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島根県立軍出動 竹島奪還作戦  作者: 平谷 口
6/27

島根県が気になる・・

隣県の山口が動き出した。 さらに、他にも。



四人は、だんだんテレビのスタジオいた。

  京子は落ち着かない。

「私の顔が全島根県民に見られるんだわ。 近所の人はもちろん、かつての職場仲間や小中高の同級生たち、み~んなの前にこの顔を晒すのね。 皆どう思うかしら? 四~五十年ぶりに私の顔を見て、老けたわねえって思う人もいるだろうし・・いやだわ」 

「京子、どうした? 緊張してるのか。 普段通りにしてればいいよ。 聞かれたことだけ答えるんだ」

「あんたは、すでにテレビに出た経験があるからそんな事言えるのよ。 全県民が私の顔を見るのよ、落ち着かないわ」

「はっは・・、おいおい、京子、全県民が見るわけじゃないよ。 この番組の視聴率は5%だ。 それに島根県の総世帯数は三十万もないんだ。 二十七万くらいかな。 その5%なら大体一万三千世帯だから、三人家族として、四万人くらいがこの番組にチャンネルを合わせてるってことになる。 でも、三人家族の中でも見るのは一人か二人だ。 だから実質一~二万人見てればいい方だろうな」

「へ~、そうなの、結構少ないのね。 でも、あんた、よくスラスラとそんな計算できるわね。 感心するわ」

「工場での仕事は数字だらけだ。 これくらいお手のもんさ。 京子、落ち着いたか」

「ええ、少し。 でも、一~二万人でもすごい数よね。 見られる方としては、やっぱり緊張するわ」

「野球選手なんて五万人の観衆に直に見られてプレイするんだ。 それに比べればなんちゅうこともないさ」

「そうよね。 それに比べれば・・、 なんちゅう・・ことあるわよ! もう、何で野球選手が出てくるのよ! ったく」

 おちゃらけた?会話をする染谷夫婦を横目に高田、田沢、両氏は落ち着き払っている。 知人のいない他県でのテレビ出演だから緊張するわけもないか。 いや、そんなことを抜きにしても、この二人には物事に動じない風格というか落ち着き感がある。 これまで社会的にそれなりの地位を占めていたのだろう。

 滝司は会った人に対して過去を詮索するような質問はしない。 現在目の前にいる人物を、ただ観察するだけである。 初めて会った人に面接官のように質問を浴びせる人がいるが、それは滝司の趣味ではない。

 放送が始まった。 高田、田沢、両氏の言うことは滝司に話したことと同じである。

「東北の日本海側には、北朝鮮からと思われる不審船が数多く漂着します。また、頭上にはミサイルまで通過して行きました。 こんなことを看過していいのでしょうか? 危機感の無さにはあきれるばかりです。

そんな時、染谷さんが立候補されました。 竹島を奪還するために島根県独自の軍隊を造るのだという、とんでもない公約を掲げ・・。 そんな染谷氏という人物に興味を持ち、矢も盾もたまらず、こうして島根県までやって来た、と、こういうわけです」

 続けて田沢が、「青森も同じような状況です。 それぞれの県の事情は違えど、私も染谷さんに強く賛同し、高田さんと同じく、こうして、染谷さんにお会いしたくて島根県までやって参りました」

 司会者が京子にマイクを向けた。

「奥様は、今回のご主人のことどう思われましたか」

 京子は、元々頭脳明晰な女性だ。 それに、長い間社会人としてもまれてきてもいる。 先ほどまでの不安はとっくになくなっていた。 それどころか、滝司を応援する絶好の機会だと思った。

「はい、私は主人が軍隊を造って竹島を奪還するのだ、と言った時、私はいたく感動し、心から応援したくなりました」

 滝司、「へ?」

 高田、田沢、両氏も顔を見合わせてキョトンとしている。

 京子は続けた、「竹島が日本領土であることは自明の理。 それを取り返したいと思うのは島根県民として、いえ、日本国民として当然のことです。 主人は、狂人と言われようとアホと言われようと、実際に行動を起こしたのです」

 滝司、「アホ?」 

「主人は、以前より有言実行の人でした。 そんな主人の妻として全面的に協力するつもりです。 主人に賛同して下さった高田さん、田沢さんには本当に感謝しております」

 京子は両氏の方を向いて、「ありがとうございました」

「あ、はい。 いえ、どういたしまして。 こちらこそよろしく・・」 とんちんかんな返事をして両氏も軽く頭を下げた。

 さらに京子は続けた、「他にも賛同してくれる方が、まだまだ多くいらっしゃると思います。 県内にも他県にも。 それらが集まって大きな力になることを妻として心から願い、応援しています」

放送が終わって四人は外に出た。 

「驚いたな、奥さんがあんなにもご主人に理解があったとは」 高田が感心して言った後、滝司が、

「京子、何であんな嘘をついた? 大反対だったくせに」

「ほっほ、テレビに出て本当のことを言う人なんて一人もいないわよ。皆、その時に都合よく脚色して言ってるのよ。 街頭でインタビューされる人なんて特にそう」

「へ~。 ま、そうかもな」

「私は最初反対してました。 でも、主人の熱意に負けて妻として良き理解者になろうと思いました。 なんて、教科書みたいなこと言ってもつまらないわ。 竹島奪還の賛同者を増やすために、ちょっと演出しただけよ」

「ちょっと、か・・。 はは・。 大した女房だよ」

「賛同者が増えるといいですね」 田沢の言葉に、

「きっと増えますわ」

「じゃ、京子、俺たち三人は夕陽ホテルに行ってくる。 夕方までには帰るつもりだ」

 京子は一人で家に帰った。

 帰りながらテレビに出たことを思い出して、「結構たのしかったわ。 また出演の機会ないかしら」

 家に着いて玄関のドアを開けながら、

「もう、高田さんと田沢さんがうちに来ることはないのね。 でも、賛同者がどんど増えれば、やっぱりここが仲介場所になるはずよね。 気を引き締めなくては」 大反対していた京子が一番の支持者になってしまったようだ。

 島根県の左隣県はもちろん山口県である。 山口県と島根県は、かつての戊辰戦争では敵同士で、維新討幕派の長州と幕府方の石州、雲州とは激しく、いや、激しくもなく長州軍の圧勝であった。 それでも益田藩は良く戦ったが、大村益次郎率いる長州軍の相手ではなかった。 浜田藩の殿さんにいたっては、戦わずして城に火をつけて逃げてしまうあり様で、その結果、島根県は明治維新のわき役にもなれず、戊辰戦争ではこれといった人物は出ていない。 ただ、文人としては当時、森鷗外や西周などがいる。 

そんな長州に、いや、山口県に桂木という男がいて、島根県のこの妙な動きを気にしていた。

「何だろう? 妙だな。 島根県立軍などと言って知事選に出た奴がいると知ったとき、俺は思わず、プっと吹いてしまった。 案の定、その男は落選して、単なる人騒がせな狂人かと思ったが・・。 いや、どう考えても狂人だろう。 島根県立軍で竹島奪還だなんて。 むむ・・、そんな男の所へわざわざ遠方の青森と秋田から賛同者が現れるとは。 その東北の二人も狂人か? ネットでも倉沢というやつが、盛んに島根県立軍を持ち上げてるし。 一体どうなってるんだ?」

 桂木は自分のことを普段でも長州人というくらい、維新の立役者としての山口県に誇りを持っていた。 なので、時代の変わり目には、必ず長州人が主役として存在していなければならないと本気で思っているのだ。

「もし、竹島奪還が島根県の手によって成功したとしたら・・。 いや、奪還など出来るはずはない・・。 いや、万が一・・。 むむ・・」

 しばらく考えた後、

「長州が脇役になってはいけない。 こんな大事なことを島根県如きに主役になられてたまるか!」 

 こうして桂木は松江に向かった。

また、福岡県では、「島根県で、何やら竹島奪還の動きがあるらしい。 竹島で最初に被害を被ったのは福岡県の漁師だ。 第一大法丸事件の恨みを忘れてなるものか! 本来なら、我が県こそ竹島奪還のリーダーシップを取っていいはずだ。 確かに竹島は島根県に属するが、竹島に関しての恨みつらみは他県より何倍も大きい。 よし、松江に行こう」 

 と、いうわけで、福岡県から 鹿毛かげという男が、これまた松江に向かった。

 そして東北では、秋田の隣県の山形、この山形県にはかつて清河八郎という、あまりにも時代の先が見える傑物がいた。 この男が明治まで生存していたとしたら、元勲の一人になっていただろうことは容易に推察できる。 だが、惜しいことに幕府方の刺客によって命を絶たれた。 享年三十四歳。

 その山形県も、青森、秋田と同じく不審船、頭上をミサイルと同じ状況だ。

 山形県の内陸部、寒河江市に住む早坂という男はポツリと、「両県に先を越されたな。 島根県での動きを知りたい」 この早坂も、ここ山形から千km先の島根県に行くことを決めた。




つづく











 








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