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グレンルート

 私は夜、いつも通りビオラちゃんを部屋に呼んだ。


「まったく、毎晩毎晩子守唄が必要なのですか? いい加減、高校生なのですからお一人で眠っていただければ」


「今日ね、グレン・バーナードにあったわ」


 ビオラちゃんの冗談を華麗にスルーして、私は話し始める。

 その名前は勿論元から把握していたと思うけど、ゲームに関連するとわかったのかすぐに手元にある紙束に目を移した。


「思ったよりも普通に話せたのよね」


 ざっくりとした話をする。



「なるほど。それを同時にできるのであれば有益かと思いますが」


「やっぱりそうかしら」


 グレンとの交友を深めることについてはビオラちゃんも賛成してくれる。

 彼女に理由を聞くと明解で、仮に筋肉ルートに入れなくても宰相の息子に取り入っておけばもしかしたら没落を免れる可能性があるからだと。


 うん、確かに。



「具体的なルートについてはこの紙に書かれていませんが、彼とその主人公はどんな流れで近づいていくのですか?」


「もしかしたら間違っているかもしれないけど……」


 始めの方にクリアしてしまって飛ばしまくったグレンルート、ちゃんと覚えていればいいんだけど。

 目線を泳がせた私に対してビオラちゃんは冷ややか視線を飛ばしてくる。


「本当に興味がなかったんですね」


「そりゃ細マッチョも嫌いじゃないんだけど、ガリガリなのよ!」


「…………見た目しか見てないんですね」


 だって世の中美男美女がモテるんだもの、顔がいい人が良かったり筋肉がある人がよかったりあるでしょ!


「どこで出会ったかは忘れたけれど、学園にあまり来ないグレンに偶然会うのよ。で、私を見ればわかる通り、見た目では判断しない彼は平民出身のフローラに興味を持つのよね」


 そもそもこの学園に平民が来ること自体がかなり特殊で、推薦がほとんど。

 デクスター・ロスチャイルドは学業の成績がイギス王国でも指折りらしいから平民出身でも王族からの推薦を得ている。


 フローラも、実際王様からの推薦だものね。他には非常に優秀な業績を上げた人だったり、スポーツ選手だったりって感じよね。

 スポーツ選手組は後々筋トレ仲間に誘い込みたいけど、多分そもそも私は貴族の中でも上位で平民とは仲良くなれなそうな感じだから後々。本当に後々ね。



「で、天真爛漫なフローラに身分の差関係なく惹かれていくのよ。で、これはバーナード家が関係しているのよ」


 バーナード家は王族ウェールズ家とかなり親密な関係にあり、代々王と宰相の関係にある。

 で、エリオットとグレンも将来そうなることを望まれている。


「グレンの両親はすごく期待しているんだけど、エリオットは天才でグレンは秀才って感じなのよ。で、エリオットは気にしてないんだけどグレンの中ではずっとモヤモヤが募ってているの」


 だからこそ、勉学に励んでなるべく早く力になれるよう努力し続けている。

 エリオットとしてはただ自分の横にいてくれる友達が欲しいだけなんだけど、それに気が付かないですれ違い続けるというストーリー。



「特に他の貴族からしたら王族と宰相だからどっちの方も持てないのよ。間違ったことを言って反感を買いたくないわけだし」


 すれ違って最終的には大喧嘩に発展してしまうのを止めるのはフローラとアメリア。

 普通は二人が協力して解決していくストーリーを想像するけれど、そこはこの『Five princes』の恐ろしいところ。

 アメリアは只管フローラを蹴落としつつ、解決しようと画策するのだ。


 当たり前だけど、そんなことをアメリアができるはずがなくて更に滅茶苦茶な展開を辿る。



 最後はフローラが上手く締めて、何故か全ての原因がアメリアになるというオチ。



「グレンが惹かれるのは貴族とは違う平民らしさ。貴族たちのようにしがらみ、プライドで成り立つ社会との隔絶かしら」


 自分のことを冷静に見て、自分の努力の方向が間違っているという自覚はグレンにある。

 でも、だからと言って自らの進む道を曲げられない。


 だからこそ自由に動き回れるフローラに惹かれるのだ。


「それでは問題ないかと思います」


「え、何が?」


 ビオラちゃんが何を言いたいのかわからない。

 何が問題ないのだろうか。


「客観的な判断をした結果、恐らく今のアメリア様はそのフローラ様と同じような感性だと思われます。どう足掻いても貴族らしく振舞われることは無理だと思いますので」


「え、まだまだ頑張るわよ私」


「……頑張るも何も筋トレをしている時点で普通の貴族ではないので。ただ、そのおかげでグレン様が興味を持ってくださったのでは?」


 私は何も返す言葉がなかった。

 とりあえず結果オーライよね?


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