話が急すぎる
「どういうことですか陛下」
「……そうじゃな。ここからはレド君と、あとはリコリスとセバスも残りなさい。他の者はすまないが、いったん席を外してもらえるかのぅ」
陛下の指示で、立派な剣を受け取っていたウェイと、リコの護衛騎士たちは退室した。
「もしかすると優しいレド君は怒るかもしれんが、実はな──」
俺はジェフティム陛下からことの顛末を聞いた。
「父上……いや、アルヴァンをオルレイン家から追放したんですか」
「さよう。あの男はもうダメじゃ、落ちるところまで落ちておる」
陛下は眉間に皺を寄せている。
「ジーク君に関してはレド君に任せる。アルヴァンのような理由で追放はやりすぎだとは思うが……君の弟が、なんというかちょっと粗暴なのは事実じゃしな」
言葉を選びに選んでくれているジェフティム陛下。
「……陛下の話によれば、ジークは修行の旅に出るんですよね」
陛下は頷く。
だったらわざわざ呼び戻さなくてもいい気がした。
ジークは俺を嫌っているし、俺だってジークを好いているわけではない。
お互いなるべく関わらないほうがいいんじゃないだろうか。
「私はオルレイン家はレド君ひとりでいいと思います」
リコの発言にセバス殿もうんうんと頷いている。
このふたりもたぶんジークのこと嫌いだろうしなぁ。
いまはわしもそれでいいと思うが……と、ジェフティム陛下は口をひらいた。
「とはいえオルレイン家はいくつか領地を持っておる。いくらレド君でも娘の専属騎士をしながら領地経営をするのは厳しいじゃろ」
陛下もナチュラルに“見習い”がとれているが、ツッコむのはやめた。
「それはそうですね、私の力不足で申し訳ありません」
「気にするでない。これは力がどうこうの話ではなく人数の問題じゃ。いまはわしが信頼しておる者に任せておるが、ずっとこのままというわけにもいくまい。
……そこでじゃ」
ジェフティム陛下がにやりと笑う。
「オルレイン家の跡取りとなる子どもをつくってもらうべく、レド君の嫁を探しをしようと思っとる!」
「「はあぁっ!?」」
俺とリコは驚嘆の声を綺麗にハモらせた。
セバス殿だけが「それがいいでしょうな」と頷いている。
「実はなレド君。すでにわしの元に君とお見合いをしてみたいという要望がたくさん届いておるのじゃ。写真も一緒にある。
大商人を多く抱えるステラード公国のご令嬢。亜人国家シュナイデルのケモ耳皇女。エルフの里フォレスティアの姫。聖王国の騎士団長」
「とりあえず最後のは断ってくれていいです」
陛下がまあまあと言いながら手に持っていた写真を魔法で宙に浮かべた。
すごい、どの女性も綺麗な人ばかりだ。
思わず生唾を飲み込んでしまう。
俺だって健全な男子のひとり。
この写真の人たちが全員俺に会ってみたい、だなんて考えたら冷静ではいられなかった。
「……レドくん……お見合い、しちゃうの?」
急にしおらしい声をだしたリコを見やる。
彼女は瞳を潤ませていた。
そうだ、お見合いなんてしている場合じゃない。
俺は彼女の専属騎士見習いなのだから。
「ジェフティム陛下。申し訳ないですが、お見合いの件はすべて断っていただきたいです」
「なんじゃとっ!?」
陛下が口元をわななかせた。
そんなに変なことを言ったのだろうか。
しばらく俯く陛下だったが、意を決したように顔をあげる。
「すまんレド君。君のことだから会うだけはしてくれるじゃろうと、すでに日取りを進めてしまった方がおる」
「おーとーうーさーま〜……!」
「ひいいいいいぃぃぃ!」
リコがふわりとした銀髪を逆立て、陛下が情けない声をあげた。
「へ、陛下! それはいったい誰で、日取りっていつなんですか!」
「わ、わしらクレインベルグともよく貿易をしているステラード公国のご令嬢……それで日取りは……今日じゃ」
そんな相手を門前払いなんてできるはずがない。
かくして俺は、人生初のお見合いを経験することになってしまうのだった。




