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チーム、キルシュヴァッサー(3)


「うぇええええん……! ぐす……っ!」


子供の頃の記憶は、姉貴の笑顔か海斗の泣き顔で埋め尽くされている。

何かあると直ぐに泣き出し、膝を抱えてへたり込む駄目な幼馴染に子供の俺は苛立っていたと思う。 なんで俺がこんなやつの面倒を見なきゃいけないんだと、疑問に思ったことも数知れない。

それはきっと、姉貴の言いつけを守ったからなのだと思う。 姉貴は言っていた。 香澄の力は、誰かを傷つける為に使うのではなく、弱い物を守る為に使いなさいって。

母親の顔なんて知らなかった俺にとって、姉貴の言葉は大きな意味を持っていた。 今思うと、ガキのクセによくあんな事がいえたものだと驚くばかりだ。

そう、姉貴はちょっと普通のガキとは違っていた。 その辺を走り回るドロだらけのアホ面の子供とは違う。 どこか世界と自分との間に線引きを施し、ゆったりとした佇まいでこの世界を眺めていた。

優しくあるように、強くあるように。 勿論理想を全て押し付けるわけではない。 無理な事や不可能な事があるという現実もわかっている。 その上で彼女は、出来る事をやりなさいと俺に言った。

子供心に強く憧れたのはきっと間違いなんかじゃなかった。 今でも胸を張ってそう言える。 たかだか三つ年上なだけの彼女は、いつも大人に見えた。

だから俺はいつもいつも早く大人になりたくて。 早く彼女の足を引っ張らず支えてあげたくて。 いつでも背伸びをしていたのかも知れない。


「ほら……いつまでも泣いてんなよ。 ちょっと転んだくらいでいちいち泣くなって、バカ」


「うううぅぅ……。 だってえ〜……」


「だってじゃない。 おい海斗、見てろよ」


瓦礫の山に落ちていたコンクリートの塊を持ち上げ、にやりと笑う。 何が起きるのか気になるのか、海斗は涙を止めてじっと俺を見ていた。

直後俺は自分の頭の上にそれを落とした。 目を真ん丸くして叫びだす海斗と砕け散ったコンクリート。 今思うとバカな事をしたもんだと思うが、効果は確かにあった。


「だだだ、大丈夫香澄ちゃん!?」


「い、いたくねえ……っ」


「でも……でも〜っ!」


「痛くねーって言ってるだろ! 痛くても辛くてもガマン出来るんだ。 歯を食いしばって、ぐっと堪えれば、明日は明るいんだぜ」


「…………う、うん! ボクね、泣くの止める!」


転んですりむいてしまった膝から目をそむけ、海斗もよろめきながら立ち上がる。 無邪気に笑って両手を叩いてみせるその姿を見て、何故かほっとしている自分がいた。

瓦礫の上、差し伸べた小さな手を取る小さな手。 海斗は笑って俺の隣に立つと、涙を拭ってにっこりと微笑んだ。


「香澄ちゃん、いつもありがとう」


「仕方なくだよ、仕方なく! じゃないと姉ちゃんがうるさいんだ。 でなきゃ誰がお前なんかと……」


「うう……ごめんねぇ」


「だあああっ! 判ったから泣くな! 泣いたら泣かすぞっ!!」


「うん……。 なんだかそれ変な気がするけど、わかった……。 って、香澄ちゃん!? 血! 頭から血が出てるよっ!?」


「あ……? ああああああっ!?」


「わああああっ!? 香澄ちゃんが死んじゃうよおお!! 誰かー! 誰かあああ〜〜っ!!」


「このくらいで死ぬわけねーだろがっ!!」


夕日の中、見渡す限り誰も居ない俺たちだけの時間の中過ごした日々。

きっかけは確かに姉貴に言われたからだった。 でも……それは全て誰かの所為だったのだろうか。

判っている。 そんなわけがないのだと。 全ての過去の価値を、他人に押し付ける事など……出来はしないのだと。

だからこそ、俺は――。



⇒チーム、キルシュヴァッサー(3)



東京フロンティア第三共同学園。

その最上階に存在する生徒会は、学園内に強い影響力を持ち、その権限は教員にも匹敵する。

そしてその生徒会は通常業務の影でロボットによる未確認生命体の駆逐作戦を行う特殊チームとしての顔も持つ。

チーム名は『キルシュヴァッサー』。 巨大な人型ロボット『キルシュヴァッサー』を運用する少年少女たちによる、正義の秘密組織なのだ。


「何て事が、まさか現実にあるとは……」


思わず頭を抱える俺。 それも仕方のない事だろう。 この異常な空間の中で俺がこうしなければ誰がこうするというのか。

流れる水路の涼やかな音に耳を傾けながら顔を上げると、そこにはニコニコと笑っている海斗の姿がある。 そして俺は窓の向こうに視線を向け、すっかり暗くなってしまった世界に溜息を零した。

あのわけのわからない事件直後、放心する俺を海斗はここに連れ戻した。 今は窓際にあるテーブルに付き、お互いに顔を見合わせている。

テーブルの上に頬杖を付き、にこにこしている海斗。 間違いなく俺の言葉を待っているのだ。 俺が『あのロボットはなんなんだ』って言うのを待ってやがるに違いないんだ!!

くっそおおおお!! 何かハメられた気しかしねえええっ!! にやにやしやがってこの男なのか女なのかわかねえいじめられっ子がよォ……! 図に乗るんじゃねえぞ!


「……進藤君」


「なにかな、香澄ちゃん」


「…………お、お腹が空きましたね」


「そうだね、香澄ちゃん」


何この空気。

くそう、絶対に負けを認めたくない。 ロボットについて訊いた瞬間俺の敗北は決定する。 この非日常的な世界に足を踏み入れてしまう事を意味する。

何より海斗にやられたというのが何とも気に入らない。 いつの間にロボットのパイロットになったんだよこいつ。 聞いてねえぞ。

あーくそ、イライラするな。 早く帰りたいような、でもロボットが気になるような……。 いや、あれだけ目の前で暴れられて気にならないやつがいたらどうかしてるってマジで。


「…………もう、香澄ちゃんは意地っ張りだなぁ。 素直に訊いてくれればいいのに」


「な、なんの事かな進藤君。 僕は別に……」


苦笑を浮かべ席を立つ海斗。 部屋の奥の自動販売機で紙コップのドリンクを二つ手に取り戻ってくる。


「これ、香澄ちゃんの生徒会手帳だから」


アイスコーヒーと一緒に渡されたのは生徒会手帳だった。 この間冬風が突き出していたもので、海斗も胸ポケットにしまっていたのをちらりと見せてくれた。

それを手に取り開く。 俺の生徒会役員としての役職は副会長だった。 副会長……いなかったのかよ。 それよりも既に顔写真や経歴まで全て網羅されているのはどういう事なんだ。


「用意周到だね……。 最初から僕がここに来ると読んでいたとでも?」


思わず冷や汗が流れる。 海斗は何も言わなかったが笑顔がそれを肯定しているように見えた。

飲んでいるのはどうにもオレンジジュースらしい。 ごくごくとそれを飲み干し、氷を齧りながら首を傾げる。


「香澄ちゃんのことならなんでもわかってるよ。 香澄ちゃんだってそうでしょ? 根本的な部分って変えようがないもんね」


「…………何の話ですかね」


「でも、しっかり覚えてたんだね。 あの公園の事も、僕の事も。 それに君はやっぱり子供を見捨てなかった。 変わらないよ、君は」


「ああ……。 ちょっと整理してみても構わないかな」


「うん?」


先ほどからずっと引っかかっている事がある。 ロボットが気になるとか以前に、俺はコイツに訊ねなければならないのだ。


「あそこで戦いになるって事を判っていて僕を呼んだのかい?」


「うん。 出現地点はある程度予測できていたからね。 君なら殺されちゃうって事もないと思ったし……。 案の定、ひょいひょい避けてたからビックリしちゃった」


「なるほど。 で、あそこに子供が居る事は推測していたのか?」


図らずも声のトーンが低くなる。 もし仮にあの場に子供が居る事を知っていて俺を試したのであれば、それは駄目だ。 やっていい事と悪い事がある。

海斗ならばそんなことはしない……そう信じつつも訊ねずには居られなかった。 俺はどんな答えを期待しているのだろう。 YESかNOか。 それとも……。


「あれはこっちの計算ミスだったよ。 君は知らないかもしれないけど、あそこは今は殆ど人が寄り付かないからね。 子供たちが来ていたのは、本当に偶然の偶然だったんだと思う。 それでも配慮が足りなかったとは思うけど……」


いや、俺はあそこが無人である事を知っている。 初日にあの近辺を歩いたが、人気は殆どなかった。 そうした意味でも海斗はあの場所を選んだのだろう。

だが俺も海斗もまさか毎日あそこに行っているわけではない。 どうせなら念入りに調べてから実行すべき事だとは思うが、全て把握しきれなかった事を責める事は出来ないだろう。

結果的に俺は子供たちを助ける事が出来たし、その俺は海斗が救ってくれた。 万事上手くいったのなら文句はない。 納得しなければならないだろう。

それよりも今はあのわけのわからない化け物を海斗が駆除してくれた事がありがたかった。 あんなのがうろついていると考えたら不安でおちおち眠れない。


「正直君が早くついていなかったら危なかったかもしれない。 感謝してるよ、香澄ちゃん」


「やるなら完璧にやってもらいたいですね。 まあ……終わり良ければ全て良し、ということにしておこう」


「よかったあ……。 でもホント、香澄ちゃんはやっぱりすごいね。 あの状況で他人の事を考えられるのってなかなか出来ない事だよ」


まあ、昔からずーっと弱いやつ守ってきたからな……。 足引っ張られるのは慣れてるんだよ、海斗……。


「はあ……まあ、いいでしょう。 それで、あのロボットは一体?」


「あは。 やっと話が出来るね」


余計なお世話だ。


「あれはキルシュヴァッサー。 『結晶機』っていうロボットのうちの一つで、『ミスリル』を撃退する為の兵器なんだ」


いきなりわけわからん。


「結晶機……というのがあのロボットの事なのは判った。 ミスリルってのはまさか……」


「うん。 さっきボクがキルで倒したのがミスリル。 見ての通り普通じゃない化け物だから、結晶機でしか倒せないのもわかるよね?」


銃弾を弾くところを俺は確かに目撃しているし、常識的に考えて普通じゃなさ過ぎる。 巨大化するわ透明になるわ、何がなんだかさっぱりだ。

逆に言えば同じ力を使いこなしていたキルシュヴァッサーは奴らを倒す手段として有効なのだろう。 で、そのロボットのパイロットが海斗であると。 そういう流れになる。

こうして冷静に考えてみると海斗は只者じゃないな……。 氷を食べている海斗はどうみてもどこにでも居そうなボケなんだが。


「第三共同学園の地下には研究施設があって、そこでキルを保管してる。 同時にそこは対ミスリル部隊の基地でもあるんだ。 第三共同学園以外の共同学園――第一、第二共同学園の地下にも同様の設備があって、同じく生徒会が運営してる」


「ここだけじゃないのか!? な、なんなんだ……この街は……」


「それを話すと長くなるけど、つまりボクら生徒会はミスリルを倒す為に存在するんだ。 キルを初めとする結晶機も同じ。 結晶機を扱える人間はごく一部だけで、適合しない人間は乗ることが出来ない。 君もボクもそれに選ばれたんだ」


「……つまり、俺じゃなきゃ駄目なのか」


「うん、そういう事になるね。 だからこそみんな一生懸命君にお願いしてるんだよ。 君以外に頼んで出来るような事なら、ボクは君の嫌がる事なんてしないよ」


胸に手を当て苦笑する海斗。 それもそうだ。 どうにもおかしいと思っていたんだ。 いつも俺に遠慮してばかりの海斗が何故あそこまで引かなかったのか。

正直しばらく放っておけば海斗は諦めて去ると思っていたのだが、どうやらそれは俺の間違いだったらしい。 俺の嫌がるような事を、妥協できるのならこいつがするわけがないんだ。


「…………そういう事か」


額に手を当て深く溜息を漏らした。 海斗は申し訳無さそうに視線を逸らし、人差し指を突き合わせている。


「ゴメンね、香澄ちゃん……。 こういう言い方をすれば、香澄ちゃんは断れないってわかってるのにボク……」


「…………謝られる筋合いはないね。 まあどちらにせよ、僕は君に借りを返さなければならない」


「え?」


首を傾げる海斗。 立ち上がり俺は眼鏡を指先で押し上げて眉を潜めた。


「さっき命を救われたんだ、少しくらい付き合ってやってもバチは当たらないでしょう」


「……香澄ちゃんっ!! あはっ! そう言ってくれるって信じてたようっ!!」


「どわあっ!?」


両手を広げて胸に飛び込んできた海斗はがっしりと俺に抱きつき、離れようとしない。


「ちょっと待てオイィッ!? 何してんだテメー、離れやがれっ!!」


「だってだって、またこれで香澄ちゃんと一緒に戦えるんだもん……! こんなに嬉しい事ってないよ! ぐすんっ」


「泣くんじゃねえ!! つーか昔は戦ってなかったろ!?」


「そんな些事に気を取られる必要はないと思う!」


二人でそうしてくっついたりはがそうとしたり、もみくちゃになっていると生徒会室の出入り口が開いた。

そこには目を丸くした冬風が立っていた。 俺たち三人の視線が交錯し、冷や汗が流れる。


「……ふ、不潔ですっ!! 何してるの二人とも!? 怪しいと思ったらそういう……そういうーっ!!」


「わーっ! バカ、何変な誤解してやがる!? おい海斗いい加減離れやがれ!!」


「まあ、いいんじゃないかな? ボクね、香澄ちゃんの事好きだよ」


「うるっせええええええっ!!!!」


そうして俺たちは一先ず解散し帰宅することとなった。

詳しい話は後日……。 兎に角色々あって俺も疲れていたし、長い話をするには夜が深まりすぎた。

三人で生徒会室の戸締りを済ませ、校門を潜る。 色々あった一日だったが、考える事がありすぎて逆に頭の中はすっきりしていた。


「もう七月になるね」


海斗がそんな事を言って笑う。 そうか、もう七月になるのか……。 早いもんだ。

左を俺、真ん中が海斗、右に冬風が並んで歩く。 冬風は終止納得がいかないのか、俺をにらんでいた。


「貴方が生徒会役員になるのであれば、職務もきちんと手伝ってもらいますよ。 私たちは二足の草鞋を履いて生活しているんですから」


「へえ。 それにしても何故僕が副会長なんですか?」


「香澄ちゃんってリーダーシップあるし、頭もいいし丁度いいと思って! ちなみに響さんが生徒会長なんだよ」


「こいつが……? ふうん」


「な、なんですか! 何か言いたいことがあるなら言えばいいじゃないですかっ!?」


「いや……別に?」


「〜〜〜〜っ!!」


「ま、まあまあ! 二人とも仲良く仲良く!」


冬風の態度は相変わらずだが、テキトーにあしらっていれば問題ないだろう。 一々構うだけバカらしい。

それにしてもすっかり遅くなってしまった。 ふと、携帯電話を見るとありすから何度も着信があったらしく履歴が大量に残っていた。

そういえば夕飯がまだだった。 外で食べようにもなんだか気力がわかない。 もう帰って寝てしまおうか。


「それじゃあ香澄ちゃん、ボクらこっちだから」


「ああ。 それじゃあ」


「……闇夜の晩には気をつけてくださいね、桐野君」


うぜえ。

二人の遠ざかっていく対照的な表情を見送り、俺も歩き出す。

つーか、あいつもチームの一員なのか……。 冬風とは早めになんとか折り合いをつけないと毎日が面倒くさくなりそうな気がする。

そんな事を考えながら帰宅する。 玄関を開き居間に入ると私服姿のありすがコタツに入りながらアイスを食べていた。


「あ、お兄ちゃんおかえり。 って、うわ……制服ドロだらけじゃん。 何してたの?」


「ちょっとな……。 着替えてくるよ」


部屋に戻り私服に着替えて階段を下りるとエプロンをつけたありすが台所に立っているのが見えた。


「あれ? ありす、夕飯はどうしたんだ?」


「どうせお兄ちゃんこの変の美味しいご飯屋さんなんて知らないだろうし、何か結局食べずに帰ってくる気がしたから作ってないの。 食べるでしょ?」


「あ、ああ……。 ありがとう、丁度お腹が空いていたんだ」


「そんなこったろーと思ったー! もー、だから何度も電話したのにシカトしてるんだもん、むかつく!」


「悪かったって……。 そうだ、お詫びに手伝うよ。 何を作るんだい?」


綾乃さん用なのだろう。 水色の大人用エプロンを着用する。 妙にきれいなのは使っていないからなのだろう。

台所に立つと包丁を持ったありすがジト目で俺を見つめていた。 大分怖い。


「男子厨房に入らずって言葉知らないの? ありすに任せてれば大丈夫だよ」


「そうはいかないよ。 それに、僕がありすと一緒に料理したいんだ。 それでも駄目かい?」


「……その言い方はズルいと思うけど。 まあいいや。 今日だけだからね」


「ありがとうありす。 でも今後もたまには同席したいね」


「……ばか」


家に帰って誰かが迎えてくれると言うのはやはりいいものだ。

ずっと一人で生活してきたからそれが当たり前で、嫌な事があったらベッドに飛び込んで眠るしかなかった。

でも、こうしてありすが笑って待っていてくれれば、そんな嫌な現実も少しだけ晴れていくような気がする。

自分で思っている以上に、俺は早くもありすに救われているのかもしれない。


「なんか台所に自分ひとりじゃないのって新鮮っていうか、違和感バリバリ」


「そうかい? 奇遇だな……俺もだよ」


「えへへ。 それにしてもお兄ちゃんマジでなんでも出来るんだね。 料理まで出来るとか完璧超人みたい」


「一人暮らしをしていると仕方なく出来るようになるものさ。 ありすも同じだろう?」


「うーん、いえてる」


こうして二人で遅めの夕飯を楽しみ、食後はありすを膝に乗せてTVを見る。

そんな夜はいつもよりもずっと短くて、ずっと何も考えずにいられた。

だからあれだけ突拍子もない事態が続いたというのに、不思議と俺の心は落ち着いていた。 考えたところでどうにかなるわけではないのだから、それでいいのだと思う。


「それでさ」


「ん?」


「仲直り、出来た?」


顔だけ振り返り俺を見上げるありす。 思わず苦笑し、その頭を撫でた。

見透かされているのは俺の方、か。 子供だからといって甘く見ていたら痛い目を見そうだ。


「さてな」


ありすは笑って「そっか」とだけ一言呟いた。

こうして俺の長かった一日は終わりを告げた。

そして俺の本当の危険な日々は、その翌日から始まったんだ。



〜設定資料集〜


*まんま作者メモの転載なのでネタバレ部は伏せてあります。見たい人だけ見てね!*


桐野 香澄 (きりの かすみ)


十八歳、高校三年生。 主人公。

長身眼鏡の美形。 眼鏡は伊達。

シスコンで姉の秋名と十二歳から十七歳までの五年間同居。 他県で暮らしていた間は安いアパートに住んでいた。

政府より招待を受け東京フロンティアへ移住する為帰って来た元都会っ子。 しかし当時の東京は殆ど瓦礫の山だった。

基本的に物静かな場所と一人が好きで大勢でワイワイするのは嫌い。 空気の読めないタイプだが、それを表情には出さない。

人付き合いは良好だが、本心では他人を受け入れないタイプ。 自分に嘘を付き、適度に現実を誤魔化している。

普通の生徒、普通の兄、普通の人間である事を祈りつつ、その歪んだ性格の為なかなか普通ではいられない。

子供の頃はガキ大将的な性格だったが、姉の失踪などを経て現在は落ち着いた気弱な性格を演じている。

*とかつて**した事により強い適合力を持ち、キルシュヴァッサーのパイロットとして選出される。



桐野 ありす (きりの ありす)


十三歳、中学一年生。 妹。

幼女担当、結構ウザい系の妹。

香澄とは父親だけ同じ、腹違いの兄妹。 過去の面識は余り無いため殆ど初対面だと言える。

明るく無邪気な性格で子供っぽい挙動が目立つが家事全般を任されたり時々驚くほど冷静な意見を言ったりする。

長い事会う事の無かった兄を気にしているのか、それとも気を使っているのかやたらと構う。 基本的に甘え上手。

勉学、体力共に優秀。 なんかきゃぴきゃぴしたイメージの塊。 名前ひらがななのは綾乃のセンス。

他人の心の闇に敏感で、香澄が抱える心の闇を癒したいと願っている。

**も強い*を抱え、*を思う傾向にある。 **********。



桐野 綾乃 (きりの あやの)


ありすの母。 香澄とは血が繋がっていない義理の母親で、香澄の父と再婚したお母さん。

東京グランドスラムについて研究している優秀な科学者で、****の社員。

結晶機の開発、研究等を行うせいか家に寄り付く事はあまり無く、家のことは殆ど娘のありすにまかせっきりである。

ずぼらな性格であまり大人っぽくない大人。 親らしくない親。 反面教師的。

失踪している香澄父の研究を引継ぎ、****にも所属している。

東京グランドスラム時、**と***として**を生み出した****。



進藤 海斗 (しんどう かいと)


香澄、秋名の幼馴染。 東京フロンティアの建造が完全ではなく、荒野が多かった時代から東京で暮らしている。

小学校から中学へ上がる前に居なくなった桐野姉弟の事をずっと覚えていて、特に正義の味方を豪語していた香澄に強く憧れていた。

気弱で優しく、しかし何かを守る為には努力を惜しまない性格の少年。 腕っ節は強くなく勉強も中の上程度だが、どこか人を惹き付ける魅力がある。

****社の試作結晶機キルシュヴァッサーの専属テストパイロットであり、結晶機の扱いは*人のテストパイロットの中でも最高といわれている。

キルシュヴァッサーのミスリル検体である*と仲が良く、ミスリルとも話し合えば理解しあえると信じている。

かつての香澄を目指し、努力し邁進する少年。 香澄にとっては目障りな過去の残骸。

過去、*に**を奪われ、以後****を失っている。



冬風 響 (ふゆかぜ ひびき)


キルシュヴァッサーチーム所属、ミスリルオペレータ。 海斗の彼女。

海斗とはキルシュヴァッサーチームが始まって以来の関係で、絶賛片思い中。

優しく親切で物怖じしない性格。 冬風家といういいところのお嬢様だが、本人はそれをあまり公言したがらない。

結晶機と****する技術を持つミスリルオペレータの一人で、キルシュヴァッサーの専属。

他人を偽り、自分を偽り、世界を大切にしようとしない香澄とは馬が合わない。

本人は意識していないが、**の為に**である事を望みすぎて時々から回りする。

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