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夜が明けて

 竜は図書塔のバルコニーにふわりと着地すると、身体を伏せて私たちを降ろした。

 温もりがあったからか思ったほど身体はこわばっておらず、転がり落ちることなく降りられたのでほっとした。

「ありがとうございました」

 改めて礼を言うと、竜は目を細めた。笑ったのかもしれない。

「金糸雀と小夜鳴鳥の意思を継ぐ者よ。健やかに生きなさい」

 それだけ言い残すと、大きく羽ばたいて夜明けの空へと帰っていった。


 空気は静止し、時が止まっているかのような錯覚を覚える。ただ目の前に広がる景色だけが、切ないほどに刻一刻と色を変えていく。

 夜の帳と朝の光が、溶け合うように調和する空。

 新しい一日が、始まろうとしている。


 図書塔の扉を開けた私たちは、その光景に目を見張った。

 神官、技官、メイドたち。清掃をする者に、植木の手入れをする者。城中の者たちが、いつもは人気のない石造りの渡り廊下に集まっていた。とても渡り廊下に納まりきらなくて、城内の廊下にまで人があふれているのが見える。

 これだけたくさんの人が集まっているのに、皆口を閉ざしてこちらを見つめている。

 先頭に立っているのは、国王と、その妹君。


 国を統べる者の厳しい顔つきが、今は柔和な笑顔で満ちている。

「シトリニアとアメジスト。当代の歌鳥の姉妹であり、我が自慢の娘たち。二人とも、よくやってくれた」

 わあっと歓声が立ち上り、割れるような拍手が響いた。

 皆が満面の笑顔だ。賞賛と祝福の声に、たくさんの幸せな笑い声が重なる。色とりどりの紙吹雪や風船が空を舞い、朝日にきらきらと輝く。

 幸せと喜びが空気を満たし、すべてが鮮やかに見える。

 緊張の糸が一気に切れて、私は父の胸に飛び込んだ。

 大きな手で背中を抱き寄せると、空いた片手を、遠慮がちに立っているもう一人の娘に向かって差し出した。

「アメジストも、来ておくれ」

 晴れやかな笑顔を浮かべて、彼女はその広い胸に飛び込んだ。

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