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しゅうまつの過ごし方

作者: 春夏冬 悪姫

きょうはしゅうまつ。

私は惰眠を貪っていた。

お昼に起き上がったがなにかすることも無く食べ物を食べる気にもなれず部屋の中でごろんとしていた。

四畳半という少ない空間だが私一人が暮らすには十分で、2年と少しここに住んでる。

天井から目線をずらすと少し前まで着ていた制服が見える。

2日前まで着ていたそれはまた着れるようにクリーニングした。

「着る機会あるかな」

そんなことを呟く。

こんなことでしゅうまつを終えていいのだろうか?

いつものくせでSNSを開く。

「みんな何も呟いてないな。」

寂しい。そんな感情が湧いてきたので私は適当な服に着替えるとカバンを肩にかけて外に出た。

アパートの外では子供たちが縄跳びをしている。

私は空を見上げた。

まだ何も見えないな。

ただ広がる青空。見事な快晴だ。

移動は乗り捨てられてる自転車を見つけたのでそれを拝借することにした。ちょっと悪いことしてるけどしゅうまつだから。大目に見て欲しい。

特に目指すところもないので適当に自転車を走らせる。

閑散とした住宅地。

窓が割られた商店街。

人々がお祈りしている協会。

なにか叫ぶ人に家族で談笑してる人達。

みんなおのおのしゅうまつを謳歌している。

ふと、特別な日ならあそこに入れるのではないかと思いつきハンドルをきる。

向かう先は私の通っていた学校。

学校の門は閉まっているが入れないことは無いので門を超えていく。自転車の時もそうだが悪いことをすると少しドキドキする。

あぁ、私はいい子ちゃんなんだなと自画自賛した。

門を越えて、警備室に行くといつも通りに若い守衛さんが座っていた。

「どうかしたのか?」

カレーの匂いを漂わせて守衛さんはそう聞く。

「ちょっと行ってみたいところがありまして。」

目的地を告げると彼は少し考えて、机から鍵を取り出した。

「しゅうまつだから。特別な。」

「はい、しゅうまつだから。特別ですね。」

2人して笑った。彼は呆れたように、私は特別という単語が嬉しくて。

校内は静かだった。

2人の足音だけが響く。

「守衛さんはいいんですか?せっかくのしゅうまつなのにこんなことしてて。」

静寂に耐えきれなくて私から話を切り出した。

「そっちこそ友達と遊ばなくていいのか?」

カツカツと階段をあがりながら私たちは言葉をかわす。

「みんな好きなことしてるみたいですよ。」

何をしてるかは知らないが。

「その結果選んだのがこれか。」

彼は呆れたように言うがお前が言うか。と言うが私の感想だ。

「まぁ、俺が言えたことではないけどな。」

そう苦笑いする。

「守衛さんは彼女とかいた事あるんですか?」

「嫌なこと聞くなよ。」

「じゃあ、童貞さんなんだ。」

私がからかうと彼は不貞腐れした顔でそうだよと呟く。なんて可愛いんだろうか。

「じゃあ、私で捨てちゃいます?」

私はスカートの裾をつまみあげる。恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じる。

「いや、やめとくわ。そういう気にならん。」

そんなストレートな拒否。もう少し乙女心に配慮してくれてもいいのでは?と思いつつそんな素直で優しい彼に惹かれたので仕方ない。

「えー。酷くないですかー?」

私はそう冗談だったように笑う。そうしないと彼に変な心配をかけるから。

「現役JK抱けるチャンス棒に振るとかだから。ドーテーさんなんですよ。」

そう言いながら私は一気に階段を駆け上がる。

そう少し言い方なかったかな。そんな後悔は胸に残った。


屋上というのは禁止されてるから。魅力的なんだな。

それが目的地に着いた感想だった。

何も無いスペース。空は茜色に染まっている。

「今日はもうここに居ようかな。」

そんなことを呟きながら空を見上げた。

「そうか。ここは風強いから。体冷やさないようにな。」

そう言って引き返そうとする彼の手を掴む。

彼は驚いたようにこちらを振り向いた。

「あの!もう少し一緒にいてくれませんか!」

私の言葉に彼は頭をかいた。後ろめたさから思わず敬語になったけど、引かない。

いつも以上にわがまま言うんだ。

だって、しゅうまつなんだから。

「俺と一緒でいいのか?」

彼の言葉に私はうなづく。

「あー。だとしたらさっきのガチだったのか?」

「ちがうし!からかっただけだし!変態!」

恥ずかしさから。思わず叫んでしまった。

本当はそうなのに。

「だよな。すまない。」

彼はそう謝った。別に悪くないのに。

「ちょっと頭さげて。」

私がそうお願いするが

「いや、なんで?」

と聞き返された。これからすることを思い返すとまた顔が熱くなるから

「いいから!あと、ついでに目をつぶって。」

とまた口調が強くなった。

かれは訳分かんねー。と呟いながらも従ってくれる。

私は彼の顔に口を近づけて…。










彼の驚いた顔。

私は笑う。

「私は初だぞ。」

それだけ告げる。

空を見上げると星空をさくようにそれは落ちてきた。

「あれが隕石。思ったより大きいね。」





今日は終末。

世界の終わり。


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