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六人目 Ⅰ

「そろそろ動き始めるつもりかい?」

 

 数日休息し、万全の体調になった頃、シャルが問いかけてきた。

 シャルの問いに俺は頷いた。


「新しいスキルの『模倣』で皆の訓練を見させてもらいました。戦闘技術や隠密技術など色んな物を習得できましたし、休みも取れて万全の状態です。」

 

 そう言うと、シャルは少し笑顔になる。

 

「じゃあ、次の標的はどうするつもりだい?」

「そうですね……。」

 

 実は考えていた事がある。

 この前の坑道での一件と騎士団との戦いで、学んだ事があるのだ。

 鎧で守りを固めている場合、一撃で仕留められない。

 明るい場所では『隠密』の効果を発揮しきれない。

 という二点だ。

 つまり、この二つを補えるスキルを確保すべきである。

 

「一人、個人的にもスキル的にも始末したい人が居ます。」

「ふむ、それは?」

 

 これからそいつを始末できると思うと嬉しくて笑みが溢れてしまう。

 俺の家族が村八分にされていた元凶。

 俺の家族が村八分にされたのは、そいつがいい始めたことなのだ。

 

「……ここの村長です。」

 

 

 

「今回は俺が支援に当たる。『キャンプ』のスキルを持ってるグレンだ。よろしく。」

「よろしくお願いします。因みに、レインさんはどうしたんですか?」

 

 レインに廃屋まで『ワープ』してもらい、そこで先行して準備していたグレンと挨拶を交わす。

 短いが、金髪で隠密には不向きな髪だと思う。

 

「わ、私は別の任務があるので今回は……。」

「なんだ?俺じゃ不満か?まぁ、そりゃ女の方がいいよなぁ。分かるぜその気持ち。」

 

 ウンウンと一人でうなずき納得しているグレン。

 別にそういうわけでは無いのだが。

 

「『キャンプ』は離れても大丈夫なんですか?」

「あぁ。一度展開したキャンプは例え俺が死んだとしてもその場に残るんだ。しまいたい時には俺がスキルを使ってしまう。それ以外で消えることは無い。」

 

 成る程。

 だから前線まで出てこれるのか。

 というか、スキルが『キャンプ』のこの人が前線で戦えるのだろうか。

 休息中の訓練でも見かけなかったが。

 

「お?今俺が戦いに使えるのか心配したな?」

「ア、アルフレッド君。安心して下さい。この人めっちゃ強いですから。私がスキル無しなら絶対に敵わない程です。」

 

 ということは物凄い強いのか。

 レインさんが一二を争う実力だと言っていたのはスキル込みでの話だし、純粋な戦闘能力で考えればこの人の方が上なのか。

 

「おう。スキルが戦闘向きではない分、徹底的に鍛え上げたんだ。期待してくれて良いぜ。」

「……分かりました。よろしくお願いします。」

 

 隙があれば『模倣』で技を盗めるかもしれない。

 これは良い機会だな。

 

「じゃ、じゃあ私はこれで。期日になったら迎えに来ますから。」

「あいよ。レインちゃんも気を付けてね〜。」

「送っていただきありがとうございました。」

 

 レインはこちらに手を振りつつ、スキルで去っていった。

 レインがいなくなったのを確認してからグレンはこちらに絡んできた。

 

「なぁなぁ、お前レインのことどう思ってんだよ?」

「どう?……頼りになる人ですね。それと、命の恩人です。」

 

 グレンはあからさまにため息をつく。

 

「ったく!分かってないねぇ。男と女でどう思ってるかって聞かれたら大体分かるだろ?」

「……分かりません。」

 

 別に聞きたい事は理解している。

 が、別にそういう感情を抱いた事は無い。

 自分の復讐にどれ程関係があるかどうかということぐらいだ。

 

「……まぁ良いか。じゃ、気合入れて行こうぜ!」

「……はい。」

 

 そして、また中々ノリがキツイ人だな。

 もしかしたらシャル以上に厄介だ。

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