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序章 1 可愛いこちゃん達をモフろう

「九重さん、好きです! 付き合って下さい!」


 告白された……

 放課後の校舎裏というまぁ、定番の場所と言えば定番の場所で。それも今時珍しいストレートな文句で。


「ごめんなさい、ぼく、彼氏いるんだ~。」


 と、言うわけでお断り。

 相手はガックリと言った体でとぼとぼと帰って行った。ふむむん、彼はぼくのどこが良かったんだろうね?


 ぼくの名前は九重(ここのえ)さとみ。……くじゅうじゃないよ? 親しみとちょっとだけ下心をこめて、さとみちゃんと呼ぶように♪

 料理と動物大好き17歳の女の子。身長140㎝しかないけど、17歳! だって伸びないんだもん!! ぐぬぬ……他はちゃんと育ってるのに背だけ育たない!


 ……脱線、脱線。落ち着くんだ、さとみちゃん。

 う~ん……まぁ、確かにそこが可愛いって言われる事はあるんだけどね。

 まぁ、いいや。さっきも言ったようにぼくには大好きな人がいるし。


 さぁ、帰ろかーえろ。友達やクラスメート、先生達に挨拶して校門に。

 ん~今日もいい天気♪

 学校を出てすぐ近くの商店街の入り口、目印の大きな猫時計の前に。


「おにいちゃん♪」


 ぼくの大好きな彼氏。

 180㎝の高身長に、ちょっとクセのある黒いハネっ毛。切れ長の瞳にシャープな顔立ち、一見怖そうに見えるけどすっごい優しいんだ~。

 今年二十歳の大学生、でも、すっごい落ち着いててとってもオトナ! 乙女ゲームだったら間違いなくメインを張れる攻略対象だよ!


「お帰り、さとみ」

「うん!」


 低いけど優しく響く声、何度も聞いてるけどまったく飽きないね! うへへ、こんな素敵な男性に出会えた奇跡に感謝だよ。ぼく達は自然と手を繋ぐ。


 おにいちゃんはぼくの幼なじみのおにいちゃん。家がお隣さんなんだよ、兄妹ってわけじゃないよ?


「おにいちゃんおにいちゃん、今日男子に告白されたぞぃ」


 今日のハイライトを早速報告してみる。


「……またか、今年入って2回目だよな?」

「うん、もちろんおにいちゃんがいるからってお断りしてるんだけどね~」


 そうなのだ、実はこう見えて去年に1回、今年で2回の計3回告白されてる。これが多いのか少ないのかとか、ぼくがモテるとか、ホントどうでもいい。

 いや、だって……おにいちゃんいるのに見ず知らずの人と付き合うわけないじゃんよ?


「はぁ~、正直迷惑……」

「さとみ、ぶっちゃけると……お前がロリ巨乳のぼくっ娘だからだろ?」

「ぶふー!?」


 なぬーッ!? おにいちゃん、何言い出すの!? そんなヴァリトンヴォイスで変なこと言わないでよ!


「しかし、3人か……俺のさとみに変な虫がと憤る気持ちと、さとみのことをわかってるなと、変に同意する気持ち……複雑だな!」


 いやいや、何でそんなに複雑そうな顔すんの?

 一人称が【ぼく】なのは単に昔からの癖というか馴染みだし。背丈は伸びてほしいのに伸びないんだもん。

 童顔なのは認める、同級生とくらべても子供ぽく見える。

 で……胸、は……その……


「さとみは着痩せするから判りづらいだろうな、胸だけじゃないと。」

「おぉ、おにいちゃん! なんてこと言うんだよ~!?」


 うー……結構気にしてるんだぞぅ!?


「ふっ、そうか……そのさとみを独占してる優越感を楽しめばいいんだな。」

「あーあー! もぅこの話しおしまーい!!」


 恥ずかしいよ!

 むぅっ! って顔すると、おにいちゃんは「わかったわかった」って微笑んでくれるんだ。

 そんなイチャらぶな会話して商店街をてくてく放課後デート。楽しいね♪


「今日もあそこに寄って行くんだろう?」

「うん、いっぱいもふもふを堪能するのだ~!」

「じゃあ、ちゃんとお土産用意してやらないとな」


 ここ最近のぼく達は、この商店街の中心にある神社に寄り道するのが日課になりつつあるんだ。お祭りとかには美味しい屋台がたっくさん並んで目移りしちゃうんだよね。まだ、その季節じゃないけど、毎年楽しみだよ。


 その神社に最近になって、猫ちゃんとかワンちゃんが住み始めたの。まぁ、有り体に野良の子達だね。


「普通なら…あれだけの数が集まれば通報モノだと思うんだが…」

「ぬはは、み~んなあの子達の可愛さにほだされてるよね?」

「毎日エサと水が新しくなってるしな」

「商店街のど真ん中ってのもあるんじゃない?」

「はは、そうだな。皆気のいい人達ばっかりだしなぁ」


 勿論商店街の皆はその子達のことを知っている。人懐っこくてかぁいぃ子達だから大人気なのだ。皆何かと世話を焼いてるんだよね。


「あっぶらげ~おっとふ~♪」

「油揚げに豆腐……味噌汁か?」

「うん、お出汁にお味噌はまだあるからだいじょぶ~」

「バイト代も入ったし、俺は餌でも買って行くか」


 ぼくは晩御飯のお味噌汁の具材とオヤツ、おにいちゃんは神社の子達のごはんをそれぞれに買う。そうして大きな鳥居を抜けて、長い階段を登るとおきつねさん。


「おきつねさ~ん、こんにちは~♪」

「お稲荷さん……じゃあ、ないよなぁ……このきつね」

「ぬはは、お母さん(ままん)が以前、「私の石像よぉ~♪」とか、訳わかんない事言ってたけどね~」

珠美(たまみ)さん、相変わらずなんだなぁ」


 ぼくの(ままん)である九重珠美(ここのえたまみ)は、はっきり言って【変な人】。いい歳して中二病みたいな言動することがあってめっちゃ恥ずかしい。

 想像してみるといいよ、自分の母親が……


「神力が足りないわ、これじゃまだまだ私の封印が解けない」


 とか、なんとか大真面目に口走る様を。もぅ、居たたまれないったらないよ?

 適当に相手してあげないとお小遣い減らすという暴挙に出るし。


「俺も付き合わされるから…あの時は泣きたくなった…」


 二人で思わず遠い目をしてしまう。

 気を取り直しておきつねさんに挨拶をしてから、頭を下げて用意した布巾で綺麗にフキフキ。……何でこんなことするのか、正直ぼくは解ってないんだけど、結構好きなんだよね。何て言うの? 風習……かなぁ?


「さて、こんなもんでいいだろう。早速モフりに行こうぜ。」

「うん! おきつねさんお邪魔しま~す♪」


 さぁ、可愛いこちゃん達とらんでぶーだ~♪

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