銀翼の、キルシュヴァッサー(3)
「良かったのか? あれで」
『あの頃、ああしておけば』なんて事、誰もが後々思う事なのだ。
後悔や疑念の思いはいつまでも付きまとい、己の思考を鈍らせる。しかし過去に戻る事も過去を変える事も出来ないとわかっているのならば、今の自分に何が出来るのだろう。
結局の所、想いを過去に向けたところで何かを得ることは出来ない。ならばせめて、己のした事を後悔せぬように生きる事が自分自身に対する儀礼ではないのか。
月明かりの下、顔を上げる綾乃の隣に朱雀が立っていた。二人は無言で視線を交わし、それから同時に遠くに見える自らの希望へと視線を移した。
銀翼のキルシュヴァッサー。その足元で、桐野香澄と桐野ありすは言葉を交わしていた。二人の様子はここからでは窺えなかったが、手を取り合い言葉を交わす二人の様子は見ていてとても微笑ましいものだった。
「良かったかどうかはわかりませんけど……でも、今の私たちが彼らに何かを言った所で、意味の無いことだとは思いませんか」
「…………それもそうだな」
綾乃は香澄たちを眺め、朱雀は腕を組んで目を閉じて時を過ごしていた。決戦の時が来れば自ずと全ては急かされる事になる。ならばせめて今は……あのままにしておきたい。それは大人たちの勝手な我侭だったのかもしれない。
「私たちはいつも、あの子たちに沢山の物を押し付けてばかりでしたね」
「ああ」
「あの子たちの人生に……償いが出来るとは思いませんが。ならばせめて……甘さを見せる事無く、憎まれたままで……。そういうのも、親の一つの在り方だと思ってたんですけどね、私は」
苦笑を浮かべる綾乃。朱雀は彼女がどれだけ自分の子供たちを心配してきたかをよく理解していた。
立場柄姿を現す事も出来ず、嘘をついたまま、ただ香澄たちを見守る事しか出来なかった。そのように仕向けたのは朱雀本人であり、彼女たちに対してそれを詫びる事は許されない。
世界の為に子供たちを犠牲にするのだと覚悟したのだ。億単位の命を救うべく、数えられるだけの命を見捨てる。それは朱雀が己に課した最大の十字架だった。
「この世界が救われたら、あの子たちの手で裁かれるさ。最後に残った『力』がどんなものになるのか、最早私たちでは想像もつかんからな」
「その『力』がこの世界を否定したとしたら……何もかもお仕舞いですね」
「それはそれでこの世界が選んだ世界の『声』だろう。運命……と、そう言い換えてもいい。兎に角もう、ただの人間にどうにか出来る状況じゃあない」
「どうしたんですか、社長? いつになく弱気じゃないですか」
「ふん、言ってくれるな。別に弱気になったわけじゃない。ただ……」
「ええ。香澄たちを信じてるんですよね?」
「それはちょっと違うな。私は奴らに賭けてるんだ。掛け金は己の人生と世界の命運……。失えば全てが終焉を迎えるが、勝利すれば……新しい世界が見えるだろう」
「賭け……ですか。いつでも部の悪い賭けでしたね……私たちは」
綾乃の苦笑に釣られ、朱雀も微笑んだ。
最早笑うしかないというのも彼女たちの本音だったのだろう。
だがしかし、最早時代は大人が作るものではないのだと、心のどこかで理解しているのだ。
故にいつまでもこの世界の上に、大人たちがどっかりと居座っているわけにはいかないのだと。
「退いてもらわなければな」
「はい。退場を願いましょう」
作戦を前に思う事。決戦を前に思う事。
勿論僅かなその時間で、全てを片付ける事は出来ないのだけれど。
⇒銀翼の、キルシュヴァッサー(3)
「ありす。お前の記憶と感情を……元に戻せるかもしれない」
「ほえ?」
作戦前、香澄の突然の言葉にありすは口をぽかんと開けたまま妙な声を出してしまった。
驚くのも無理はない。しかし、それは冷静に考えてみればそう難しい事でもないというのがわかる。
「今の俺はキルシュヴァッサーの記憶、過去、想い……そういったものを全部コントロール出来る。数百年分の記憶の中に混同しちまって探すのが厄介だが、お前の感情を記憶を引っ張り出してお前に返す事は可能だ」
「どうやって……?」
香澄は無言で片手をありすに差し出す。その手が淡い銀色を帯び、不思議な輝きを放ち出す。
「メモリーバックの方法は一種類じゃないらしい。俺の中に……キルシュヴァッサーの中にある物を他人に分け与える事も、今なら簡単に出来るんだ」
「すごい……。お兄ちゃん、そんな事まで出来るようになったんだ……」
「すごいっていうか……まあ、化物染みてきただけなんだけどな……。それで、どうする? 戻すつもりになれば直ぐにでも戻してやれるぞ?」
首を傾げながらの香澄の提案。ありすは少しだけ思案して、それからゆっくりと首を横に振った。
香澄はそれが腑に落ちなかった。香澄にとってありすを傷付けてしまった過去は重い罪の意識となり、今でも彼の中で渦巻いている。それを振り払う事が出来るとは思っていないものの、せめてありすになにかをしてあげたいと思うのは当然の事だった。
それをあっさりと断られ、香澄は首をかしげた。ありすはそんな香澄の手を取り、それから深呼吸をする。
「お兄ちゃん、見てて」
ありすは瞳を閉じ、それから片手を胸にあて、ゆっくりと、愛しむように。全てを暖めるように、割れ物を取り扱うように。
そっと、朗らかに。にこやかに、微笑んで見せたのだ。
「……ありす」
「感情は……戻してもらわなくても、いいよ。前に言ったでしょ? お兄ちゃんが気にする事じゃない、って」
笑顔は長くは持たなかった。しかしありすの表情や挙動に以前のような明るさが戻りつつあるのは紛れも無い事実なのだ。
「記憶は、殆ど無くなってないし。想いなら……また、積み重ねていけるから。だから、お兄ちゃんは気にしなくていいの。返してくれなくてもいい。ありすの気持ちも、一緒に連れて行って」
「ありす……。そっか。お前……強いんだなあ」
にこやかに笑い、ありすの頭を撫でる香澄。今度は意図せずとも、二人の間には微笑みが浮かんでいた。
その場に屈み、ありすを全身で抱きしめる香澄。その香澄の腕の中、ありすは背中に両手をぎゅっと回して瞳を閉じていた。
長い長い間、擦れ違い続けていた気がする。二人の間にあるべき想いは最初から今までずっと一つだったのに、それがお互いへと伝わる事はなかった。
始まりは、桐野秋名から与えられた記憶だったかもしれない。それを求めるようにと、アダムの声が叫んでいたのかもしれない。
それでも今は違う。二人は香澄とありすとして、お互いの存在を認めていた。始まりや過去がどうでも、今積み重ねていけるものがあるという事が幸せなのだと、ありすは香澄よりずっと深く理解していた。
「……お兄ちゃん、あったかい」
「ごめんな、ありす……。今まで全然お兄ちゃんらしいことしてやれなかったけど……これが終わったら、ちゃんとするからさ」
「えへへ。楽しみにしとく。貸し、イチ……だね」
「ああ。高いツケになりそうだ」
お互いにしっかりと存在を確かめ合うように、二人は長い時間そうしていた。
やがて互いの腕を放した時、二人は充実した笑顔を浮かべていた。香澄は立ち上がり、キルシュヴァッサーを振り返る。
「アダムとの決着は俺がつける。アダムは本当に強くて、だから他の事にまで気を回す余裕はないと思う。ありす……信じてるよ。お前が俺をあいつの所まで連れてってくれるって」
「うん、任せて。ありすだけじゃない……皆、お兄ちゃんを信じてる。この戦いが終わったら……ね、今度こそ。ちゃんと響さんのお葬式とか……してあげたいよね」
「…………ああ」
香澄は悲しげに微笑んだ。もう仕方の無いことだとわかっていても、そう簡単に割り切れる事ではないのだ。
少年にとって少女の存在はとてもとても大きかった。彼女がいたからこそ、香澄はここに立っているのだと胸を張って言えるから。
それでももう、今はもう会う事も出来ない。触れる事も出来ない。そう思い返すと胸が苦しくて、思わず泣き出しそうになる。
だが、涙を流している場合ではないのだ。その生き方を選んでしまったのだ。間違っていたとしても進むのだと決めたのだ。もう……過去には戻れないのだ。
「ありすね……。死んじゃった響さんの心……メモリーバック、したんだ」
背後で手を組んで、ありすは恐る恐る発言する。香澄はその上目遣いな妹を脅かすことの無いよう、屈んで視線の高さを合わせた。
「響さんの想いだけは……一緒に連れて行ってあげたかったから。それで、ね……。だから、申し訳なかったけど……響さんの気持ち、すごくよくわかったんだ」
「……そうか」
香澄は言葉少なく応えた。そう、響の気持ちは判っていたのだ。桐野香澄という、少年とて。
だが、応えられなかった。それは誰のせいにもできない、自分自身の弱さ。己の為に涙を流し、怒り、叫び、共に歩もうと笑ってくれた少女を、香澄は救えなかったのだ。
それは恐らく一生、永遠の時間の中で香澄を苛むだろう。彼女が例えそれを望まなくとも、忘れない事こそ彼女への手向けなのだと香澄は思うから。
「響さんは、銀ならお兄ちゃんを元に戻せると考えてたみたい。それに……ありすの記憶も、銀の力があれば元に戻せるんじゃないかって。それだけじゃない。お姉ちゃん……桐野秋名の想いさえ、銀は引き継いでいるんだって、響さんはわかってたんだよ」
故に、斬る事が出来なかった。迷いが生じたのは、何も香澄のためだけではない。
そこに蓄積されていた沢山の過去と嘆きと想いその全てを断ち切るだけの覚悟が、響の中に存在しなかっただけの事である。
全てを知って尚、桐野香澄を愛する想いと仲間を守らねばならないという二つの想いに揺れ、結果己の死を省みず彼女は香澄がこうして全てを受け入れる事に賭けたのである。
「……結局、あいつはいつも俺の気持ちはお見通しだったな」
涙を流す資格はない。そう思うけれど。
「ホント……バカなやつだったよなあ」
苦笑を浮かべ、遠くを見やる。涙を流してしまわないように。少しでも心を奮わせられるように。
もう、とりかえしはつかないから。せめて全てを……忘れてしまわないように。想いだけは、彼女に届けば良いと。心の底から願っていた。
「ごめんね……。ありす、響さんを守れなかったよ」
「悪いのは俺だ。ありすはよくやったよ……。お前は俺が居ないとき、頑張ってくれた。それだけで充分だよ」
「お兄ちゃん……うぅ、もう一回だっこ」
香澄は無言でありすを強く抱きしめた。それでなんとか涙は流さずに済んだ。二人はお互いに涙を拭い去るように、決意を固めるように、言葉も無く抱きしめあう。
ありすにとって、香澄はとても大切な人だった。それはもしかしたら仕組まれた運命の中での事だったのかもしれない。
今はもう、それでも構わない。香澄はありすにとって大切な人……それはもう、自分自身で決めた事なのだから。
「二人とも、仲いいなぁ〜」
同時に視線を向けたその先、海斗が笑っていた。海斗は香澄の目の前まで歩み寄ると、至近距離で二人は見詰め合う。
「どうかしたのか?」
「いや、ほら。決戦前だし……挨拶回り、かな? それに大事な香澄ちゃんの妹さんを預けてもらうわけだし」
「あー。そう言えばそうだったな。傷モノにしたらぶっ殺すから覚悟して乗れよ」
「あ、あはは……。その様子じゃ、もうすっかり元通り……いや、解放されたみたいだね」
香澄の視線は海斗の手錠へ向けられた。不憫そうな視線に海斗は苦笑を浮かべ、それから笑って両手を掲げてみせる。
「ボクは、これでいいんだ。香澄ちゃんも国連軍に感づかれたらこうなるだろうしね。てか、この作戦が終わったら全員お縄かも」
「……だろうな。今から俺たちがやろうとしていることは、決して褒められた事ではない。そんなことに皆を付き合わせてしまって……」
「それは違うよ、香澄ちゃん。これは皆の問題だから……っと、ちょっといいかな? ボク以外にも、君たちに話がある人が居るみたいだから」
海斗が道を空けたその場所に立っていたのは桐野綾乃であった。二人は一瞬戸惑いの表情を見せ、それから同時に頷いた。
「ボクは席を外すよ。向こうで最後の確認をしてるから、終わったらまたね、ありす」
「うん、またね。海斗君」
手を振り海斗を見送るありす。それから三人の間に深い沈黙が訪れた。
言いたい事はお互いに沢山あったし伝えたい事も沢山あった。しかし今更それらを伝える事に意味はあるのだろうか。お互いに、その真意は薄々感づいているのに。
それでも綾乃は言うべきだと思った。それは一人の人間として、母親を名乗る女として、当然の事だと思ったから。心を偽り続けることは、決して正しくはないのだと、子供たちに伝える為に。
「なんだかこうして三人で会うのは、すっごく久しぶりね」
「……ママ」
「……今更、貴方たちに言える事があるとは思ってないけど……あのね……」
「いいの、ママ。全部、わかってるから」
ありすの言葉に綾乃は目を丸くした。香澄を見ると、彼もまたありすに同意するように頷いていた。
「パパの事が……好きだったんでしょ? パパを止めたくて……それでありすに、お姉ちゃんの力をインストールしたんでしょ?」
「……ありす」
「そういうの、いいんだ。わかってるの、ありす。ママが本当はいつもパパを止めようと仕事頑張ってたって事も、本当はいつもありすやお兄ちゃんの事気にしてくれてたんだってことも、そう出来なくて今も苦しんでるんだって事も……お兄ちゃんもありすも、ちゃんとわかってるからね」
ありすの優しい笑顔に、綾乃は言葉をなくしていた。
何も言わないまま、ただありすをぎゅうっと抱きしめる。これほどまでに出来た娘が居る事を、今は誇らしくて仕方が無かった。
「ううう〜……! ありす〜! いつもいつも、ごめんねえ〜! ママ、ありすに何もしてあげられなくて〜……わあああんっ!」
「ちょ……ママ、ありすたち泣かないように今一生懸命我慢してたとこなのに……ま、ママ〜〜っ! ふえええんっ!」
「ありすちゃ〜〜ん! ママ、ありすちゃんのこと大好きよ〜〜!」
「ありすもママが大好きだよ〜〜! わ〜〜ん!!」
「……お前ら……少しは人の目を気にしろよ……」
「ぐすん……。香澄ちゃんも、遠慮せずにママのおっぱいに飛び込んできていいのよ? 私たちは家族なんだから」
「激しく遠慮させてもらうっ!! というか、だから泣くなって!! 人の決意を鈍らせにきたのか、あんたはっ!!」
捲くし立てる香澄の様子に綾乃は微笑んでいた。その仕草や言葉は確かにアダムに似ているけれど、香澄は全くの別人……香澄は香澄なのだ。
そして今、綾乃がそう願っていたようにありすもまた自分自身というものを取り戻し、自分の道を歩き始めている。ありすは綾乃が思う以上に、ずっとずっと強い女の子だったのだ。
「わからないものね……。ちゃんと見ていてあげられなかったから……ありすがこんなに成長してたって、気づいてあげられなかったわ」
「綾乃さんは、アダムに利用されていたのか?」
「それはちょっと違うかな……? 香澄ちゃんも、大人になればわかるかもね。女の人って、騙されてると分かっていても好きな男の人に尽くしちゃったりする生き物なのよ。香澄ちゃんかっこいいんだし、身に覚えとかないのかしら」
「……逆パターンなら……覚えはあるが」
「あらあら」
肩を竦めて苦笑する香澄。三人の関係は、以前よりずっと自然になっていた。
まだ、家族だと胸を張れるほどの近さではないだろう。しかし、お互いにお互いの存在から目を反らすことはしない。もう嘘の上に成り立つ家族ではないのだから。
では、これから始めればいいだけのこと。未来は語るほど少なくはなく、また無限でもない。しかしその有限の中で、人は変わっていけるのだから。
「この作戦、香澄ちゃんを全力でサポートするわ。この世界の運命と未来……貴方に託します」
「大げさだな……俺はただ親父をぶっ飛ばしてスカっとしたいだけだ。あんまりにも盛大すぎる親子喧嘩になっちまった」
「男の子ってそういうものでしょう? いつだって命がけで、バカで……それくらいの方が、カッコイイのよ」
「ママ……。パパに似てるからって、お兄ちゃんを襲わないでよ……」
「あらあら、ありすったら何を言ってるのよもう〜。ありすのお兄ちゃんを、ママは取ったりしないわよ〜」
「いや……その会話はどうなんだ……もうなんでもいいけどね……」
笑いあう三人の姿を遠巻きに眺め、海斗は安堵の溜息をついていた。その傍らに立ち、日比野は彼に問い掛ける。
「この戦いがどうなるにせよ、桐野香澄はもう人類に受け入れられる存在ではなくなるでしょう。作戦が終われば私たちは犯罪者扱い間違い無しですしね。そうなれば……香澄君と会う事はもう無いかもしれません。最悪、君が彼を倒す事になるかも――」
「――それは、在り得ませんよ」
海斗は微笑みと共に返答する。
「自分にとって正しい事がなんなのか、ずっと考えていたです。その答えがようやく分かった気がします」
「ほう? その、答えとは?」
「己の想いに正直になる覚悟、かな……。自分の行いが例え世界にとっての悪でも、自分自身にとっての正義を貫き他人を傷付ける覚悟……。これ、朱雀さんや日比野先生にも言えることですよね?」
「ははは、参りましたねえ。君は大人を少し買いかぶりすぎですよ」
「そうでしょうか? ただ、もし世界が桐野香澄を拒絶し、排除しようとしても――ボクが彼の契約の騎士になって、彼を守り続けますよ」
「それは誓いですか?」
「いえ……多分、我侭です。それ以上でも以下でもなく」
銀色の翼が紡いだ物語は、誰の心に届いたのだろうか。
それは後世の歴史家たちの間で語り継がれるだろうか。それとも消えてしまった世界の中で、想いさえも残らないのだろうか。
キルシュヴァッサーと共にあった桐野香澄の想いは、紛れもなく本物だった。偽りと嘘の永遠の中で、それでも有限の自分と世界を知り、戦うと決めた。
ならば最早結末など意味を持たぬのかもしれない。だがそれでも、最後まで見届けようというのならば……。
「――オペレーション・キルシュヴァサー、開始します」
結晶塔の前に銀翼のキルシュヴァッサーが立っていた。
大地に刻んだ光の紋章から放たれる時を静止する波動が結晶塔の進行を食い止める。
キルシュヴァッサーのコックピットの中、香澄は仲間たちを信じていた。その結末がどんな事になるのかは、勿論わからない。
それでも信じ続ける事に意味があるのなら、今は祈るようにそれを誓おう。
せめて全ての仲間たちの想いを、この世界の意思に届けられるようにと――。
「行こうか、姉さん。銀……ありす、響」
一緒に連れて行くから。
瞳を閉じ、それから世界をしっかりと見据えて。
いざ、決戦の地へ――――!
世界の終わりを刻む戦いが、幕を開けた。