掲示板
居酒屋で二人の男とが向き合って酒を飲んでいる。
「そういや、チャットの最初の頃はパソコン通信というのがあったねぇ」
「あぁ、有料のサービスのやつね」
話しかけた男の向かいでつまみを食べつつ相づちを打つ男。
「あれね、チャットというより掲示板だけど、凄くやりやすかったんだよね」
「何が?」
「一応管理している人がいるし、有料だから身元不明じゃなかったからね。荒れないんだよ。」
「あぁ~なるほど。確かに実名じゃないけど運営言えば身元が割れるわけか」
「そうそう、だから書きやすい。付属サービスでチャットなんかもあったけどね」
「へー、その頃からあったのか」
二人とも酒が回って、かなり酔ってきている。
「俺も掲示板に趣味の事書いたり、たまにチャットなんかしてたもんだよ」
「それが今じゃ立派な会社員だもんなぁ。時間の流れが早くなっているよなあ」
テーブルの上のつまみが減らなくなり、酒の減るペースが上がってきている。
「……そういや、面白い話を思い出した。その掲示板なんだけど『私は未来から来ました』って内容のものが書かれていたな」
「あー、今でもたまに掲示板であるみたいだぞ」
「あーうん、だけど当時はメンバーが『内容がふざけすぎだ!』と怒ってね。運営に辞めさせるように連絡したらしいんだ」
「それで止まったのかい?」
「いや、確か止まらなかったんだよね。さらに運営も何も返答なかったらしくて怒って会員やめちゃった人もいたくらいだ」
「……なんだかなぁ、としか言いようのない話だな。で、それで何が面白いんだ?」
「その書かれた内容なんだけど悪口に近いものだったんだよな。なんかハンドル名?を指定して『あなたは将来営業をやっています』とか『地方公務員ですね』とかね。指名された人なんかはまだ10代なんかもいたらしくて、将来の夢を否定されたとかなんとか」
「うんうん、将来の夢を持つのは若者の特権だね」
「……で、俺なんだけど指名された中に入っていて、貴方は将来世界を滅ぼす可能性が高いから注意って書かれた」
「おぉ!いきなりスケールがデカくなったな。それで会社員様がどうやって滅ぼすんだ?」
面白そうに酒を飲みながら質問する。
「それが書かれてなかったんだよね。……まぁ色々考えるならバグかなぁ」
「なんだそりゃ?」
「例えばだけどよくある話なんだが、この世はコンピューターの中のシミュレーションでその中でバグになる行動を取るとかなんとか……」
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画面を見ていた宇宙人がストップボタンを押した。
「やれやれ、何回シュミレートしてもこの選択肢にはいるなぁ。この男のこの話が始まるとなんで世界が崩壊するかね」
宇宙人の背後から突然上司が現れて言った。
「そりゃそのパターンは、お前がサボってそのシミュレーションに干渉した証拠だからな。証拠隠滅で変更されないように、そこまでしか進まないようにロックしたんだ。実験世界に干渉してその男を作ったのお前だろう。減給待ったなしだからな。」