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魔王城参上

お読みくださりましてありがとうございます。


 捕まった…………。


ちょっと中の様子を確認しようと城壁に登ったら、待ち構えていた奴等に凄い勢いで確保されたよ。

なぜ、正面から行かなかったのかって?


それは……推しを一目だけでも先に確認しておきたかったんだよ。

見たかった。

トキメキが止まらなかった。

どうしても待ちきれなかったんだよ。

あわよくば、部屋も…ってね。


 ああそうですよ、私の我儘ですよ。

 だからそんな目で見ないでよ、アレックス。


 それにほら、ゲーム内で魔族側に居る金髪の強敵とかヤバいのもワンサカいるから、なんかあった時の為にね、退路とかも調べておかないといけないかな~なんて考えもね、あったりしたのよね…………すみませんでした。


 今は2人とも謁見の間みたいなところで、後ろ手に縄で縛られ両膝をつかされている状態だ。

 数人のゴツイ魔族が私達を取り囲むようにいて、睨んでいる。

 この部屋にはあと数人の魔族が居て、遠目から傍観している。



「こやつらは?」

 高い位置から渋い声が発せられた。

 厳つい椅子に座っている、魔王らしき大層な口ひげで大きな角を生やした貫禄のある御方が、隣に立っている者に聞く。


「アスペルジュの公爵令嬢とその従者だと証言しております。従者の方は剣の腕が立つようです。どうしますか?殺しますか?」

 魔王らしき御方の隣にいる、金髪ストレートロングの若い男が、物騒なことを口にした。


 えっ!?いきなり殺すのは止めてよ、金髪。

 私は、ちょっと待ってくれと体を前へ傾け、首だけを横に激しくブルブル振り、嫌だと魔王らしき御方にアピールする。


 その様子を見て溜息を小さく吐く、魔王らしき御方。

 そして話を続ける。

「アスペルジュか……厄介だな。身元の確認はきちんと取れているのか?」

「はい、間違いないようです。」

「そうか、縄を解いてやれ。それにしても、何故お主らは、この地に来たのだ?」

 魔王らしき御方が私達を見て、すこぶる困った顔をして尋ねてくる。


 私達に聞いているのよね?発言してもいいのよね?

 よしっ、言わなきゃ。

その為に来たんだから。

やってやろうじゃない!


オーホッホッホッホ!


 私は立ち上がり、この地に来た理由を力強く訴えたのです。


「ご存知の通り、我が国アスペルジュは魔族に敵対心を抱いております。私はその誤解が心苦しいのです。私の得た情報では、近い将来、この地にアスペルジュの討伐隊が編成され、魔王を倒しにやってきます。私はそれを阻止したい。その為に――――」


 周りを見回し、存在を確認すると指をさし叫んだ。

「私は彼と婚姻を結びたいのです。」


 実に静かだった。

 広間にいる全員が口をポカンと開け惚けているような気さえしてくる。

 アレックスもそのひとりだったりする。


「ちょっ、ちょっとキアラ、本気で言ってるの?そのこと公爵様に知らせてある?」

「ええ、お父様は私がこの地に入るにあたって、おど、説得したから承知しているわ。婚約への理解も得ているわ。」

「そう。」

 と呟き、落胆の表情をさせアレックスは押し黙った。


「お主、なぜ、そやつを指名した。そやつは儂の息子だ。次期魔王ぞ。知っておったのか?」

 魔王らしき御方が少し強めの口調で問う。


「え、息子なの?」

 驚きの声を上げるキアラ。


 そりゃそうか、魔王を継ぐんだもんね。

 息子の可能性は大いにあったわ。

 魔族だから、一番強い奴が魔王になるのかと勝手に考えていたよ。


 物思いにふけっていると、アレックスに肩を叩かれる。

 アレックスを見ると、早く答えろって無音で口を動かして言っている。

 周りを見渡すと、皆の視線が自分に集中していた。

 キャッ、次期魔王様も!


「え、その、か、カッコいいから!」

 私は咄嗟に本音を答えてしまった。


 またもや皆、呆気に取られていた。

 だが、その空間に大きな笑い声が響く。


「ガハハハハハッ、カッコいいからとは、こりゃ傑作だ。よかろう、その交渉乗ろうではないか。」

「魔王様!」

 金髪が咎める。


「まあ、まずは話を聞こうか。婚約はこちらに不利であれば直ぐに破棄すればよい。よいか息子よ。」

「はい、お受けいたします。」

 真っ赤な髪に二本の大きな角を生やした、美形の青年が一歩前に出て魔王に返事をする。


 そう私の推しは、このゲームの最大の敵である御方、今は次期魔王ことフォルス様である。

 

私は、歓喜のあまり口許に手を添えお決まりのポーズで、涙ながらにサイレントで発していた。


オーホッホッホッホ!と。



 アレックスに怪しい動作を宥められ、私は冷静を取り戻す。

そして、話を切り出した。


「お受けしてくださりありがとうございます。より詳しい話し合いは後程ということで。早速、父へ報告しに行きたいのですが、魔法陣を書き残してもよい場所はありますでしょうか?」


 フォルスに案内されて連れて来られた場所は、城の最北にある棟のてっぺんの部屋であった。

「ここならば、誰も近づかない。魔法陣を書いてどうするのだ?」

「こうするのです。」


 魔法陣を部屋の床に書き、皆を魔方陣内へ入れる。

 “繋がれ”と発すると、魔法陣が白く輝いた。

 一瞬で光は止み目を開けると、そこは庭の片隅で丸く石張りで舗装された場所の上であったのだ。

 

 キョロキョロと周囲を見渡し、フォルスが尋ねる。

「ここは?」

「王都の我が家です。」

 そう、ここは公爵邸である。

 特殊な魔道具と訓練した転移魔法を使い、公爵邸の魔方陣の記されてあるこの場所にあっさりと移動したのだ。

 この魔法を使いこなし、魔王城のあるだろう広大な森を探索しまくったのだ。

 魔法陣を書くチョークは、検索の最中に知り合ったある人物が作ってくれた魔道具だ。

 消えて欲しいと願えば消え、残したいと願えば消えない優れモノで、大変便利である。


「さあフォルス様こちらへ、我が家へ案内いたします。」

 そうフォルスに声を掛ける。


 目の前には、大きな4階建てのレンガの建物があり、その中央に位置する石の階段を数段上る。

 上がった先の、大きな木製のドアを開け、中に入っていくのであった。


「お帰りなさいませ、キアラ様、アレックス様。」

「ただいま帰ったわ、ウィルバー。こちら、お客様のフォルス様よ。それと、お父様はどちらに?」

「旦那様は、書斎でございます。ルーカス様は居間にいらっしゃいます。」


「そう。フォルス様、お父様と会っていただいてもよろしいですか?」

「ああ、いいよ。」

「ありがとうございます。ウィルバー、お父様に例のお客様がいらしているから、応接室に来るように伝えて頂戴。兄様には……面倒だから伝えなくていいわ。」


「例のお客様!? か、かしこまりました。」

 家令のウィルバーは、言い終えないうちに焦った様子で足早に去っていった。


さあ、魔王様との打ち合わせに、陛下の説得と、やることが沢山あるわ。

お父様に活躍して貰わなきゃね!


さぁ忙しくなるわよ~。

悪役令嬢の如く、ニヤリと妖艶に微笑み、応接室へと向かうキアラであった。



次回、いきなり3年後に飛びます!



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