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島根県立軍出動 竹島奪還作戦  作者: 平谷 口
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島根 秋田 青森

 島根県に秋田から高田、青森から田沢が来た。 京子は思わず、「桃園の三人ね・・」



 滝司は翌朝、松江駅のサンライズ出雲の到着する二番ホームにいた。 滝司自身、松江駅の構内に入るのは久しぶりのなので、まるで彼が旅行者のようにキョロキョロと辺りを見たり、土産物の売店では、あまりにも多い物産に驚き感心したりと、結構楽しんでいる。 

「駅に来るだけでも、何となく旅行情緒が味わえるもんだな。 京子に何か買ってってやろう。 松江駅のお土産だって言って。 はっは」

 そうこうしてるうちにサンライズ出雲がホームに入って来た。 ほとんどの乗客は途中で降りたみたいで、人はまばらだ。 なので、田沢さんはすぐに見つかった。 あっちも気づいたらしく、こちらを見てニコニコしてる。

「なるほど、恰幅のいい人だ」

 田沢はラフな格好をしている。 体格がいい上にサングラスをかけているので、一見怖そうに見えるが口元は鶴瓶のように愛嬌があると滝司は思った。

「染谷さんですね。 田沢です。 倉沢さんを介して、こうしてお目にかかれて嬉しいです」

 言ったあと、田沢は滝司の両手を、これまた田沢の両手でしっかりと握りしめた。

 なんて強い力だ、

「染谷です、よろしく。 はるばる青森から島根県まで、さぞ長旅だったでしょう」

「いえ、久しぶりの長距離旅行で楽しかったですよ。 島根県は初めてですし、それに、サンライズ出雲はすごく快適でした」

「そうですか、それは良かった。 ところで、田沢さんはラグビーかなんかやってらっしたのですか? 体格もいいし、握られた手も力強かったので・・」

「卓球部でした」

「へ?」 

「秋田から、一足先に高田さんがいらしてるそうですね。 会うのが楽しみだ」

「高田さんもそう言ってましたよ。 さ、それじゃ、私の家に行きましょう」

  二人の男を乗せてラパンは出発した。

「ほ~、あれは国宝松江城ですね。 素晴らしい。 時間があったらゆっくり見たい」

「今度案内しますよ。 青森と言えば、弘前城の桜祭りやねぶた祭りなど、全国的に有名なイベントがありますね。 羨ましい限りです。 残念ながら島根県にはそういったものはありません」

「何をおっしゃる、神楽があるじゃないですか。 ヤマタノオロチの場面は圧巻だ。 生で見てみたいですね」

「え! 神楽を知ってるんですか。 こりゃ、嬉しいな」

「当たり前じゃないですか、神代の日本が古事記に基づいて表現されてて、テレビで見ててもワクワクします」

「私が、子供の頃、毎年見てた石見神楽を、ぜひ田沢さんにも見ていただきたい」

などと、お互いのお国を持ち上げながら、話は弾んだ。 滝司は、秋田の高田さんといい、青森の田沢さんといい、気が合いそうで良かった、と思った。

滝司の家について田沢の目に付いたのは、案の定フェラーリだった。 秋田ナンバーを見て、

「高田さんはフェラーリで秋田から来られたんですか。 すごいなあ」

「ええ、私も生まれて初めて助手席に乗せてもらいました」 こりゃ、またフェラーリ談義がはじまるかな? それもしょうがないか。 滝司もけっして車の話は嫌いではない。 むしろ好きだ。ま、男なら皆そうだろう。 ましてや自分ちのガレージにテスタロッサが止まっているのだ。 そりゃ、他人の車とはいえ、若干興奮してしまう。

 玄関では京子と田沢が出ていて,お互い、お決まりの挨拶をしあって家の中に入った。 もちろん、フェラーリ談義があったが、それは割愛しよう。

 田沢は京子にお土産の青森のリンゴを渡し、今回、島根県に来た理由を熱っぽく語り始めた。

「染谷さんには感心致しました。 島根県立軍創設などと言う・・」 ごほん、咳を一つし、「こういう事を堂々と知事選でいうのは、おそらく相当勇気がいったでしょう。 青森でも、その・・、狂人だと言って嘲笑する者がほとんどでした。 お気を悪くしないで下さいね」

「はっは・、気にはしてません。 そういう反応は覚悟してましたから」

 横で、高田も頷いている。

 さらに田沢は続けた、「染谷さんは竹島奪還を掲げておられますが、残念ながら青森ではそこまで竹島に関して興味を持つ者がいません。 しかし、県単位の危機意識といいますか、国防意識といいますか、そういうものが絶対に必要だと思っています。 先日も中国の軍艦が津軽海峡を堂々と通過しました。舐められています。 腹立たしいかぎりだ。 こんなんじゃあ、夜陰に紛れ込んで不審者が上陸してもなんら不思議ではない」

 高田が、「竹島ですが、今ではユーチューバーの倉沢さんのように憤慨している人が全国的に増えてるように思いますね。 倉沢さんも島根県から遠い福島県の人だし、徐々にですが、竹島の日も認知されてきました。 島根県庁前の騒動は必ず全国ニュースに出ます。」

 それは、滝司も実感してる。 それにしても、今回のことで縁ができた人たちが皆、遠方の東北の人だということが、滝司にとって何となく嬉しかった。 全国的な広がりを予感させるからだ。

 高田が続けた、「秋田県や青森県では何度も北朝鮮からのミサイルが頭上を飛んでった。 これで危機感を持たないとしたら、相当な鈍感頭だね。 イージスアショアでミサイルを迎撃したら、その破片が一般市民を直撃する可能性があるので反対だ、などと頓珍漢なことを言う議員がいるに至っては、もう開いた口が塞がらない」

 滝司ももっともだと思ってる、「そういう連中は、敵ミサイルが街中で炸裂する被害は考えていないのだろうか?」

「日本中、そのような認識だから最悪だ! 中国も北朝鮮も、さらに韓国までもが日本を敵視している。 何千発ものミサイルが日本に照準を合わせているというのに、この危機感の無さ。 スパイ防止法一つ作れない。 バカバカしい!」

 高田が、若干興奮気味にしゃべるのを聞いて、滝司も田沢も大きくうなづく。

 その、うなづく滝司に向かって高田は真顔で、「染谷さん、本題に入りましょう。私は、いや、私も田沢さんも、今回島根県に観光に来たのではありません。 いや、観光も、もちろんしたいですが、それより染谷さんの真意を聞きたい。 島根県立軍を造る青写真をお持ちなんでしょね。 それをぜひ聞きたい」

 田沢も、「そうです。 それを聞きたい。それぞれの県に事情の違いはあれど、染谷さんの計画に私たちは強く惹かれたのです」 

「はい」 滝司は以前、浜溝知事に同じことを聞かれ、船百隻で竹島に向かうと言った。 一を聞いて十を知る浜溝氏はすぐ悟ったようだ。 同じことを、この二人にも言うだけである。

「どんな船でもいい。 漁船でもプレジャーボートでもヨットでも。 百艘以上、多ければ多いほどいいと思ってますが、その船団で竹島に向かいます」

「・・」 田沢と高田は唾をごくりと飲み、お互い顔を見合わせた。 「驚いた・・」

「当然、国内外から妨害はあります。 それでも行きます」

「無防備で?」 高田が効いた。

「もちろんです。 武器を用意したら、それこそ逮捕されてしまいますから」

「竹島には韓国兵が常駐してますが、そいつらに銃撃されたらどうしますか? ひとたまりもなく、こちらは百艘だろうが千艘だろうが、あっという間に全滅ですよ」

 田沢が、「実際、過去に日本の漁師が銃撃されて何十人も死傷者を出したと聞いてます。 同じことになると思いますが・・」

「ええ、 四十四名の死傷者を出しています。 さらに千艘以上の漁船が拿捕され、大変な悲劇を生んでいます。 あの国は、それに対して何の保証もしていません。 ただ、竹島、奴らのいう独島ですが、根拠も無しに我々韓国のものだと言うばかり」

「同じことを聞きます。 また悲劇を繰り返すのでしょうか」 高田が問うた。

「いいえ。 時代が違います。 あんな彼らも国際社会の一員です。 そう簡単には無防備な民間船を銃撃できませんよ」

「そうでしょうか・・」 田沢も高田も不安な顔をしている。

 滝司は続けた、「そして、我々には島根県立軍がついています」

 田沢も高田もキョトンとしている。

「どういう意味でしょう。 分かり易く言ってください」

「つまり、日本国自衛隊が島根県立軍です。 それが我々を護衛してくれます」

 田沢も高田も、頭が混乱した。 しばらく声がでない。

 やっと、高田が、「自衛隊が島根県立軍・・? 全く分かりません」

「お二人とも約束してください。 これから私が喋ることは秘密ですよ」

「ええ、それはもう・・」

「無謀でも何でも、我々が大船団で竹島に向かえば海上保安庁や海上自衛隊はどうでるでしょうか。 当然、保安庁は徹底的に我々の行動を阻止するでしょう。 それをかいくぐって、さらに進めば次に自衛隊が出てくるでしょう。 だが、百艘以上の船団を海上自衛隊といえども完全に止めることはできない。 そして我らはひたすら竹島を目指します」

 ここまで聞いて田沢も高田も滝司の言わんとすることを理解した。 両氏、同時に、「自衛隊を試す気ですね」

「そうです。 どんどん竹島に突き進む我々に対してどうでるでしょうか? 体当たりしてでも止めようとするでしょうか? しかし、そうして何艘かの船を止めたとしても無駄です。 多勢に無勢ですね。 残った船でさらにどんどん進みます。 で、自衛艦は最終的にどうすると思いますか」

 ちょっと間をおいて、高田が、「船団の進路前方に向けて妨害射撃・・」

「それは絶対ないでしょう。 自衛隊が市民に銃口をむけたらお終いです、ありえません・・。 たとえ、それでも進みます」

「しかし、・・、そのまま竹島に近づくと、今度は韓国兵が銃撃してきます。 そうなればひとたまりもありません。 小型船など簡単に沈没されてしまいます。 下手すると死者がでるかも・・」

 続けて田沢が、「韓国領海に対しての不法侵入として容赦なく攻撃してくるでしょうね。 高田さんが言う通り死者がでる」

「韓国領海・・。 いいえ、日本領海です。 まず、全員がそういう認識を強く持たなければなりませんね。 しかし、あちらも自国の領海だと主張しています。 なので、田沢さんの言う通り銃撃される可能性は大いにあります」

「そういう状況なった場合自衛隊はどういう行動にでるでしょうか? 染谷さんはどう思ってます?」

「分かりません。 が、これだけは言える。 もし、我々を助ける行動に出なかったら、あんなもん無用の長物ですね。 だが、自衛隊が我々を護衛すると決断した時点で、それは島根県立軍になります。 主導権はこちらにありますからね。 そうならないのであれば、自衛隊は抑止力にもならない只のオモチャの兵隊です。

「オモチャのですか・・」

「さらに、海上保安庁にいたっては不審船を発見しても領海外に追い出すだけです。 その不審船の中に、拉致被害者が泣き叫びながら助けを求めているだろうという想像力はないのでしょうか? 結局、楽な方を選んでるだけです。 言い訳も、不審船の速力に追いつけなかったなどと、バカなことを言います。 情けない・・」

田沢が、「いつだったか、北朝鮮の不審船を銃撃したことがありましたね。 その後、北朝鮮の不審船はピタリと来なくなりました。 染谷さんの言う通り、早めに荒療治をしてれば、拉致被害者で助かった人もいたかも知れません」

 高田が、「現在、日本海側に漂着する北朝鮮の不審船の目的は、明確には分かりませんが不審船であることには違いありません。 要注意です」

「ふむ、そうですね。 このように自衛隊にしろ海上保安庁にしろ宝の持ち腐れです。 ですから我々が行動を起こし彼らを覚醒させるのです。 行きますよ! 竹島に。 お二人ともついて来られますか」

 キッチンでこの話のやり取りを聞いていた京子はハラハラしている。 

 うちの旦那は本気で竹島に突撃するのかしら? 今まで漠然としていたものが急に現実味を帯びてきた。 はるばる東北から来られた二人に、最後に、はっは・・、妄想ですよなんて落ちを言ってごまかせるはずがない。 そんなことで締めくくったら高田さんも田沢さんも激怒するだろう。 からかっているんですか! って。 浜溝さんと話した時とは状況が違うわ。 うちの旦那は普通の退職したサラリーマン。 それが、こんなスケールの大きいことを真顔で話している・・。 男の人ってみんなこうなのかしら? 普通に生活しながらも、天下国家を考える部分が頭の中にあるのかしら? 不思議だわ。 それにしても、これから滝司の身に何が起きるのだろう・・? 京子の心配はつのっていく。

「私は、島根県立軍などと大仰に言ってますが、公式の名称ではありません。 勝手に名乗っているだけで島根県とは何の関係もありません。 はっは、もちろんお分かりだろうと思いますけどね」

「ええ、そうだろうと思ってました。 それにしても、島根県知事からよくクレームが来ませんね」

 滝司は、以前、今お二人が座ってるソファーに浜溝知事が座っていて、島根県立軍も含めていろいろ懇意に話をしたんですよ。 と、今は言えない。 高田の言葉にただうなづいただけだった。

「染谷さんの考えが分かりました。 あまりにも突拍子のない・・、ごほん。 いえ、スケールが大きいので頭がちょっと混乱しましたが、突き詰めるとおっしゃる以外に方法はありませんね。 私は、精いっぱい協力したい。 そして、秋田県にも、目的は若干違えど同じような県立軍を創設したいと強く思いました」

「ええ、私も高田さん同様、染谷さんに全面的に協力したい。 染谷さんのお話を伺って感動しました。 わざわざ青森から来たかいがあったというものです」

「あとは具体的に、少しづつでも前に進むだけです」

 キッチンで京子は思った。 「まるで、三国志の桃園の誓いね・・」

その頃、江津市から一台の中古のベンツが松江に向かっていた。

「おい、そろそろ奴のところだな。 おい、三上。 今度は暴力を振るうなよ。 今度やったら只ではすまん。 実刑だぞ」

「分かってるよ。 あんときは、あの野郎がクソ生意気なことぬかしやがるから、つい手が出てしまったんだ」

 以前、滝司にいちゃもんをつけに来て、暴力を振るったあの四人だ。 中古とはいえ、今度はベンツでやって来た。 他人を威嚇するにはベンツの方が効果的だと思ってのことだろう。 この軽薄な連中がフェラーリを見たらどうするのか・・?




       つづく



    

 











   

 











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