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島根県立軍出動 竹島奪還作戦  作者: 平谷 口
20/27

核弾道ミサイル    近未来SFになりました。

 キム将軍はとうとう最悪の決断をした。 それは諸刃の剣にもなる決断だ。


 「日本の奴ら,なぜ引き返さない? 核ミサイルが怖くないのか! 三発同時に撃てば、さすがのイージス艦も防ぎきれんだろうに、それとも奴ら、イージス以外にも防ぐ手立てを何か持ってるのか? むむ、そんなはずはない。 そんなこと聞いてないぞ」 キム将軍も、相当いらだってきた。

「発射まであと一時間です」

「よし、世界中に向かってこう放送しろ。 我々は日本軍によって恫喝されている。 拉致被害者などと言われの無い罪を我々にかぶせ、この神聖なる朝鮮の領土を奪おうとしている。 世界中の人に言いたい、平和を愛する朝鮮民主主義人民共和国を脅かす、悪しきイルボンを非難し、そして我々を支援して欲しい。 分かったな。 早くやれ」

「はっ! 早速ユーチューブに上げます」 といってパソコンに詳しいトンムが、今キム将軍が言った通りのことをマイクに向かって、何度も繰り返ししゃべりだした。 これが独裁国家の悲しくて愚かなところだ。 いくらそのようなプロパガンダを世界に流しても誰も相手にしない。 嘲笑されるだけだということを理解していない。

 時間がどんどん過ぎる。 日本側も北朝鮮側も緊張がみなぎってきた。 日本の政府も自衛隊もできる限りの防衛体制を敷いているが、本当に核ミサイルが飛んできたら防げるのだろうか? 日本側の読みは、北朝鮮の核ミサイル開発の進捗状況からして一発か、多くても二発完成してればいいとこだろう、と踏んでいる。 さらにお粗末な北朝鮮の技術で、どこまで精度の高いものができるか、はなはだ疑問だ。

「日本の奴ら、引き返すつもりはなさそうだな。そんなに核ミサイルを撃ってほしいのか! ならご希望通り・・」

 その時、キム将軍や取り巻き連中が見守るモニターに、日本艦隊の甲板で介抱される北朝鮮人民の映像が映し出された。

「な、何だあれは! あんなに大勢の人民が敵側に逃げたのか・・。 むむ・・」

 モニターには忙しいそうに走り回る日本の医療スタッフや自衛隊員の姿が映し出されている。

 避難民は皆、暖かそうな毛布にくるまり、手には湯気の立つ、なにやら飲み物を持っていて、それを美味しそうに口に運んでいる。そして、盛んに日本人に向かって頭を下げているのだった。

 映像を見たリ・トンムは内心穏やかではない。 唇を嚙みしめ、かいがいしく動き回る日本人を食い入るように見つめながら、心の中で、「日本人が必死で我が国民を救おうとしている。なのに、我々はいったい何をしてるんだ? 我が共和国の人民は、我々にではなく日本人の方に助けを求めに行った。 それに対して嫌な顔一つせず、日本人はあのように我が同胞を必死で救おうとしている。 なのに我らは、その日本人に向けて核攻撃をしようとしてるのだ・・」

 もちろん、今思ってることを声に出すわけにはいかない。 他のトンム(同志)はどうだろう? 私と同じことを考えているのだろうか? しかし、聞くわけにはいかない。

 その時、キム将軍が語気荒く、「イルボンめ! 我ら同胞を救うふりをして虐待しているに違いない! 畜生!」

 まさか、虐待だなんてありえないとキム将軍も知ってはいるが、キム将軍にとって日本は常に悪者でなくてはならないのだ。

 等々、九時三分前、核ミサイル発射まであと三分と迫った。

 キム将軍は発射ボタンに手をかけ、日本の官民連合軍に向かって、いや、世界に向かって、「イルボンに告ぐ! 今すぐ引き返せ! 我々を恫喝するのをやめろ! さもないと、この核ミサイルの発射ボタンを押すことになる。 我々に非は無い! 世界の人々に言う! 我々の領土を狙う非道なイルボンに鉄槌を下す! これは正当防衛で、全ての非はイルボンにある!」

 と言って人差し指を赤い発射ボタンに近づけた。 小刻みに指が震えてる。

 キム将軍は心の中で、なんども同じセリフを繰り返していた。「どうして奴ら引き返さないのだ? 核ミサイルが怖くないのか・・。 どうなってる?」 キム将軍の心中は乱れに乱れている。 このボタンを押したくない・・。押したら、この俺も我が人民共和国も消滅するしかない。 どうしてもあの強力な日米軍には立ち向かえないのだ。 イルボンは核で簡単に脅せると思っていたが、イルボンは怯む様子を見せない。 なぜだ?

 キム将軍の心の中はいろんな思いが交錯するが、独裁者はいつでも間違った選択をしてしまう。

 心の中の弱気な部分を皆に見せるわけにはいかない。 精いっぱい虚勢を張って人差し指を、さらに発射ボタンに近づけた。 そこにいる親衛隊の十人も顔がこわばり瞬き一つせず、キム将軍の人差し指を見つめている。

キム将軍閣下、ボタンを押さないでくれ・・。 お願いだ。 トンム全員がそう思っている。 しかし、キム将軍の人差し指は、全員の気持ちとは裏腹に徐々に発射ボタンに吸い込まれていく。

 そして、震える指でボタンは押された・・。 その瞬間、キム将軍は目まいを起こし、自分のやったことに自分自身が驚いてしまった。 後戻りはできない。 その部屋の中の空気は凍り付いた。 誰も言葉がでない。


「レーダーに3機のミサイル確認。 ロフテッド軌道に打ち上げられたもよう」 レーダー士から報告が入った。 同時にイージスシステムが瞬時に作動し、迎撃ミサイル3発が発射された。

 ロフテッド軌道とは比較的近い国を狙う際に用いられる打ち上げ方法だ。 ほぼ、上空2000キロメートルくらいまで上昇させ、そして、そこから目標都市に向かって自然落下させるのだ。 落下速度はマッハ10(時速12000km/h)にもなり,迎撃するのは非常にむつかしい。

「さ、3機だと! 予想より1機多い。 むむ・・」 総司令官”いずも”の艦長は、ちょっと顔を曇らせたが、さほど心配してるでもない。

 部下の方が顔面蒼白で、「か、艦長、三発です。大丈夫でしょうか・・」

 頭上では、グングン上昇していく各弾道ミサイルを、イージス艦から放たれた三発の迎撃ミサイルが、これまた追撃するためにグングン上昇して行く。 各弾道ミサイルはスピードに乗るのに時間がかかる。 なのでスピードはイージス艦からの追撃ミサイルの方が速い。

「敵ミサイル1機消滅!」

 艦内で、「お~!」 どよめきが起った。 が、まだ喜んでる場合じゃない。 

 そしてすぐに、また、「敵ミサイル2機め消滅」 またまた、どよめきが起った。 あと1機だ。

 レーダースクリーンには残る1機の敵ミサイルと、それを追いかけるイージスミサイルが点として表示されている。

 そして、皆が固唾をのんで見守る中、その2つの点が重なった。 撃墜か! と、思った次の瞬間、重なった点が、また2つに別れ離れていった。 はずれたのだ。

 全員声を失った。 しばらくして、やっと誰かが、「た、大変だ! 東京が、東京が‥火の海に」「パック3がある。 大丈夫だ」「いや、パック3では無理だ。 マッハ10で落ちてくるミサイルは撃墜できない」

 また、全員が押し黙ってしまった。

 皆が絶望的な顔をしてるその時、艦長が、「心配するな」

「え?」

「これは重大秘密事項だが、もういいだろう。 どうせ近日中に発表されるんだから」

「なんです?」

「実はレールガンが完成してるんだ。 すでに要所に配備してある。 敵のミサイルがマッハ10だろうが20だろうが容易に撃ち落せるだろう。 実験ではパーフェクトだったということだ」

 全員が、「え~! 本当ですか?」 「あのアメリカから引き継いだというあれですか?」「し、信じられない・・」

「本当だ。 我々はここでじっとして、官邸からの指示を待ってればいい」

 皆、それぞれ顔を見合わせて、誰ともなく、「あのレールガンが・・。 じゃ、何も怖い物無しじゃないか」

 しかし、実戦と実験は違う。 しかし、それが最後の頼みの綱なのだ。 


 東京は、核ミサイルが飛んでくるというので、一時パニックになったが、暴動までには至っていない。 が、交通網などはそれなりに混乱している。

 首相官邸では政府の首脳陣が、壁いっぱいの巨大な液晶スクリーンを食い入るように見つめている。 そのスクリーンに、今は真っ青な空が映っているだけだが、間もなくそこに北朝鮮の放った核弾道ミサイルが姿を現すはずだ。 それを待ち受けるように、超望遠レンズを付けた何台ものカメラが空を睨んでいる。 上空300キロメートル付近にミサイルがくればその姿をキャッチできるのだ。

 イージス艦のミサイルが、敵弾道ミサイルの迎撃に失敗したと知った時、官邸は若干慌てたが、今は落ち着いて、絶大な信頼を置くレールガンの成功を待つばかりだ。

 その官邸にレールガンコントロールセンターから報告が入った。レーダーで、核ミサイルの飛行を打ち上げられたその時から完全に捕捉しているが、ミサイルのコースが若干ずれている、とのことだ。

「ずれている? それで正確な落下位置はどこになるんだ?」

「はい、報告では100キロほど北にずれているそうです」

「100キロメートルだと。 もっと詳しく言え」

「はい、大体・・、宇都宮方面です」

「宇都宮だと。 そこはレールガンの射程圏内なのか?」

「ええ、茶臼岳の頂上に配備しておりますので、十分射程内です」

 宇都宮市には陸上自衛隊の駐屯地があり、滝司の長男、一郎が勤務している。 もちろん、滝司は核ミサイルがそこへ向かっている状況を知らない。

「他にも日光男体山と筑波山にもレールガンを配備しております。三か所から迎撃すれば、よもや外すことはないでしょう」

他の者が、「いや、一か所でも十分ですよ」 よっぽどの自信だ。

「そうか」 加部総理は険しい顔の中にも、すこし安堵の表情を見せた。

 日本政府が最終的には県連合軍や自衛隊の、あの核保有の危険な北朝鮮へ向かうのを容認したのはこういう裏付けがあったのだ。

 レールガンというのは、フレミングの左手の法則によって鉄球を高速で飛ばそうというもので、世界中が開発に必死だ。 しかし、莫大な電力が必要であるため、なかなか成功出来ないでいる。 それが今回日本が成功し、即実戦で使用することを知ったら世界は驚愕するだろう。

 その時、「あれを!」

 巨大なスクリーンの中央に真っ赤な点が現れた。 ミサイルの先頭は空気との摩擦で真っ赤に焼け、火の玉となって地上に向かってくる。 

「核ミサイルがと、飛んで来たぞ」 恐怖心のあまり声はかすれている。

 最初は小さな火の玉が見る見る大きくなって、さらに恐怖心をあおる。

 レールガンの効果を聞いたばかりだが、さすがにミサイルを視認すると全員が恐怖心で身体も脳もかたまって、声が出せない。 じっと火の玉を凝視しているだけだ。 動悸が激しくなって鼓動が聞こえてきそうだ。

 これはキム将軍も同じで、日本のBS放送を見ながら、核ミサイル炸裂の一報を今か今かと待っている。

しかし、炸裂の一報は、キム将軍を世界中の敵にしてしまうのだ。 つかまればもちろん、一生牢獄のなかか、 へたをすれば死刑という、こちらの確率の方が圧倒的に高いと思われるが、その恐怖と戦いながらBS放送を写す巨大なスクリーンを見つめているのだった。

 何百万という東京都民が、いや、都民だけではない、地方から東京に来てる人々、また東京には多くの大使館もあり、それら外国人も核の巻き添えになるのだ。 それらの人々が何千度もの高熱で焼き殺される阿鼻叫喚の光景がキム将軍の脳裏に張り付いて、自分が下した判断に今更ながら恐れている。 

 実際には、核ミサイルの軌道はそれて北関東の栃木県に向かって落下しているのだが、そのことをここにいる連中は知らない。

 なかなか報告が入ってこない・・。

「おい、もうミサイルが落ちててもいい時間だろう?」 キム将軍が声を震わせながら聞いた。

「はい! とっくに時間は過ぎております」

「不発弾か・・?」 他の者がポツリと呟いた。

「いや、そんなことは・・」

 その時、BSニュースが、「北朝鮮から打ち上げられた各弾道ミサイルは宇都宮上空で、レールガンにより迎撃破壊されました」

 キム将軍以下全員が顔を見合わせ、誰ともなく、「レールガンだと・・。 完成してたのか」

「聞いてないぞ・・」 キム将軍は怒ったような口調で呟いた。 「なんてことだ・・、技術力の差が大き過ぎる、あまりにも大きい」 今更のことを身をもって感じたキム将軍であるが、次に考えなくてはならないことは、当然、我が身の安全である。

 ドカッとソファーに腰を下ろし、部下に命じた、「連れて来い」




               つづく















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[気になる点] タイトルが 【各弾道ミサイル    近未来SFになりまし。】になってます 正しくは 【核弾道ミサイル 近未来SFになりました。】 なのでは…? [一言] 次話の投稿も楽しみにしてます!…
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