何なんだこの物騒なスキル
リコの専属騎士見習いとなった俺には、真っ先にやるべきことがあった。
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エクストラスキル:強者喰い〈ジャイアントキリング〉
エクストラスキル:白金竜鱗〈プラチナスケイル〉
スキル:ソードスマッシュ
スキル:白金爪撃〈プラチナレイド〉
スキル:竜突風〈ドラゴンゲイル〉
スキル:竜氷屠〈ドラゴンフリーズ〉
スキル:竜土壁〈ドラゴンシールド〉
スキル:竜雷撃〈ドラゴンスパーク〉
スキル:永止黒炎〈エターナルイグニート〉
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「マジでEXスキルふたつあるのな……こんなの聞いたことねえ」
そう、いまの俺はいったいなにができるようになったのか。
きちんと正しく理解しておかなければ、専属騎士見習いとしてはマズイだろう。
スキルウィンドウに表示されたスキル名を──強者喰いはスルーしてタップする。
こんなところで火花がでて火事にでもなったらシャレにならない。
俺はふたつ目のEXスキル【白金竜鱗】をタップしていた。
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炎耐性と光耐性を大幅に上昇させる。石化・竜石化状態無効。
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防御系か、まぁ悪くはなさそうだ。
大幅に上昇ってのが相変わらずアバウトでわかりにくいけど。
どんどん見ていく。
スキル:白金爪撃〈プラチナレイド〉
魔力を消費して岩をも裂く一撃を振るう。
スキル:竜突風〈ドラゴンゲイル〉
魔力を消費して小さな村を吹き飛ばすほどの突風を起こす。
スキル:竜氷屠〈ドラゴンフリーズ〉
魔力を消費して火龍サラマンドラを一瞬で凍らせる冷気を放つ。
スキル:竜土壁〈ドラゴンシールド〉
魔力を消費して大地を抉る土壁を隆起させる。
スキル:竜雷撃〈ドラゴンスパーク〉
魔力を消費して生物を気絶させる高圧電流を発生させる。
スキル:永止黒炎〈エターナルイグニート〉
魔力を消費して相手を物言わぬ石に変える黒炎を生み出す。
……うーん、なんだろう。
説明みた感じ竜雷撃以外気軽に使っちゃダメな気がする。
シールド系のスキルも大地を抉ってしまうらしいし。
ほとんど物騒な説明文にため息をこぼす。
リコのほうを見やると、羊皮紙にペンでなにかを書き込んでいた。
「なにしてるんだ?」
「ああこれ? お父様にレドくんに助けてもらったって知らせとこうと思って」
「ちょっ」
俺が追放されたことを書かれたら困る。
確実にジェフティム陛下は父上を問い詰め、追放を取り消そうとするだろう。
「安心して。レドくんの家のことは書いてないから」
「そ、そうか。気を遣わせて悪いな」
「それくらいは当然だよ。私を守ってもらうんだし」
リコはにこりと微笑んだ。
書き終えて、手のひらから光る伝書鳩を召喚する。
羊皮紙を丸めると鳩の首に付けて飛ばした。
召喚魔法は召喚中も魔力を消費するという。
そのためか積極的に習得しようとする魔法士は多くない。
習得しても使いこなせないことがほとんどだからだ。
「あの鳩は、大丈夫なのか?」
「うん、ポッちゃんは逃げるの得意だからね」
「そうじゃなくて、これから治療しに行くんだろ。魔力を使いすぎたりしないかってことだよ」
「あー、あんまりポッちゃんは魔力を使わないから大丈夫。それにもし魔力がなくなってもポーションがあるし──わわっ!」
「うおっ!」
急に馬車が止まり、リコが俺の胸に飛び込んできた。
やはり柔らか……ってそんな場合じゃない。
「お二人とも済みませぬ! 前方に多数の白狼が!」
窓から外を覗く。
あれはホーリーウルフ──通称、白狼だ。
その群れと数十人の冒険者や騎士たちが交戦していた。
いったいどういうことだ。
白狼は普段は大人しく、太陽の光や空気中の魔力を食糧とする魔物である。
いまのように群れで積極的に人を襲うなんてことはないはず。
「ぐああっ!」
考えてる場合じゃなさそうだ。
白狼は戦闘力が高く、連携をとるのも得意と聞く。
ましてやこの数の差だと全滅してもおかしくなかった。
「お前たち! 加勢に入るぞ!」
「待ってくださいセバス殿。ここは俺がいきます」
「しかし、あの数をレド殿ひとりに任せるわけには」
「そうだよレドくん! 危ないことはしないで!」
馬車を飛び出した俺は二人に笑顔をむけた。
「大丈夫です、一人で戦うわけじゃないんで……ウェイ! さっそくだが借りを返してくれ!」
「ほいきた! 乗れよっ、姫殿下の王子様!」
「誰が王子様だ!」
チャラ騎士ウェイの手をつかんで馬に跨り、群れの中心めがけて突っ込む。
大丈夫。
スキルウィンドウはウソをつかない。
それにいくら白狼が強いとはいえ、あのドラゴンほどじゃないのは確実だ。
「……で、こっからどうすんだ王子様? カッコつけるだけつけてあっさり死ぬとかやめてくれよ」
「縁起でもないことを言うな」
「まさかのノープラン!?」
「いいからちゃんと前を見ててくれ」
俺は馬から飛び降りつつ空に掌を向け。
「【竜突風──ッ!】」
空気を一か所に集めるよう風を巻き起こした。
「「「「「ガルルルルルルゥゥゥッ」」」」」
よし、思ったとおりだ。
それとは別に、突風をだせたことで俺の推測は確信へと変わる。
【強者喰い】は、倒した魔物が持つスキルを習得できる、割とヤバいEXスキルであると。
「なるほどな。白狼の魔力を察知する習性を利用して、注意をひきつけたってわけか」
「……なんでウェイまで一緒にいるんだよ」
白狼は俺が一人で引きつけるつもりだったのに。
「馬に乗せたくらいで借りが返せたとは思ってねえ、しッ!」
ウェイは飛びかかってきた白狼を剣で振り払いつつ、続けた。
「お前一人を残したら、後で姫殿下からお説教確定だしな」
白い歯を見せて笑う。
なんだこのイケメン。
もしかしてすげえいいヤツでは?
「無理はするなよ」
「お互い様だろ王子様」
馬から降りた俺たちはあっという間に白狼の群れに囲まれていた。
その数は軽く百体は超えているだろう。
「しっかし、どうせ死ぬなら姫殿下の隣がよかったなぁ」
訂正、いいヤツではなくただのチャラ男だった。
「それだけは絶対に許さん。お前みたいなチャラ騎士が近くにいたら彼女に毒だ。俺で我慢しろ」
「ひっでぇ言い草だな。つーか、なんかそっちはけっこー余裕ある感じじゃん?
いまのお前、姫殿下のムービーで見たときとは大違いだぜ」
「その話はやめてくれ、しにたくなる」
「悪かったよ。この状況でレドに死なれたらオレも絶対死ぬからな」
白狼が一斉に唸り声をあげ、その体に光を宿す。
遠吠えと共に光の槍が四方八方から襲いかかってきた。
「レドッ!」
無数の光槍が俺の体に突き刺さる。
……なんてこともなく、槍は俺に触れた瞬間に飛散した。
『スキル【ホーリースピア】を習得しました』
「「なにっ!」」
目を丸くしたウェイと別の意味でハモる。
あの白金のドラゴンは、白狼よりも強い精鋭騎士の光魔法を受けても無傷だった。
だから光の槍が俺に効かないのは想定内。
しかし、スキルを習得したのは想定外だ。
……ますます【強者喰い】のヤバさを感じる。
とりあえず後で考えよう。
「今度はこっちの番だ。【竜雷撃ッ!】」
放った雷撃が次々と白狼を薙ぎ倒していく。
倒れた白狼は光の粒子にはならない。
よかった、説明文通り気絶で済んでいるみたいだ。
白狼は、俺の出身国であるクレインベルグと友好関係にある、ホーリーナイト聖王国を象徴する魔物である。
それに倒して光の粒子になってしまえば、普段は大人しいはずの白狼の調査もできないだろう。できれば倒したくない。
残った白狼にも竜雷撃を放ち、なんとか事態を収束できた。
「おいおい、あれだけの群れをたった一人で制圧かよ」
「それよりも早く殿下を呼んできてくれ。怪我人がたくさんいる」
「あ、ああ!」
ウェイは慌てた様子でリコを呼びに戻った。
初投稿作品でありながらここまで読んでいただきありがとうございます!
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