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島根県立軍出動 竹島奪還作戦  作者: 平谷 口
3/27

フェラーリ

滝司に賛同した高田が秋田からやって来た。


中国自動車道を1台の真っ赤なフェラーリが走っていた。

「なるほど。ガラガラだ。前後に車が1台も見えない。 ふむ、確かに宝の持ち腐れ高速だな。しかし、ドライブするには持って来いだ」 つい、アクセルを深く踏んでしまう。

 運転しているのは、秋田県の高田であった。 染谷に会いに行くところだ。

 岡山県に入ってしばらく走ると、高田は突然、「なんだ! 60kmだって!」

 中国自動車はカーブやアップダウンが多く60kmや70kmなど、こまめにスピード規制が行われている。

 高田は、あわてて減速した。幸いネズミ捕りには引っかからなかったが、ここはしょっちゅうネズミ捕りをやっていて、ドライバー泣かせのポイントなのだ。

 300km/hで走れるフェラーリにとって、ある意味、この高速道路は苦痛かもしれない。 もっとも、日本中、どこを探しても300km/hで走れる高速道路は存在しないが。

「染谷さんの、中国道アウトバーン構想、何となく支持したくなるね」

 でも、染谷に会いに行くのは道路のことではない。 高田は染谷の島根県立軍構想というものに強烈に賛同したのだ。

 滝司と京子はくつろいでいた。。

「今日、秋田から高田さんが来られるのね。 そろそろじゃないかしら」

ブロロロ~~。

「何? 何の音? 玄関の方から聞こえるわ」 居間にいた京子が驚いたように言った。

 常時、玄関の前を映しているPCモニターを見た滝司が、

「わ~、凄いな。真っ赤なスポーツカーだ。 フェラーリかな。 うちの前に止まったぞ。 ひょっとして高田さんか。 そうに違いない。 出てみよう」

「私、ここ片付けてるから先に出てて」

 滝司が玄関に出ると、染谷家には似つかわしくない真っ赤なフェラーリが止まっていて横に六十歳前後の男性が立っている。

「初めまして。 高田と申します。染谷さんですね、お目にかかれて嬉しいです」

「染谷です。 秋田からわざわざ来られて、さぞ疲れたでしょう・・。 と、ところでこの車、たしか、フェラーリのテスタロッサですね。凄いな~。 こんなに間近で見るの初めてですよ」

「友人が安く売ってくれまして・・。 ところで、今回、染谷さんの島根県立軍構想にいたく感動いたしまして、是非膝を交えてじっくりお話を伺いたいと思いまし・・」

 高田が喋ってる途中なのに、滝司は、

「これ何CCのエンジンなんでしょう?」 フェラーリの前後左右をなめるように見ながら、高田の話はそっちのけで、「それにしても車体が低いな~」

「はっは。エンジンは5Lです。車の話はさておいて、島根県立軍ですが。染谷さん、その話をしましょう」

「あ、そうだ。そうですね。そのために来られたんですものね。 あまりにも凄い車なので、つい見とれてしまいした。 失礼しました」

 そこへ京子が出てきた。

「紹介します。妻の京子・・」 滝司が言い終わらないうちに、

「わ! 何これ、なんていう車ですか? すごいわ!宇宙船みたい」

 京子も挨拶そっちのけでフェラーリに見入っている。

「京子、失礼じゃないか。高田さんに挨拶するのが先だろ」 滝司は自分のことは棚に上げて京子に注意した。

「あ、そうだったわ。失礼しました。 京子と申します」

「高田です。ご主人の県立軍について・・」 言い終わらないうちに、

「この車なんていうんですか? こんなすごい車初めて見たわ。さぞ、お高いんでしょうね」

「おいおい、京子、失礼だぞ。お高いだなんて。この車はだな、フェラーリテスタロッサといって300km/hでるんだ。以前、野球選手の清原が乗っていたな。 何千万円もする高級車だ」

「すごいわ~」、

「あの~、お二人とも・・。 車談義はそのへんにして、県立軍構想の話をしましょう」

「あ、そうだった。はっは・・。またまた、失礼しました。 それでは家の中に入ってじっくりお話しましょう。京子、お茶の用意を」

 その時、後ろから声がかかった。

「染谷さん。 あら、お客様? 何、この車。すごいわね~。 あら、こちらの方のですか」 

 向かいの橋本さんの奥さんがやって来た。

「秋田から来られたのよ、このすごい車で。 時速300km/hでるんですって」

 京子がいった後、滝司も、「フェラーリテスタロッサという車です。島根県にあるのかなあ? 多分、無いだろう。見たことないもんな」

 話が、また元に戻ってしまった。

高田は、「×××・・」


 フェラーリ談義が終わった後、四人は居間にいた。 フェラーリはガレージのラパンの隣りに入れた。 通行人が見たら皆驚くだろう。

 お互い、改めて挨拶をし直し、高田は秋田から持参した土産をわたした。

「どうも、すみませんね。 あら、きりたんぽ鍋セットに稲庭うどんだわ」 

「お~、きりたんぽか。 珍しいな。 こちらでは食べる機会がほとんど無いから、こりゃ、嬉しい。 後でごちそうになります。 楽しみだ。高田さん、ありがとうございます」

「いえ、喜んでいただけて、私もうれしいです。 ところで、倉沢さんから聞いたんですが。 青森から田沢さんという方がこちらにいらっしゃるそうで。 やはり、染谷さんの県立軍構想に興味があるということなので、私も会うのを楽しみにしているんですが。 まさか、秋田と青森。隣県同士が、ここ島根県に来るなんて、なんというめぐり合わせでしょう。はっは」

「そうですね。 以前、東北はちょこっと旅行したことがありますけど、最近はここら辺を車でウロチョロするくらいで、とんとご無沙汰しております。 また行ってみたいな」

「行けますかな」 高田が意味深なことをいった。

「行けますかな。 とはどういうことでしょう?」

「染谷さん。あなたの県立軍構想に、少なくとも2人、私と青森の田沢さんが反応しました。おそらく、賛同者は他にもいると思いますよ。 そしたら、染谷さんはのんびり旅行なんてできなくなりますよ」

「他にも・・」 滝司もそう思ってはいる。 ただ、島根県まで来て実際に、目の前の高田さんのように行動を起こす人が何人いるだろうか。 大勢の人が賛同してくれて、それが大きな力になるだろか・・。たんなる同好会になってはつまらない。 賛同者が増えれば増えるほど、ちゃんとした組織として綿密な計画が必要になってくる。

「そうだった。旅行なんて二の次だ。 県立軍構想の言い出しっぺの私がのんびり旅行なんて言ってられない。京子には悪いが、しょうがない」

 キッチンで、二人の話を聞きながらお茶の用意をしていた京子は、あえて黙っていた。

「粗茶ですがどうぞ」 といって高田の顔を見た京子は、

「高田さん。そうとうお疲れですね。むりもないですわね、秋田からずっと運転されて来たんですもの」

「ええ、まあ。歳かな。 はっは」

「ねえ、あなた。 お話は明日、田沢さんが来てからでもいいんじゃないの」

「ああ、そうだな。 高田さん、そうしましょう。今日は休んでくださいよ」

「じゃあ、そうしますか。 どこかホテルありますか?」

 滝司は、我が家に泊まってもらってもいいと思ったが、浜溝さんの時と同じで、よその家では落ち着かないだろうと思い、あえてそれを言わなかった。

「近くに日本海夕陽ホテルというビジネスホテルがあります。 さっき、フェラーリを見に来られた、前の家の奥さん、その旦那さんが支配人をやっておられたホテルです。 老舗で、なかなかいいホテルですよ」

「そうですか。じゃ、そこで今夜はゆっくりします」

「京子、電話しといてくれるか。 シングルお願いしますって」

 ブロオオオオオ~。

 高田は、またフェラーリのエンジンをかけた。 なんと、助手席に滝司が乗っている。 ホテルから家は歩いて帰れる距離なので、ホテルに案内するためフェラーリに乗ったのだ。本当は長距離ドライブに連れてってもらいところだが、それは叶わない。 でも、助手席に座っただけでも滝司は興奮しきりだった。

 高田さんをホテルに案内した後、家に帰った滝司に京子が、

「さっき、田沢さんから電話があったわ。 明日の朝サンライズ出雲で来るんですって。いいわね。 私たちもまだ乗ったことないのに羨ましいわ。 田沢さん、キップよくとれたわね。 超人気の夜行列車なのに」

「確か、サンライズ出雲は、松江駅に九時過ぎ到着だったな。 よし、明日の朝迎えに行こう。 何か特徴を聞いたか?」

「ええ、サングラスかけてるんですって。白内障の手術をしたんで、眩しいからって。 それに、身長185センチだから、かなり大柄で目立つだろうって言ってたわ。 すぐにわかるわよ。 一人でウロチョロしてる人がいたら、その人が田沢さんよ。 携帯番号は080-0029-****」

「秋田県もかなり遠いけど、青森はさらにその向こうだから、かなり疲れてるんじゃないかな?」

「何言ってんのよ。 サンライズ出雲だからゆっくり寝られるわ。 シャワーもあるし、心配ないわよ」

「あ~、そうか。 そうだった。 それにしても遠方からわざわざ、この俺に会いに来てくれるってのが嬉しいよ。 早く会いたいね」

「あなたが知事に立候補して言った島根県立軍構想が、日本中に相当インパクトを与えたのね」

「はっは。 良いインパクトならいいが、狂人としてのインパクトが何倍も多いだろうよ」

「でも、高田さんと田沢さんは真面目にあなたに賛同してくれたわ」

「ふむ。 田沢さんとはまだ会っていないが、高田さんと三人でじっくり話してみよう」

「あら、私は?」

「あ、ごめん。四人だ。 京子も最近は協力してくれて感謝してるよ。急なお客さんにも快く対応してくれて嬉しく思ってる。ありがとう」

「なによ、改まって。ほっほ・・。 わたし、やっぱり四人でというのは返上するわ。 私は裏方でいい。三人でじっくりお話しなさいよ」

「そうか・・。 ふむ、女性の賛同者もいればいいのにな。 そうすれば、お前も話し相手として張り合いがでるだろうし、男ばっかりというのも、なんだか味気ない。 もっとも、軍隊を造ろうという話に飛び込んでくる女性は、ふつういないだろうな。 いたら、相当稀有な女性だ」

「そうね・・」

「敷島旭日会の倉沢さんと寺田さんを加えて、今んところ五人か。 とにかくゆっくりだが、動き出した感がする」




                  つづく


 


 

 

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