スライディング土下座
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光が放たれたコンパクトから、ある人物の立体映像が浮かび上がった。
「ん?あれ?これは、魔道具通信している?おーい、キアラ嬢??」
そう言いながら、その人物が手を振る。
「オーホッホッホッホ!ごきげんよう、ロレンツィオ様。突然繋いでしまって、ごめんなさい。こちらは、私の通う学院です。公の場になってしまうのですけれど、あなたとぜひ、お話したいと言う人物がこちらにいらしているので、話していただけますか?」
「そうなの?あっ、フォルスも居る、ヤッホー。あっ、オホン。皆さん、こんにちは、私はルマイス国、第3王子ロレンツィオだ。話したいのは誰なのかな~?」
皆がアリスを見る。
アリスは固まっていたが、リチャード王子に肩を叩かれ正気を取り戻し、すぐさま発言したのだが…。
「こ、この人ではないわ!」
予想外な言葉がアリスから発せられた。
「え?違うの?魔王討伐で、今いる攻略者の新密度が足りないと魔王に勝てず、隣国へ応援要請する際に登場する新たな攻略者だよ?推し違った?違うの!?」
そうキアラが戸惑いながら言う。
ロレンツィオ王子はキョトンとしている。
ロレンツィオ王子はキアラと目が合い、2人はお互いに気まずそうな顔になる。
キアラは申し訳なさそうに顔を背け、目を瞑った。
そして、キアラは顔を上げ目をカッと見開き、ロレンツィオ王子と向き合い言い放った。
「王子、すみませんでしたー!!」
と謝罪しながら、勢いよく風魔法を発動し体をスライディングする。
近づくにつれて正座をし、体を傾け両手を振り下ろした。
綺麗に土下座をしながら指先がコンパクトに届くとソッと蓋は閉じられたのである。
うん……あとで、きちんと謝ろうっと。
さあ切り替え、切り替え。
どうやら選択を間違えたようだ。
さて、どうしようか。
推し目的じゃないのか?
「ねえ~あなた、隣国の王子が狙いじゃないの?」
思わず、アリスに普通に聞いてしまっていた。
「違うわ。私の推しはアレじゃない。ゲームの中での隠しキャラで、名前を呼ぶにも恐れ多い。魔法が大好きで、魔法騎士を魔法の研究をしたいが為に辞め、どこかの森の奥へ隠れ住み、日々、研究に取り組んでいる御方。魔王の戦いに参加させれば大活躍、超絶美形で癖のある性格、なかなか攻略できないから激しく燃える、コアなファンに大人気の~あの御方よ。ああ、尊い!」
「あ、あっちか!」
そう言うとキアラは、胸元からチョークを取り出す。
すると、床に魔法陣を書き始めた。
「繋がれ。」
そう言ってキアラが消えた後、再び戻ってくる。
そして、キアラの横にはとても美しい男性の姿があった。
「ク、ク、ク、ク、クリ――――」
マリアが目をひん剥き、名前を呼ぼうとしていた時に。
「魔法騎士団長様!!!!!」
と、歓喜の声を上げた人物がいた。
現魔法騎士団長子息だ。
彼は、本物だ…動いている…と呟きながら、目をキラキラ輝かせ美しい男を拝んでいる。
ああ、彼にとっても憧れの人物なのか。
そのキラキラを無視し、皆に美しい男を紹介する。
「えーっと、皆さん、彼は前魔法騎士団長クリストファー様です。」
そう紹介したと同時に。
「キャ――――、クリス様―――――!!!!!!!!」
その奇声と共に、壇上に居たアリスが、もの凄い速さでクリスの許へ辿り着きピタッと横へくっついた。
「ちょ、ちょ、ちょっと、アリス?」
リチャード王子が片手をアリスの方へ伸ばし呼び止めた姿勢で、固まっている。
呼ばれているアリスは、目がハートのまま反応無しである。
「そりゃないよ。これじゃあ、私は今宵、誰を抱けばよいのか。」
リチャード王子が情けない声で嘆く。
王子……その発言、ドン引きです。
その問いに答えたのは、なんと我が婚約者ことフォルス様であった。
「お主も愛しの婚約者を得て、直ぐに結婚してしまえばよいのだ。俺とキアラのような仲睦まじい婚約者を。さあ、パーティーはもういいだろう。キアラ、帰ろう。」
そう魔王様が言い、私を横に抱き踵を返す。
「おお、それは良い案だ。よし私は結婚するぞ。まずは愛しの婚約者探しだー。」
リチャード王子が軽く口走る。
それを聞いた私は、兄様にアイコンタクトを送る。
リチャード王子の操縦を頼みます!と。
兄様は了解したと返したのであろう……謎なジェスチャーをしてきた。
「あの、フォルス様、少しよろしいでしょうか?クリス様とアリス嬢に言い忘れたことがありまして、話してきたいのですが。」
「ああ、分かった。」
そう言って、フォルス様は私を放す。
私は2人の許へ戻る。
まずはアリスに、
「アリス様、この世界は、ゲームの世界と被るけれどゲームそのものではないわ。私が証拠、私は悪役をしない選択が出来た。皆、それぞれに意志や感情があり、日々変化しているわ。自由に行動できるの。だから、ゲームのシナリオに沿ってもゲームの通りにはならない。つまり、己の欲望は己の力で勝ち取るのみってことよ!ちなみに私、悪役令嬢は魔王推し よ。オーホッホッホッホ!」
ハート目だったアリスは正気に戻る。
アリスを横目に私は話を続ける。
「クリス様は、私が魔王フォルス様を必死で探している際に、偶然、聖域の森の奥で見つけたの。今じゃこの人、レギュームで魔族と共に魔道具の研究に励んでるわよ。常に情況は変化している。あなたも頑張って。」
そう言って私が励ますと、アリスは気合の入った顔をして力強く頷いた。
隣にいたクリストファーを見ると、自分の腕にしがみ付くアリスの腕を迷惑顔で眺めている。
彼に歩み寄り、アリスに聞かれないように小さな声で話をする。
「クリス様、無理を言ってついて来ていただき、ありがとうございました。さらに、お願いがありまして、この娘の面倒を見て貰えませんか?彼女、実は光魔法の使い手なのです。あの、世にも珍しいと言われる光魔法ですよ~。」
「光魔法だと!?」
クリストファーはアリスを見て、生唾を飲み込んだ。
「わ、分かった引き受けよう。」
ニヤリと笑うクリストファー。
「ありがとうございます。オーホッホッホッホ!」
負けじと悪い笑いをする私。
要件は済んだとその場を離れ、私はフォルス様とパーティー会場を後にした。
一件落着、はい おしまい。
とは、ならないのです。




