残酷な、セツナリズム(4)
「それじゃあ、銀は桐野君が?」
「はい。 やっぱり香澄ちゃんと一緒に居るのが自然でしょうから」
地下格納庫、日比野と海斗はキルシュヴァッサーを見上げていた。
ポケットに手を突っ込み、銀色の機体を見つめる海斗の瞳はどこか寂しげに見える。
「成る程。 まあ、君がそれで言いと言うのであれば是非もありませんが。 事実、キルシュヴァッサーは桐野君が現れてから急速に力を取り戻しつつある」
「……それでもまだ彼女には及ばない。 香澄ちゃんの力が必要なんだ、ボクには……。 ボクたちには」
「その先にあるものが世界の秩序と定義の崩壊だったとしても、ですか?」
「彼女が望んだ夢を叶える為なら犠牲を割り切れる。 ボクは今までそうやって生きてきたんだからね」
「難儀な事ですねぇ。 無理は良くありませんよ」
「無理はしていません」
穏やかに微笑みながら振り返り、優しく可憐なその瞳で日比野を見つめる。
「無理なんてありませんよ。 夢を叶える為ならば」
強く握り締める拳。 可憐な笑顔の向こう側、真っ白く澄んだ瞳の彼方には誰にも理解出来ない深い感情が渦巻いている。 仮面を被り、それを覆い隠して尚滲み出す強い決意に日比野は視線を逸らす。
「海斗君は、どっちの見方なんですかねぇ? 人類? それとも――」
「ボクは――正義の味方ですよ。 ボク自身が信じる、正義の」
胸ポケットから取り出した一枚の写真。 何時如何なる時も肌身離さず持っていたその写真を見つめ、海斗は始めて険しい表情を見せる。
そこに映し出された過去の海斗の肩を抱いて笑う美しい女性。 マジックペンで黒く塗りつぶされたそれを見つめ、海斗は唇を噛み締めた。
「だから、強くなってもらわなくちゃ困るんだよ……。 香澄ちゃん――」
無意識の内につぶやいたその言葉は、日比野の耳にだけは届いていた。
靴を鳴らし背を向ける日比野。 何も言わずに深く息を吐き、虚空を見上げた。
「やりきれないものですねぇ」
その言葉はしかし、海斗には届いていなかった。
⇒残酷な、セツナリズム(4)
「あらあら、まあまあ」
という、拍子抜けするような台詞と共に銀を抱き上げた綾乃さんはそのまま柔らかそうな銀の頬をぐりぐりと頬擦りしていた。
学園祭が終了した翌日。 とりあえず生徒会にもようやく遅れた夏休みが到来し、俺とありすも帰宅する事になった。
随分と長い事家を留守にしてしまった気もするが、綾乃さんも人のことは言えないのか特に何も言われることはなかった。
問題は俺が連れ込んでしまった銀の存在だ。 言い訳は何種類か用意していたのだが、俺が何か言う前に綾乃さんは銀を抱き寄せながら言った。
「家族が増えて嬉しいわね〜」
思わずずっこけそうになった。 っていうか、ノリ軽っ!?
「い、いや……事情とか良いんですか?」
「いいのよ。 香澄ちゃんの事信じているもの。 それにこう見えても私、御給金はいいのよ〜。 女の子一人増えたくらい問題なしだわ」
興味本位で給料の金額を聞いて俺は後悔した。 とてもじゃないがこんな古いボロ屋に住んでいる事が信じられない金額だ。
グランドスラムの研究者ってやつはそんなに儲かるのだろうか……。 親父の遺産も凄まじいし……いや、まだ死んだとは決まってないんだが。
「香澄ちゃんの事だから、何か事情があるんでしょう?」
「あ、ああ……。 でも、ありがとう……。 ただでさえ僕が世話になっているのに……」
「香澄ちゃん?」
申し訳ない気持ちでいっぱいになり俯いていると綾乃さんは銀を床に下ろし、怒っているらしい迫力のない表情で俺をじっと見上げている。
その妙な迫力……というか気まずさに気圧される俺を唐突に抱きしめ、綾乃さんは言った。
「私たちはもう家族なんだから、そういう事は言わないの! また言ったら私怒っちゃうわよ!」
「……す、すいません」
「だけど、一つだけ言わせて」
腕を放し、俺の肩を掴み真剣な表情で俺を見つめる。
「『その選択』に決して後悔しないで。 自分の選んだ道で迷ってしまう事の無いようにって。 それだけ貴方が自分で決められるなら、私は貴方を全力で応援するわ」
「……え、っと……? はい……。 俺は……いや、僕は、自分の行いを信じます」
言い切れる自信はなかったが言い切っておいた。 そうすることが良いようにその時は思っていたから。
その言葉の重大さも、彼女の真剣な表情の意味も、その時の俺には理解出来ていなかった。
戸惑っていたのかもしれない。 いや、きっとそうだ。 嫌っていたはずの人にかけられたどうしようもないほど掛け値なしの善意の言葉に、対応する手段が見当たらなかった。
思わず視線を逸らす俺の顔を覗き込み、にっこりと笑う綾乃さん。 何となく苦手意識を抱いてしまうのは仕方の無い事なのだろうか。
「照れちゃってかわいー。 やっぱりあの人にそっくりね、香澄ちゃん」
「…………そうですか」
あまり言われて嬉しくない言葉の二連コンボだ。 だが彼女にしてみればそれで苛立っている俺もまた面白おかしいものなのだろう。
敵いそうも無い……。 とりあえずこの場は銀の生活が何とか保障されただけでOKとしよう。 屈んで銀の髪を撫でると、くすぐったそうに片目を閉じて銀は俺を見つめていた。
結局俺は何だかんだいいつつ銀をこうして家に連れてきてしまった。 それがいかに無謀な事なのか、むちゃくちゃなことなのか判っていたのに、だ。 危険性もミスリルって事も何もかもひっくるめて判っていたのに連れてきてしまった理由は余り考えたくない。
とはいえ、銀は放っておけば大人しい。 どこに行くにもくっついてくるが、別に騒ぐわけではない。 気にさえしなければ生活に支障はない。 問題があるとすれば銀よりも、むしろ……。
「…………ママったら、何でふつーに許可しちゃってんのよ」
コタツでほっぺたを膨らませて明後日の方向を睨んでいるありすの方だろう。
綾乃さんはシャワーを浴びるとか行って部屋を出て行ってしまったので、その言葉は無論俺へのあてつけだろう。 銀は相変わらず俺にべったりで、それを見る度ありすの機嫌は悪化する。
「そもそもお兄ちゃんその子どっから拉致って来たのよ……? なんで生徒会の皆もスルーなわけ? どういう事情があるのよー!」
「いや、それはな……」
銀の存在を語るにはミスリルやら何やら、全ての事情を説明せねばならない。 だが、それはありすにとって良い事なのだろうか。
この世界の裏側に広がるミスリルと人間、そして人間と人間との抗争。 数え切れない無数の危険。 それはありすにとっても他人事ではないのだから。
そんな不安な世界の真実を語る事がありすの為なのか……。 そう考えるとどうにも口が重くなってしまう。 生徒会の規約としてもありすに語るのはタブーなのだが、そんな事より俺の倫理観がそれを許さなかった。
黙り込む俺とそれを見て悲しそうな顔をするありす。 このやり取りも何度目だろうか。 その度俺の胸は締め付けられ、何とも言えない空しさに襲われる。
「……お兄ちゃん、どうしてありすには話してくれないの? そんなに大事な秘密なの……?」
「……それは……」
言葉を濁すしかない自分が情けない。 ありすの揺れる瞳を見ていると、どうにも激しい罪悪感に襲われる。 それから逃れたくて気づけばいつも視線を逸らす。
それにきっとありすも気づいていた。 それからすぐに訪れる沈黙は、俺にとってこの上なく居心地の悪い時間になるだろう。
だが、今回は違っていた。 ありすは黙り込まなかった。 そのまま小さな手を二つ重ね合わせながら、呟いたのだ。
「……お兄ちゃんが傷だらけになって帰ってきたり、生徒会の皆とやってる事と関係あるの?」
「――ありす」
「気づかない訳無いでしょ? ありすだって子供じゃないんだよ。 本当は心配だけど、黙っててあげただけ……! 最近のお兄ちゃん、なんか変だよ!? その子の所為なんじゃないの!?」
「それは違う! 銀と俺とは関係ない! それに、生徒会の連中だって……!」
「うそつきっ!! お兄ちゃんのやってる事はお見通しだもん! お兄ちゃんまでありすに嘘つくんなら、もう知らないからっ!!」
「お、おいっ! ありすっ!?」
好きなだけ言いたい事を叫んで走り去っていくありす。 それを追いかけようとする俺の足を引いて止めるのは無垢な瞳の銀だった。
思わずそれを振りほどきそうになり……力を抜いた。 そんな事をしても意味はない。 ありすを追いかけたところでかけるべき言葉なんてない。
そうだ、どうせ偽りの家族だからと割り切っていたじゃないか。 何時の間に俺はやさしい言葉をかける兄なんてスタンスを演じようとしていたのだろうか。
「……所詮、本当の兄貴にはなれない、か」
小さく呟いた言葉は自分で思っていた以上に重く胸に吸い込まれ、苦痛となって脳裏を過ぎる。
そう、割り切らねばならない。 これからよりこの世界の危険と向き合っていくのならば……余計ありすを巻き込むわけにはいかないのだから。
綾乃さんも、ありすも。 他の皆だってそうだ。 絆があるから失うのだ。 最初から一人で目的を追うのならばそれでいい。
たとえ挫折しても傷ついたとしても、それは自分自身だけが知る痛みなのだから。
痛みがあれば、忘れない。 痛みだけはどうしたって身体から消えないから。 心も身体もそれはずっと覚えてる。 痛みは自分以外の誰かがいた証拠になる。 昨日の確約、明日との契約。 だから痛みは好き。 まだ生きてる証拠だから――。
アレクサンドラの言葉が一瞬脳裏を過ぎる。 上手い事を言ったものだ。 痛みは絆……という事なのだろうか。
だが、ありすも綾乃さんも偽りの家族……。 姉貴から居場所を奪った人間だ。 二人が居なければ、姉貴はこの家を出て行く事も無かった。 勿論俺も……。
そんな今更過ぎる事を自分に言い聞かせている時点で、入れ込みすぎている事は判りきっているのだが。
「仕方ないよな……。 ありすを傷つけるわけには行かないんだ……。 ミスリルは俺たちが倒さなくちゃいけない。 そうだろ? 銀……」
それでも、ありすの言った「うそつき」という言葉がどうにも頭にこびりついて離れない。
その言葉を反芻する度に、過去の痛みをぐりぐりと抉られるような気がするから。
「くそ……っ」
俺は嘘なんか付いてない。 誤魔化してなんかいない。
それもわかってる。 それが嘘なんだって。 誤魔化しているって事なんだって。
もやもやした気持ちのままコタツの前に座り込むと、テーブルの上に置きっぱなしだった携帯電話が鳴り出した。 発信者は冬風だ。
出るのが面倒な気分だったが、冬風からの連絡=チームキルシュヴァッサーとしての連絡だと判断し、出来るだけ気持ちを整え電話に出る。
「冬風か?」
『桐野君? 問題が発生したの。 すぐに学校にこられる?』
「今すぐか? ちょっと今は……」
『チームエルブルス……第一生徒会が結晶機開発プロジェクトから解任されたの。 従って新しいチームが割り込んでくるわ。 それに、他にも色々問題があって……』
昨日の今日でそれか。 全く問題の尽きない生徒会だ。
「判ったよ。 銀も連れて行けばいいんだろ?」
『お願いね。 出来るだけ早く』
通話を終了し、溜息を漏らす。 銀は何も言わずただ俺を見つめていた。
「……ここ、は?」
薄暗い倉庫の中、うっすらと差し込むいくつかの光。 闇の中拘束された身体は自由に動かず、自分が異常な状況にあることをようやく認識する。
アレクサンドラははっきりと意識した。 自分の置かれている状況は危険であると。 何とか動けないかともがいて見たものの、両手足は椅子に縛り付けられていて動く事さえままならない。
「……頭が、痛い……。 あたし、どうしてここに……」
チームエルブルスから降板され、そのチームそのものが消滅するという連絡を受けたものの、アレクサンドラの生活は特に変わらなかった。
当然のように病院での生活が続いていた。 それはチームから除外された時点で当然の事である。 しかし今、目を覚ませば見知らぬ場所に自分が居るという事態に実際に直面している。
暗闇の中、目を凝らす。 埃のにおいと闇の向こう側、そこには巨大な何かが膝を着いていた。
「……エルブルス?」
それが自らの生きがいとまで呼んだ存在である事に気づいた時、その影に目を凝らす。 そこには見覚えの無い少年の姿があった。
「目が覚めた? エルブルスの恋人――アレクサンドラ、だっけ?」
かちりと、ルービックキューブの回る音が響いた。 アレクサンドラは表情を変えず、ただ闇の中の少年を睨みつける。
「誰? あたしに何の用?」
「何、簡単な事だよ。 当たり前の事と言い換えてもいい。 君にちょっと、やってもらいたい事があってね――」
エルブルスの瞳が輝き、その背後から見えない何かが伸びてアレクサンドラに近づく。
それが結晶機ではなくミスリルとして解放されたエルブルスの触手なのだと気づくよりも早く、アレクサンドラの意識は途切れていた。
「アレクサンドラが誘拐されたっ!?」
にわかには信じられない事態に思わずテーブルをぶっ叩いてしまった。 静まり返る一同の中、それでも冷静になりきれない自分がいる。
状況は最悪だった。 チームエルブルスは解体……。 近々新たなチームが結成されるというのまではいい。 だが、それでどうしてエルブルスが消失し、アレクサンドラが誘拐されるような事態に陥るんだ。
「犯人はチームエルブルスそのものだって言う話です。 開発中止が決まったエルブルスは廃棄処理が決まったんだけど、フェリックス機関がそれを拒否したらしいの。 その後機関の研究員もろともエルブルスが消えて、その翌日にアレクサンドラさんも病室から……」
「何で誰もアレクサンドラを守らなかったんだ!? あいつはもう、戦う必要はないって……やっと別の人生を歩み始めた所なんだぞ!? どうして巻き込むんだッ!!」
「桐野君、落ち着いて……。 仕方無かったんだよ。 一般人になった以上、彼女もエルブルスももう守られる存在じゃない」
「機密とかあんだろ!? どうしてほっとくんだ……ッ! くそっ!! 何の為のチームなんだよ、フェリックス機関の奴らはッ!!」
訳もわからぬまま叫んでいた。 苛立ちがどうにも治められそうにない。
だって、アレクサンドラは……。 他に何もないから仕方が無くエルブルスに乗っていたのに。 ただ、それだけだったのに。
何でまた、危険な戦いなんかに巻き込むんだ。 他の生き方もあったはずなのに。 それを声から、あいつは探そうとしていたのに……。
「……元々フェリックス機関は悪い噂だらけだったからな。 国連が奴らの研究権利を剥奪したのも当然の対応だったのだろうが……事態が急転しすぎた。 慌てたところで俺たちに出来る事は……」
佐崎のいう事も判る。 フェリックス機関は今のうちに叩いておかなきゃならなかったって言うのも、そのせいでエルブルスが暴走したっていうのも。 でも、そんな危険な使い方をする奴らにアレクサンドラが捕まっていると考えるだけで胸騒ぎが収まらないのだ。
闇雲に動いたってどうしようもないっていうのもわかる。 全部わかってる。 理屈は理解できる。 でも――身体は納得出来ない。
「香澄ちゃん、どこに行くの!?」
「決まってるだろ。 アレクサンドラを探しに行くんだ」
「おいおい、無茶だぜ香澄ん! このアホ広い東京フロンティアの中からたった一人でどうやって見つけ出すつもりだ!?」
「それでも誰かが探してやらなくちゃなんねえだろがッ!! あいつは――! あいつは、一人なんだぞ!?」
「落ち着け香澄。 某たちも黙って見過ごすつもりはない」
振り返ると皆はお互いに頷きあい、それから俺を見つめた。
「桐野香澄個人としてではなく、チームキルシュヴァッサーの桐野香澄として捜索してください。 私たちもエルブルスを探しましょう」
「他の組織も、第二生徒会のメンバーも探してくれてる。 忘れないで香澄ちゃん。 ボクたちはチーム――仲間なんだよ」
「勝手な行動を取るな香澄。 俺たちもサポートしたくても出来なくなるだろう?」
「…………みんな」
チームとして動き出した生徒会。 それぞれが出来る事を出来るだけやる為に、準備を整えていた。
そんな中俺だけがぽかんと口を開けたままその場に突っ立っていた。 何と言うか、それは当たり前のことなのに。
チームである以上、仲間として行動する以上、俺たちが全員でアレクサンドラを探すのは当たり前のことなのに。 何故かそれが、強く胸を打つ――。
ありすのことも、綾乃さんのことも、チームの事も。 他人や嘘や誤魔化しだけではない、もっと確かな物が自分の中に芽生え始めていたのかも知れない。
そしてそれは、今俺がアレクサンドラに伝えてやりたい一番の思いだった。 そう、一人じゃない。 それをあいつに教えてやらなければならない――。
「……冬風、悪い。 取り乱して」
「ううん、いいよ。 それにしても桐野君……何時の間にエルブルスのパイロットとそんな仲良くなったの?」
「え? い、何時の間にって……そんな事はどうでもいいだろ」
「ふ〜ん……? まあ、兎に角出発しよう。 一刻も早く彼女を見つけてあげなくちゃ。 結晶機の力を悪用される事だけは、あっちゃいけないから」
冬風の力強い言葉に頷く。 そうだ、力は正しく使われなければならない。
一部の大人の……自分勝手な理屈で捩じ曲げられる運命なんて、あっちゃならないんだ。
携帯電話を強く握り締め、立ち上がる。 今出来る事を出来るだけやらなくてはならない。 それくらいの事は、俺にも判っているから――。
エルブルスが密かに搬入された新東京港の倉庫街に一台のバイクが止まっていた。
その傍らに立った男はヘルメットを外し、真紅の長髪を解き放って風を受け微笑む。
「さぁて、どうしたもんかね。 ここは正義の味方として行動すべきか否か……」
「エルブルス、ですか? 始末してしまっても宜しいのでは? 我々ならば一瞬で……」
「んー、そういうのも悪くはねえが、一応約束ってもんがあるからな。 キルシュヴァッサーとステラデウス、両方に情報を流せるか? 上手くいけば面白いもんが見られるぜ」
「それは構いませんが……マスターの存在を公にしてしまうのでは?」
「その時はその時だ。 仮面かぶって正義のライダーを貫き通す」
「時代錯誤も甚だしいのでは?」
「馬鹿野郎。 仮面のライダーは未だに現役だぜ」
「左様ですか」
メイドのフランベルジュが携帯電話を取り出す頃、水平線の彼方から近づく影を眺めて男は白い歯を見せて笑う。
「一応コッチにも責任はあるしな。 助けてやらんと後味が悪い、か――」
潮風の中ブーツを鳴らして歩き出した男。 その背後に続き、メイドも同様に歩き始めた――。
気づけば二十部でした。
えー。もう二十部かぁ……って感じです。
えー。早いですねぇ。あっという間でしたねえ……。
ほぼ毎日更新でお送りした銀翼のキルシュヴァッサー(モデムいかれてた日はご愛嬌)ですが、えー。どうなんでしょうか。
二十部までやってぜんっぜん話が進んでいないってのはどゆこと?って思います。
そんなわけで始めましての方は始めまして。そうじゃない人はお久しぶりです。神宮寺飛鳥です。
えー、二十部という事で。何か一言。
またロボットかよ! という方。本当にすいません。なんかロボット好きっぽいです。
前作『霹靂のレーヴァテイン』の反省点を生かしつつ、また一味違ったカンジのロボット物を作りたいなと思いついて始めた銀翼ですが、ぶっちゃけ過去作品とかの流用設定が多かったりします。
もう全然誰にも見せてないようなのだからいいんですけどね。
人名をつけるのが毎度困り者で、どうにも過去に作ったキャラっぽいのが出てきてしまいます。海斗とか冬風響とかにピンと来た人はお疲れ様です。
今更ですけどあとがきは見たい人だけ見る方向で……。
キルシュヴァッサーの雰囲気はロボットSFなんですが、僕としては大分好き勝手に書いている感じでして、得意なのか好きなのかわかりませんが、またなんかひねくれた感じの内容になってしまいました。
今回の人間関係のねじれ具合はレーヴァテインより上というか、どっちかと久遠の〜に近い感じに出来たらいいなあとか思ってます。わかんない人はわかんなくていいです。
シスコンロリコンな主人公像とかは結構その辺の影響を受けているのかなぁ。
実はキルシュヴァッサー。連載開始当日まで何も考えてなかったんですね。その前日まではもっとアットホームな感じの小説を書くつもりでした。
家族がテーマのふれあいストーリーみたいなの。なんでそんなの書こうと思ったのか謎ですが。
色々な意味で過去作品のミックス品になってしまった気がしますが、まあいいですよね。
レーヴァテインはスーパーロボット的な巨大さでしたがキルシュヴァッサーは結構ちっこいです。場所も完全な架空世界ではなく架空の未来の東京にしてみました。さらに学園ドラマ+ロボットSFということで、レーヴァテインはあんまり学校通わないまま終わったのでその辺も少しやれたらいいなあ、と思います。
あとは友情とか家族とか仲間とかそういうのを重視していけたらなぁ、と。今回もヘタレな主人公が段々と成長していく感じの話にできたらいいなと思います。
さて、本当に主人公らしくないごくごく普通の主人公、香澄。むしろこの手のロボット物の主人公にぴったりな感じの海斗。正ヒロインが現れない展開。どうにも迷走しているのか直進しているのかわからない状況ですね。
個人的には香澄と海斗、二人を主人公として物語を進められたらいいなと思っています。とりあえず二十部までで世界観も少しは固まったと思うので、二十一部からは二人の友情のお話を少し展開しようかと思います。
って書いてあるのを後で読み返してやべえなってねえじゃんってなるんですね。わかります。
感想評価は来ないけど、読者数はそこそこあるしもう少し続けて見てもいいですよね?ということで、とりあえず60部くらいで完結する事を目指して頑張ろう(死)
……60部……で、終わればいいけどなぁ。
そんなわけで、このわけの判らない話にもう少しお付き合いいただけたらなと思います。あと、レーヴァテインとか何のことか判らない人は、検索しないでおきましょう。長すぎて安易に読み出すと投げたくなりますよ。
それから真夜中にもかかわらず読みに来てくれている方々。頑張ってください