序章 4 賑やかになってきた!
おにいちゃん視点です。
えっ?
おにいちゃんの名前ですか?
…まだ内緒です。
いえいえ、考えてない訳じゃないですよぉ(´ε`;)ゞ
…ほ、ホントですよ(; ゜ ロ゜)?
「二人とも、干支って知ってるわよねぇ?」
暗かった社の中がうっすらと明るくなってきたところで、珠実さんがそう言い出した。
「干支ってあれでしょ~、その年の動物! ねーうしとらうーたつみー…」
「午、未、申、酉、戌、亥でしたよね?」
「はい、二人とも正解~♪今から紹介するのはその子達よ~!」
え、なにそれ?
リアルで辰…龍とか見れるの?すげぇワクワクなんだけど!?
やっぱりアレかな!?胴体長くてにょろにょろしてて、やたら髭長くて、空飛んで!
でっでっ!木の枝みたいな角生えてて、手には何かよくわからん玉握ってるのかな!?
やばい…子供みたいにはしゃいでしまいそうだ!
「昔ねママ、お友達欲しくてね~あちこち歩き回ってる時に、まーちゃんに出会ったの~」
おっと、いかん…落ち着け、俺。
まーちゃんって、神主さんだよな…馬だから【まーちゃん】なのだろうか?
チラッと神主さんを見やる。
「はい、お兄ちゃん正解!」
「うおっ!?考えを読まれた!」
「ぃや、おにいちゃん…今のはぼくでも判ったよ?」
「ふふ、お考えの通り、馬故にまーちゃんです…ばーちゃんでなくてホッとしましたよ」
見た目渋さ薫る30半ばのイケオヤジなのにばーちゃんは流石にないわな…。
…実際は何年くらい生きてるんだろうな?
「それで思い付いたの!馬と言えば牛!身近なとこで犬!と、お友達増やしていくうちに、どうせだから干支で揃えちゃおうって!」
「…神主さん、【お友達】って珠実さん言ってますけど、実際は?」
「天狐様の弟子…と、言いましょうか…庇護下にある者達ですね。家臣とか家来と言った方が判りやすいかもしれません、勿論本当にお友達と言う方も居られますが。」
「ままん、お友達がみんな動物って…人間の友達はいないの?」
ぉい!?さとみ、俺が敢えて聞かずにいたのにそれを聞いちゃうのか!?
その憐れみに満ちた顔で、聞いちゃうのか!?
俺が自分の彼女の無神経な質問に驚愕していると、珠実さんの足元がぺかーっと光り、一匹の毛むくじゃら…猫だ、長毛種って言うんだっけ?が、現れた。
「人間なんかがそう簡単に天狐様の加護を受けられるわけにゃぃダゾにゃ~♪」
…ダゾにゃ~だと!?
って、違う!喋ったぞ、この猫!
「にゃんこ確保ー!!」
「うにゃあぁぁっ!?」
とか、思ってたら速攻でさとみに抱き抱えられてモフられていた。
はえぇよ…。
「うっは~!ふわっふわ~ままん!この子最高なんだけど!」
「にゃぁぁ~…流石、天狐様の娘さんダゾにゃ…このノル反応出来なかったゾにゃ」
「ふふ、気に入った見たいね、この子はノルウェージャンフォレストキャットのノルよ~お友達の一人なの!」
「ん?ままん、干支に猫っていたっけ?」
「…喋ってる事は気にならないのか…日本の干支にはいないが、海外ではそうでもないらしいぞ?」
そう、日本の干支に猫は入っていないが他の国ではいるらしい、聞いた事あるのは丑が水牛だったり寅が豹だったりする国もあるそうだ。
それに、身近な動物で猫を挙げない訳にもいかないだろう、海外の長毛種なのは置いといて。
「そうなんだ~…ねぇ、他の子は~見たい見たい~♪」
動物好きなだけあってさとみのテンションが鰻登りのようだな。
俺も何かワクワクしてきた。
「はい、じゃあ皆~順番よ、順番~!いっぺんにわーって来たら二人とも混乱しちゃうからね!」
珠実さんが何か呼び掛けてる、順番てことは干支の順番かな?
そう思っていると珠実さんの手前の床が、またぺかーっと光って何かソフトボール位の丸いのが出てきた。
「はい、最初はこの子、子のハムちゃ~ん!」
「……」
「わぁ~♪ハムスター!何か一生懸命食べてる~可愛い~♪」
うん、やっぱり最初はネズミだった。
一度こちらをチラ見したが、食べる事に夢中のようだ。
見てるだけで癒されるな、とても愛らしい。
「ハムちゃんはまだお喋り出来ないからね、見守りましょうね」
そう言って珠実さんはハムちゃんをそっと両手で掬い上げると、そのままさとみの頭にちょんと乗せた…おぉう、何だそれ…羨ましいんだが?写真撮っておこう。
「さとみ、そのままこっち向いて」
「おにいちゃん?あ、写真撮るなら、ノルちゃんも一緒~♪」
パシャっとな…うおぉ、いい絵撮れたぞコレ!
頭にハムちゃんを乗せた満面笑顔の彼女がノルをお姫様抱っこ、ノルも空気読んでバッチリカメラ目線だ…良い、最&高ってヤツだ!
早速待ち受けに設定しなくては…ふふふ、後で友人達に自慢してやろう。
勿論、さとみにもデータを転送するのも忘れない。
あぁ…いや、何だっけ?
あ、そうだ…ハムスターが喋れないのは普通の事だと思うんだが…止めよう、既に十分非常識なんだ。
気にしない、気にしない…次は丑か~と思っていると先程と同様にまた光る。今度は少し大きいな。
「次はオラだべな、丑の牛田だべ~よろすぐなぁ?」
牛…だな、うん、まんま牛。
黒毛牛が喋ってる、かなり訛ってる。
「モォ~モォ~♪でっかいね!牛乳出る~?」
「ンモォ、オラ雄だでな~乳は出んよ~」
さとみ牛乳好きだもんなぁ…というか、乳製品全般が好きなんだよな。
だからあんなにふくよかな胸に育ったのか…いや、背丈はそうでもないか。
「次は凄いわよぉ!何て言ってもママと同格の【天虎】のトラちゃん!」
珠実さんがそう言うと、周囲の大気が一ヵ所に集中し、爆発した。
RPGでモンスターにエンカウントしたときみたいなエフェクトで登場したのは、とんでもなくデカイ虎だった。
「たまみーん、おひさ~♪」
「トラちゃ~ん、元気だった~?」
デケぇ…虎の顔だけで俺の背丈位あるんだが…?
横から見て、鼻先からお尻まで軽く8~9m、尻尾まで含めれば10mは超えそうだ。
「たまみん!たまみん!でっかいよ!トラちゃんでっかいよ!肉球触らせて~!」
「たまみんさん、そんな愛称で呼ばれるくらい仲良しなんですね、たまみんさん。」
「ヘヘヘ~そうなの!たまみんさんはトラちゃんと仲良しなのよ~」
「え~、ヒロりん巡って大喧嘩したばっかりでしょう?」
えっ!?何それ、詳しく!
【ヒロりん】って、珠実さんの旦那さんの九重大さんの事だよな!?
何と二人は大さんを巡る恋のライバル同士だったのか!?
「ほわわぁぁ~…おにいちゃん!凄いよトラちゃんの肉球!人を駄目にする肉球だよぉぉ~♪」
さとみぃぃ~!気にしろよお前は!大事な事だぞ大事なっ!
寝そべったトラちゃんの前足の肉球に、背をもたれさせてほわ~っとかしてんじゃねぇ!
「そんな訳で、ヒロりんの愛人で~っす♪」
「ちょちょっちょーい!?トラちゃん!そんなのダメ!大ちゃんは私だけの大ちゃんなんだから!たまみんは認めません!」
たまみんさんはコレでもかってくらいに慌ててる、こんなトコロはいかにもさとみの母親だなぁって思う。
「あっはっは~!ね、からかい甲斐のある子でしょう?」
「慌ててるままん、可愛い~♪」
「何だ、からかってただけか…さとみ、お前もあんな感じなんだぞ?」
「…ぼ、ぼく…知らないやぃ」
トラちゃんの肉球に顔を埋めてしまった、可愛い照れ隠しだこと。
「さぁっ!次行くわよ次ぃ~!」
「あらら、たまみんったら必死になっちゃて~ホント面白いんだから…お兄様もそう思わない?」
「ハイ、たまみんさんオモロイです。ところで、俺も肉球いいですか?」
「うふふ、いいわよ~ん♪おいでませ。」
なんだかんだで、人を楽しませてくれるのは事実なのでトラちゃんに同意する。
あ~、肉球…いぃ!ぷにぷに柔らかく温かい。
「むぅぅ!肉球ならノルだって負けないんダゾにゃぁ~!とくと味わうがいいにゃ~!」
何か知らんがトラちゃんに対抗心を燃やしたノルが、俺の身体を駆け上がり左肩に止まると、両手(両前足?)で俺の頬を交互に押してくる。
これ、知ってるぞ、子猫が母猫からおっぱいもらうときのアレだ。
大人になっても甘える時に行うことがある。
凄いぞコレ、生暖かいぷにぷにが俺の頬をぐにぐに押してくるのが気持ちいい!
「どうダゾにゃ!?」
「あぁっ!?止めないでくれ、もうちょっともうちょっと!」
「駄目ダゾにゃ!コレでお終いにゃ!」
ノルのぷにぷにどすこいが止んでしまい、抗議の声を挙げるとネコパンチが飛んできた。
先程と違う勢いで肉球に叩かれる幸せを堪能…最高だ!
「ぬはは!おにいちゃん、嬉しそう♪」
「実際に嬉しいぞ、そうだ、ノル…さとみにもおみまいしてやれ」
「了解ダゾにゃぁ~!」
「きゃぁあ~ん♪」
等と、さとみと仲良くじゃれ合いながら次を待ってるんだけど、出てこないな?
「ままん、ウサちゃんまだぁ?」
「何かあったのかな?トラブルとか…?」
急用があってこっち来れないとかかな?
「うーちゃんどうしたんダゾにゃ?」
「何ぞあったんだべか…ハムは知らねぇだべか?」
「……」
ノルと牛田がハムに訪ねてるが…干支ーズ同士なら意志疎通出来るんだろうか?
「ふむ、特に変わった様な事は無かったのですね?」
「ん~、じゃあ何かしらね?真面目な子だし、たまみんのお願い断る事ないと思うけど。」
「……」
「にゃ、人化の術ダゾにゃ?天狐様が直々にゃ?」
神主さん、トラちゃんが不思議に思っていると、ノルがハムから聞き出したらしい。
「あぁ、そいえば天狐様が何ぞ一生懸命にうーちゃんに教えてたべな?」
「ほーらっ!うーちゃん、皆待ってるんだから!」
「やぁ~!嫌です~!天狐様、後生ですから元の姿でぇ!」
「ダーメ!もぅ、聞き分けのない子は~こうよ!」
ポポーン!と、珠実さんが光の球体に手を突っ込んで勢いよく引き抜くと…。
「あ、あぁぁ…い、ぃやぁ~…見ないでぇぇ!」
バニーガールが飛び出して来た。
俺達と目が合うや否や、ぷるぷる奮えてぺたんと座りこんでしまい、恥ずかしいのか両手で顔を覆って泣き出している。
「ままん?」
「卯のうーちゃんよ!」
ジトー…
全員の視線が珠実さんに集中する。しかし…
「リアルでバニーガール見たかったの!!」
平然と言ってのけやがった。
何か憐れに思って卯のうーちゃんの方を見る。
あーあ…可哀想に、珠実さんの無茶振りに振り回されるのは俺達と一緒か…。
それにしても、バニーさん…リアルに見るのは初めてだけど、色々、凄い…な。
大胆過ぎる位に開いた胸元はその大きな双丘が今にもこぼれてしまいそうだ。
そして、うーちゃんのスタイルの良さを証明するかのごとくぴっちりとフィットした黒いレオタード。深目のハイレグが素晴らしい。
色気薫る黒ストが、美脚をより美しく仕上げ、手首のカフスは色気の中の清楚さを覗かせる。
ん、よく見ると赤いリボンをワンポイントにあしらったチョーカーも着けている、何て事だ…リアルウサ耳に腰まで伸びたストレートのピンク髪も合わさり愛らしさまで兼ね備えている!
恥じらいつつ、不安そうにこちらを見る顔立ちは整っており、細い眉に長い睫毛赤い瞳は垂れ目で涙を湛えている…って、コレやばいやつだ。
「ねぇ、おにいちゃん…さっきから何見てるのねぇ、ぼくに詳しく教えてほしいな?」
抑揚のない彼女の声が聞こえるが、俺は顔を向けない。
ふっ、このくらいでヤキモチとはな…やはり俺の彼女は可愛い。
「リアルで見るバニーガールをじっくり観察しているんだが、何か?」
「むぁ!?か、彼女の目の前でそういうの…良くないと思う!!」
「何でだ?あのバニースーツ…さとみが着たら似合うかなって、思うのは良くないのか?」
「うえええええぇぇーーっ!?ぼ、ぼぼぼくにアレ着せたいの!?だだ、駄目だよ!そんな…おにいちゃんのぇっち!!」
そう言われて、少し真面目に考えてみる…うん、どうみても背丈足りないな。
まぁ、上手くかわすことができたし、良しだな。
「あらら、お兄様ったら…あしらい方を熟知してるって感じね~♪」
まぁ、周りには直ぐ判るわな、そんな事は俺も理解しているのでフォローも忘れない。
「確かに、見惚れているようにも見えても仕方ないか…済まないさとみ、誤解させたみたいだな。
それと、うーちゃんだったか?不躾な視線を済まない、許してくれないか?」
「おにいちゃん…」
「あ、は…はぃ…兄様、私は大丈夫です…」
「ありがとう、二人とも」
良かった、切り抜けた…安堵で少し頬が弛む。
「はううぅあぁ~おにいちゃ~ん」「ふわぁっ、す、素敵…です…兄様」
二人とも何かふらふら~っと倒れそうだが、大丈夫か?
「と言うか、みんな俺とさとみの事は知ってるんだな」
さっきから出てくる連中が全員俺達の事は知ってるみたいなんで聞いてみた。
「あ、はい、常々天狐様よりお話しを伺っていますので…」
「あー…、何か済まない、散々珠実さんの親馬鹿っぷりに苦労しただろう?」
「あ、アハハ…」
どうやら珠実さんが色々と話しをしていたそうだ、まぁ…あの人の事だ、家族をコレでもかって自慢したんだろう。
うーちゃんも気まずそうに苦笑いしてる、あぁ、やっぱりか…もう察したわ。
「ご息女のさとみ様のこともそうなのですが、兄様の事も沢山教えて頂きまして…その、実際にお会い出来るのをとても楽しみにして…いたんです…けど…」
最初こそ嬉しそうに話してくれていたのに、徐々に声が沈んでいき、最後には俯いてしまったうーちゃん。
「…そこに突然天狐様がバニースーツを持って現れた…と、そう言うことですね?」
「…はぃ」
「うんにゃぁぁ~…天狐様のイタズラ好きにも困ったものダゾにゃぁ~…」
神主さんが確認すると、珠実さんのイタズラが原因だと判った。
うーちゃん、奥手ぽいしいきなりこんな露出の多い服装させられたら恥ずかしくてしょうがないよなぁ…。
ノルも困ったようにため息を吐く。
改めて、俺からも謝罪と何かフォローをしておくか。
「珠実さんが済まない、でも俺としては眼福で嬉しかったっと…失言だ、許してくれ」
「ふぇ!あぅ…よ、喜んで頂けたのなら…その…」
しまった、間違えた!折角さっき上手く切り抜けたのに自分からぶり返してどうする!?
あ、ヤバイ…さとみがムスってしてる。
「うーちゃん…ちょい、ちょいこっち来る」
「えっ、わ…私ですか…さとみ様?」
あれ…?俺に突っ掛かって来るのかと思ったんだが、うーちゃん連れてったぞ?
すみません、ダラダラと…。
何時になったら異世界行くんでしょうね?
出来れば長い目で見て頂けると嬉しいです。
PC版の能面ゲーム…最高難易度のとある2ステージがクリア出来ません。
スイッチ版の方はクリア出来たんですけどね。
悔しい(≧口≦)ノ
やはり本家は甘くない、と言う事でしょうか?
動画等も拝見しているのですが、皆上手すぎて参考になりませんΣ(ノд<)
どうしたらあんな手練れに成れるのか…