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戦いが始まる

お読みくださりましてありがとうございます。

いきなりですが、3年後から始まります。


魔王様との出会いから、さらに3年が経つ。

無事に陛下にも 私とフォルス様の婚約は認められ、私は学院で最高学年になっていた。


そして今日は、学院の卒業生が参加する卒業ダンスパーティーの日なのである。


そう、戦いが始まるのだ…。



我が国のみならず多方面での根回しは、お父様の増大な力により解決済みだけれども、何が起こるか分からない。


 気を引き締めなければならないわ。


 だって卒業パーティーは、このゲームのヒロインことアリスが、7人の騎士達と親密度を一気に高めることのできる 最大のイベントなのだから…。

私と言う悪役令嬢を断罪するという演目でね!



この3年間、ヒロインの動向は探っていたわ。

アレックスによる報告の内容から、おそらくアリスは私と同じ転生者である可能性が高い。

学院に行かない私に代わり、ゲームのイベントが起こる場所やタイミングを指定し確認をしてもらったのだが、案の定、アリスは現場に必ず現れ騒いでいたと報告を受けている。


その他にも、ゲームの記憶があるならば、知り得ているであろう秘密の場所や隠し通路にも、堂々と幾度も現れているのだ。

私も自分の目で確めに行ったので間違いない。


彼女は転生者である可能性が高く、ゲームのシナリオを重視している。

おそらく今日のこのパーティーで、何かを仕掛けてくるはずだ。




「それではフォルス様、参りましょうか。」

そう私がフォルス様に声を掛けると、じっとこちらを見つめてくる。


「キアラ、震えているのか?大丈夫、何かあったら私が守るから。」

そう言って、小刻みに震える私をフォルス様は励ました。


フォルス様、ごめんなさい……これ、武者震いです。



「大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」

あぁぁああ!!私の推し、マジで完璧!


「このような か弱きあなたを多くの男達の目に映さなければならぬとは…本当に心苦しい。君は今日も とても綺麗だ。さあ、もっとあなたの美しい姿を、俺だけによく見せてくれないか。」

フォルスがキアラの肩に手を置き引き寄せ呟く。

「まあ、フォルス様ったら、私、嬉しくてどうにかなりそうですわ。オーホッホッホッ!」

姿勢を戻したフォルスを見つめ、頬を染めながらキアラは答える。


御覧の通り、今じゃ私達はラブラブよ。

3年前からレギュームにひたすら通い、地道に努力したからね!



扉が開けられ会場へ足を踏み入れた瞬間、私達に視線が集中し、ざわめきが起きた。

それもそうだろう、試験日以外は滅多に学院へ顔を出さない公爵令嬢が、新魔王を引き連れて現れたのだから。

その視線の突き刺さる中、ホール中央へ足を進める。


「噂は本当だったようだな、公爵令嬢!」

そう壇上から、とげとげしい口調の大きな声が聞こえてきた。


私達はその声に反応し足を止め、声のした方を見上げる。

すると、そこには、私達を睨みつける者達が並んで居た。


この国の第一王子リチャードと、その隣にいるヒロインちゃんことアリスだ。


そして、その一歩下がって後ろに並ぶ7人の騎士のメンバーん?んん?

1234567……あれ?王子入れて7人いる。

ちゃんといるってことは……。


「ちょっとお兄様、そこで何をしてらっしゃるのですか?」

ギクッと肩を上げたあと、もう見つかったと気まずい表情をする兄のルーカス。


「仕方ないじゃないか、王子命令なのだよ。」

困った顔で言っているけれど、あれは絶対、心の中では面白がっているわね。


「それから、私の幼馴染のルイと従者のアレックスも。そこで何をしているの?」

兄の後ろで小さくなって隠れていた2人にも声を掛ける。


いくら ふんわり可愛いとヤンチャ系の小さいコンビが、体格のよい兄の後ろでやり過ごそうとしていたとしても、私は絶対に逃さないぞ。

知っているからな、お前らが無邪気な天使を装った猛獣コンビだって事を!


その発言に対して、声が発せられた。

「ほら、言ったじゃないですか!この2人はあの悪役令嬢キアラに常日頃からイタぶられ罵られ奴隷のように扱われているのだと。」

そうアリスが高らかに言い放つ。


「ど、奴隷??誰が?」

ルイがアレックスと顔を見合わせ呟く。


「少しよろしいかアリス嬢。私は、王子の命でここに来ているが、実の妹を陥れるために来ているわけではない。妹はそんなことをするような娘ではないと断言しよう。」

片手を上げて、そう深く頷きながら兄が庇ってくれた。


あれは、私に良くない濡れ衣がかかり、公爵家に迷惑がかかるのを防ぐ為の先手だわ。


「そうだよ。僕も幼少期から知っているけど、キアラは大層変わった奴だけど人の嫌がることは絶対にしないよ。」

そう、幼少期からの付き合いの幼馴染で、降下をしているが王弟、公爵である御方の子息であるルイが、少しバカにしている風だけれど庇ってくれた。


「そうですよ。キアラに俺を痛めつけるような、度胸と体力はありませんよ。」

完全にバカにしているけど、従者のアレックスも庇ってくれた。


ちょっとひっかかるけど、皆ありがとう。

心から感謝だわ。



ああそうね、説明しましょう。

なぜアリスが私が彼らを虐めていると断言したのかと言うと、乙女ゲームでの本来の設定がそうなっているからであろう。


第一王子リチャードは、本来のゲームのシナリオであるならば、私の婚約者のはずである。

幼少期のお茶会で私が彼を見初め、この国でも王家を上回る力を持つ我が公爵家の権力を使い、強引に婚約者になるのだ。

しかし、私の性格に嫌気がさし、そこに現れる癒しのヒロインに惹かれるのだ。


兄のルーカスは、我儘で高飛車で実家の権力を使い周囲の者達を虫けらのように扱う傲慢な妹に、憎悪を抱いているはずなのだ。


それから、父同士が親友で私の幼馴染である王弟の息子ルイは、私に長年、奴隷の如き扱いを受け精神を病み、私に逆らえず現在も日々苦しんでいるはずである。


同じく、私の従者アレックスも、私の父により私の従者と指名されたその日から苦しい想いの日々を送っているはずだった。


さらにいうと、そこに居る宰相子息は、学院で私の成績に勝つことが出来ず、私に馬鹿にされ続ける日々を送り、劣等感と憎悪を抱き、ヒロインに心を救われるはずなのだ。


その隣の魔法騎士団長の息子も同様、私に魔法の力で一切勝てず、うんたらかんたらで宰相息子と同様。


その隣の騎士団長に至っては、野蛮だのむさ苦しいだのと、私と取り巻き達と共に日々罵られ人格を貶められ……以下同様。


と言うようなシナリオ設定であるはずなのだ。



だがしかし、現実は…。

私の婚約者は愛しの魔王様。

兄、幼馴染、従者は程好い関係。

その他は、私と関わり合いの無い、よく知らない人達といった状態である。



その時、フォルス様が口を開いた。

「キアラ、この者達はいったい何者だ?」





魔王は攻略済み。


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