプラッター映画さながらの光景になっていた。


赤豹たちの頭が吹き飛んで、奴らの着ていた服や銃は真っ赤に染まっている。


一面血の海さ。


だが、()()()は一人も出さなかった。


矛盾しているかもしれないが、被害は最小限……。


人的被害は無し。


ギャングのみを殺した。


仕事ならパーフェクトな出来だ。


正規依頼でもないし、あくまでも緊急時の対応だが悪くない。


ここで勝利の一服としてタバコを吸うのが80年代の漫画や映画だが、生憎俺はタバコは吸わない。


赤豹たちがこの店を狙った理由……。


恐らく、この辺りの縄張りにちょっかい出してこいと命じられたのだろう。


所詮こいつらも武器を持って威張り散らすだけの赤子さ。


「……しかし、災難だったね……ここの辺りは赤豹じゃないんだろう?関東紅屋会か?」

「ええ、ここら辺は全て関東紅屋会系列ですよ。ヤクザのシマに堂々と喧嘩を売るのはああいったギャング連中ぐらいですよ……」

「じゃあ……ここもみかじめ料を支払っているんだろう?」

「ええ、月に10万円ほどですが……」


やはり……。


この辺りは関東紅屋会が仕切っている。


合法・非合法問わず彼らのシノギは多岐に渡っているからね。


それでも、縄張りでこういったことが起これば関東紅屋会も対応しないといけないだろう。


……清掃人としてかの組織とは関わりがあるが、表立って言えることじゃないからな。


「……これで店も損害保険が下りればいいんだけどねぇ……」

「全額は微妙ですね……ギャング絡みの事件では保険会社も火災保険の特約事項に当てはまっていても支払いを渋りますから……」

「それに、支払いをしたとしても最大補償金額も制限が掛けられる感じかい?」

「はい、ガラス代とか含めても100万円ぐらいが支払いの相場です」

「それは酷いな……でも、このままギャングが引き下がるかな?」

「近頃はギャング連中も組織間で連携しているみたいですし、近いうちに()()が実施されるかもしれません」

「ま、その時はここも警備を強化してもらうように頼んだほうがいいな。関東紅屋会系列の警備会社なら腕は確かだ」

「でも、オーナーが許可してくれるかどうか……」

「とはいえ、赤豹みたいなギャングは何度も襲ってくることがあるからね。しぶといのさ、執着心も高い。一度狙われている以上は保護してもらう事も一つの選択肢さ」

「そうですね……」

「何かあれば俺も力になるよ」

「ありがとうございます……すみません、これから警察を呼んで店内で片付けをしますので、一旦店内から退店してもらってもいいでしょうか?」

「ああ、分かったよ」


こうなった以上は、関東紅屋会系列の警備会社に警備を強化してもらうしかない。


幸い、ここは人気店だ。


警備も万全を期して営業していると宣伝してもらったほうがいいだろう。


ハンスリー君が店内から人を退避させて警察に連絡を入れている間、周囲にいる人々は安堵した様子だった。


シホも例外ではない。


「おまたせシホ。終わったよ」

「良かったわ……無事でよかったわ」

「ああ、さ……警察が来るみたいだし、一緒に出ようか」

「うん」


シホの手を握って二人一緒に店外に出る。


「うわあああああっ、怖かったよおおおおおお!!!!」

「もう花ちゃん。もう大丈夫だからね……」

「本当に、あの人がやっつけてくれたから大丈夫よ……」


外ではバニーリアンの女の子も、同じ女子高生たちに抱きしめてもらって泣いている。


あれだけ怖い思いをしたんだ。


緊張の糸がほぐれて泣いたんだろう。


「あっ……!!!ありがとうございます~~~~ッ!!!」

「うおっ」


バニーリアンの女の子は、俺を見るなり駆け足で俺に飛びついてきた。

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