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残酷な、セツナリズム(2)

戦闘オンリー。


「ねぇねぇ〜。 こいつら食べちゃ駄目なの〜?」


「駄目に決まってるでしょ。 ぼくたちの目的は今回はレベルアップじゃないんだから」


第一共同学園学園祭にも一日目の夜が訪れた。

朝まではまだ遠く、しかし夜は更けた。 人気もまばらになり、その二人の存在の異質さがようやく露になる。

一人は第一共同学園の制服を着た少年だった。 もう一人は女性用のスーツを着用したOL風の若い女。 二人の組み合わせが少々異質に見えるのは、その歳がとても離れているようであるからだ。 少年の歳はいいとこ十代前半、女は二十歳はとっくに過ぎている。

だというのに、二人はとても親密そうに見えた。 その親密さは家族のそれとも友人のそれとも異なり、ましてや恋人などありえない。 二人の間にある関連性が全く理解出来ない。 そんな二人の組み合わせだった。

勿論この人でごった返す学園祭期間中にそうした特殊な組み合わせが生まれるのは珍しくはない。 だが、この真夜中日付が変わった時間に二人でまだ歩いている、というのはやはり少々妙であると言えるだろう。

ルービックキューブをかちゃかちゃと捻りながら少年は顔を上げる。 視線の先、横切っていく若い男女の姿を見て苦笑を浮かべ、完成したキューブを宙に投げ、それから片手で受け止める。


「そろそろ人も少ないし……頃合かな?」


「不便よねえ、ハイレベルだと……。 外見気にしてなきゃいけないって言うのは本当に面倒くさいわ」


「所詮この世界でぼくらはアウトローだからね。 目をつけられたくはないし……。 でもこうして時々楽しい事があるから悪くないでしょ?」


「まー、そうね。 それじゃあ乗り込んじゃう?」


「……君のその行動力は賞賛するけど、一応ここは敵陣だからね。 まぁ……適当におびき出そうか。 幸い手段なら、腐るほどあるからね」


少年の視線が捉えていたのは先程のカップルだった。 二人が振り返ると、少年は冷たい笑顔を浮かべた。

一方その頃生徒会室はすっかり静まり返っていた。 流石に疲れたのか、殆どのメンバーが眠りに付いてしまったせいである。

眠ってしまったありすをベッドまで運び、テーブルに付く香澄。 テーブルの正面では響がパソコンを操作したまま突っ伏して寝ており、床の上には佐崎と木田が転がっていた。


「ふむ。 まさに馬鹿騒ぎというやつだったな」


「ああ……。 イゾルデは寝なくていいのか? 明日も色々大変だぞ」


「寝るさ。 だが、その子を貴様に預けたままと言うのもどうかと思ってな」


香澄の足元には相変わらず銀が立っていた。 眠いのか、目を何度も擦り時々船を漕ぎつつも香澄の傍を離れようとしない。

溜息を着く二人。 そうでなければ二人ともさっさと寝ていたところだろう。 仕方なく香澄は銀を抱き上げ、椅子の上に座らせた。


「それにしても本当に気に入られているな。 何か思い当たる事はないのか?」


「いやあ……。 鳥みたいな理屈なんじゃないか? 刷り込みっていうか……」


「まあ理由はともかく貴様に負担がかかる事は間違いないな」


「ああ……。 こんなちっこいの俺にどうしろっていうんだか……」


と、二人が話していると突如銀が目を見開き、窓の向こう側をじっと見つめ始める。 何事かと二人も窓の向こうを見やったが、その理由は特定できない。


「突然お目目ぱっちりじゃねえか……。 どうしたお前」


「ふあぁっ!?」


イゾルデと香澄が銀に近づいた時、何故か飛び起きたのは響だった。 半分だけ開いた眼で立ち上がり、しばらくうろうろした後躓いて転ぶ。

二人はその様子を遠巻きに眺めていた。 しばらくすると起き上がり、響は香澄に掴みかかる。


「て、敵です! ミスリルですっ!! あ、あっちの方!」


「はあ? あっちの方ってお前……」


イゾルデと香澄は同時に気づいた。 銀が見ている方向と響の言う出現予想地は一致していたのだ。

刀を手に取り立ち上がるイゾルデが寝ている木田と佐崎を蹴り起こす。 同時に香澄はハンカチを取り出し、響の口元を拭った。


「よだれ垂れてんぞ」


戦闘が始まろうとしていた。



⇒残酷な、セツナリズム(2)



ミスリルが出現する時間帯は個体によって異なるものの、大体夕方から夜くらいであると言われている。

生徒会が放課後に活動する理由もここにある。 ミスリルの行動時間は=捕食の時間であると言えば、理由はわかりやすいであろうか。

通常時ミスリルに寄生されている宿主は元々の生活をなぞっている。 つまり学生であれば毎朝学校に通い、夕方には帰ってくるのだ。 ミスリルは基本的に上位種になれば成る程食事には気を使う。 ミスリルの食事とは他人の過去を奪う事。 一人では不可能であり、そして人前でやれば大いに目立つ。

勿論、学生の宿主が授業中に行き成り隣の席の人間を襲うこともある。 だがそうした安易な行動をとれば真っ先に対ミスリル組織に目をつけられてしまうだろう。 下位のミスリルは捕食衝動を制御できず、行きずりで狩りを行ってしまう事も少なくない。

故に組織はミスリル被害者の周辺を真っ先に洗うのだ。 被害者のもともとの関係者が宿主である可能性が非常に高いからである。

そうした捕食衝動を押さえ、本能ではなく理性で狩りを行えるだけ成長したミスリルは、自分とは全く関係ない赤の他人を捕食する。 誰にも怪しまれないように、その宿主が行動していてもおかしくない時間帯で。

つまり、自由に動ける夕方〜夜に活動している可能性が高くなるのである。 夜中になると道端で人に会うこともなくなるし、宿主がふらふら出歩いていたら違和感を抱かれる。

故に真夜中の出撃というのはチームキルシュヴァッサーにとって始めての経験であり、同時にそれが今までに無いシチュエーションである事を示していた。

真夜中の校庭を飛び出した大型バイク。 サイドカーを取り付けたそれを運転するのは桐野香澄だった。 サイドカーにはいつも通りサポート用の装備を整えた冬風の姿がある。


「で! 場所はどの辺なんだ!?」


「港の方です! 進路南!」


ヘルメットを押さえながら叫ぶ響の声に従い、香澄はバイクを走らせる。 無言でアクセルを踏むその内心は複雑だった。

香澄は当然、前回の模擬戦の影響で一時的な出撃停止措置を受けていた。 訓練はしているが、実機にはあれから一度も搭乗していない。

そもそもキルシュヴァッサーは前回の戦闘でのダメージがまだ抜けきってはいなかった。 しかし出撃前、銀との接触によってキルシュヴァッサーの自己修復速度は飛躍的に上昇した。

そのお陰もあり、キルシュヴァッサーはもう直出撃できるであろうと目されている。 先行しているイゾルデの駆る不知火を追従し、香澄は移動している事になる。

勿論、キルシュヴァッサーを動かす上で銀の存在は必要になってくる。 問題は海斗に銀が懐くかどうかという事であったが、その問題点は誰もが驚くほどあっさりと解決してしまった。

他の人間には多少の壁を作る銀も、何故か海斗に対してだけはそれをしなかった。 あっさりとキルシュヴァッサーを動かす事に同意し、コックピットでは今頃海斗が待機中であろう。

何故か香澄はそれが腑に落ちなかった。 つい先程まで足元にべったりだった銀が海斗にあっさり従ったからだろうか。 香澄は別にそれでいいと、むしろそのほうがいいと思っていたはずである。 だが実際問題として気持ちはモヤモヤしたままだった。

その理由に本人は気づいていたが、それを認めることが出来ない。 残るのはどうしようもない苛立ちのみで、それは彼の運転を荒くしていた。

旧東京湾に位置する海上に巨大な港が存在する。 それはグランドスラムで吹き飛んだ海を埋め立てて作り出された新東京港と呼ばれる海上の港だった。

円形の施設の周辺が全て港になっており、上空を行き交うモノレールが直通している。 物資の運搬は今や輸送用のモノレールが行っており、作業効率を重視した港には関係者以外立ち入れないのが基本であった。

モノレールでしか行き来できないその場所に向かうには二人の力では不足である。 バイクを海沿いに止め、遠巻きに新東京港をにらみつけた。


「この時間じゃモノレールも動いてねえ……。 見事に分断されちまったな」


「不知火視認しました。 桐野君、あそこ」


モノレールの線路の上、海を両断するその白く続く道の上に紅の影があった。

真紅のボディに真紅のマント。 巨大な太刀を携えた不知火は線路の上を低い姿勢で走る。 全力疾走のせいか、速度は時速120km程は軽々と越えている。 揺れる高架の上、火花を散らしながらあっという間に遠ざかっていく不知火を見送り香澄は溜息をついた。


「アホほど早いな……」


「うん、間違いない……。 反応は港からです。 イゾルデなら大丈夫だと思うけど……」


「徒歩で行くには遠すぎるしバイクじゃな……。 今回は仕方ない、傍観するしかないか」


香澄たちを置き去りに走り去った不知火は月明かりを浴びながら空を舞っていた。

敵が現実空間に固定化されていなかったとしても結晶機は相手を多少認識できる。 レーダーのような機能を持つそれはミスリル同士の認識手段であるとされているが、何はともあれそのお陰でイゾルデには相手の居場所がわかっていた。

レールから飛び降り、港に降り立つ不知火。 太刀を鞘から抜き去り、肩の上にそれを乗せながら歩き出す。

静まり返る港。 物音は聞こえず、ただ渚の声だけが響いている。 不気味と言えば不気味だった。 シチュエーションだけの問題ではなく、ミスリルの行動は今回は不可解な点が多い。

こんな真夜中に、こんな場所に捕食対象の人間がいるだろうか。 だがしかし、ミスリルを探知できるのは宿主が本体であるミスリルの力を使う為に実体化させた時のみ。 その反応があったという事は、この周辺で何らかの理由があり、ミスリルが力を使ったという事になる。


『気をつけてイゾルデ。 すぐキルシュヴァッサーもそっちに着くから、無理はしないで』


「承知した。 だが先行しておいてぼんやりしている訳にも行かぬだろう。 目標地点に移動する」


この港には合計30超の倉庫が存在する。 そのどれもが巨大であり、結晶機でさえ入り口を潜るに事欠かない程である。

そのうちの一つに足を踏み入れた不知火。 暗闇の中、確かに反応は近い。 巨大な太刀を両手で構えると暗闇の中に目を凝らした。


「……何だ?」


そこには確かにミスリルがいた。 二匹の小さなミスリルが。 何をするでもなくぼうっと立ったままの二つのミスリルの外見は今まで見た事が無いほど貧相だった。

ただ真っ白い鉱石の身体にかろうじて人型であると見て取れる程度の変形。 まだ形を成してもおらず、とりあえずミスリルが実体化しているだけ……そんな印象である。

それでも容赦するわけにはいかない。 太刀を下段に構える不知火を見てようやくミスリルは歩き出した。

緩慢な動作に苛立つイゾルデ。 小さく息を整え、近づく二つの影を睨みつける。


「――――疾っ!!」


一瞬の出来事だった。 近づこうとしていたミスリルは二匹共に一刀両断され、上半身がごろりと背後に転がり落ちた。

一撃で決着がついてしまった。 その情け無い事実に思わずあきれるイゾルデ。 刀身についた体液をマントで拭い、刀を鞘に収める。


「何だったのだこいつらは……。 というか、何がしたかったのだ」


視野を望遠する。 最初からだらしなく実体化したまま、防衛もせずただ切り殺されただけの弱いミスリルの宿主に興味がわいたのか。

二つの宿主は倉庫に無様に倒れていた。 それは一組の男女――どこにでも居そうな、若いカップルだった。


「こんにちは、キルシュヴァッサー」


その、若いカップルが。


「いや……違うね。 まあ誰でもいいか。 いい夜だね――人間」


学園最中の第一共同学園から拉致されたつい先刻まで一般人だった二人であるという事実を、イゾルデは知らない。

背後から聞こえた声に振り返るよりも早く、月明かりを弾いて飛んで来た何かに不知火は吹き飛ばされていた。


「新手――ッ!?」


今まで何の反応もなかった。 今も反応はない。 空中で姿勢を制御し、資材の山に激突しつつも何とか着地する不知火。

入り口にはピンク色のミスリルが立っていた。 非常に細いシャープな人型のデザイン。 その様相はミスリルというよりも結晶機に近い。

その足元にはルービックキューブを手にした少年。 それを気にしている余裕はなかった。 目前のミスリルの完成度は、今まで倒してきたそれとは余りにも錬度が違いすぎる。


『遅い、遅いわね〜アンタ。 ぜんっぜん燃えないわよ、アタシ』


「……ミスリルが、喋った!?」


『アッハハハハ! 喋るくらいで驚いてるんじゃ、今まで相当レベルが低いの相手にしてきたのであんた達っ!』


「当たり前でしょ、サザンクロス。 ある程度レベルが高いミスリルは姿を隠せるし――。 人間にバレるような無茶はしないけどね」


『バレちゃったらどうすればいいのかしら』


「――やっつけちゃえばいいんじゃない?」


『ですよねーっ!!』


サザンクロスが動く――。 そう、イゾルデが認識した瞬間には敵の姿は既に背後にあった。 反応が追いつかず、その刃のように鋭いつま先が不知火の背中を斬り付けた。


「速い――ッ!?」


『そう、それ! もっと言って頂戴よ! ねえ、アタシって――とってもとっても速いでしょッ!?』


太刀を鞘ごと構え、嵐のような猛攻を防ぐ不知火。 その装甲は何度も切り刻まれていたが厚い装甲とイゾルデの防御技術によりダメージを最小限に抑えていた。

とはいえ、完全にスピードが追いつかない。 反撃の糸口は見つからず、一方的な試合展開が続く。 極限まで研ぎ澄ました集中力で刃の軌道を読もうとしても、それは反応が出来ても動作は間に合わない。 そんな速さだった。

業を煮やしたのはサザンクロスも同じである。 ガードを突き崩そうと軽く跳躍し、大きく振り下ろした脚。 それをイゾルデは見逃さなかった。

降りてきた刃を鞘で受け流し、火花を散らし炎上する鞘から太刀を抜くと同時に浅く切り込む。 その一撃はサザンクロスに届かなかった物の、非常にすばやい反応だった。

背後に跳躍し、コンテナの上に降り立ったサザンクロスは不機嫌そうに不知火を見下ろす。 太刀を上段に構え、イゾルデもまたサザンクロスを見上げた。


『ムカツクわねアンタ。 いっちょまえに中々速いじゃない』


「貴様らが何であろうと某には関係の無い事だ。 ミスリルは斬る――。 ただそれだけだ」


『ミスリルは斬る、ねぇ……。 フン、偉そうに。 人間風情でミスリルを悪と断ずるアンタの根拠って何よ?』


「ハイレベルなミスリルとやらはおしゃべりも得意らしいな。 御託は飽きた。 男なら、戦で語れ」


『アタシもアンタも女だしぃっ!!』


動き出す二機。 そのやり取りは一瞬である。

速度はサザンクロスが圧倒している。 巨大な太刀を振り回さねばならない不知火は威力ではサザンクロスを凌駕するものの、反撃の糸口を掴むのは難しい。

故に戦闘は一瞬も気を抜けないものだった。 一瞬で無数の攻撃を繰り出してくるサザンクロスの攻撃を防御し、隙あらば踏み込み斬りつける。 サザンクロスはそのカウンターを見切り、回避する事に余念がない。

ある意味戦力は拮抗しているとも言えた。 尋常ならざる速さで展開された攻防はやがて倉庫の壁を破壊し月明かりの下へと移動する。


『スピードスピードスピードッ! やっぱりこの姿で動けるのって楽しいねえ! ずっと人間のフリをしてたから遅くてイライラしてたのよ!!』


「くっ!」


『アンタだったら見せてやってもいいわ……。 本当のアタシの姿って奴』


不知火の太刀の上に乗り、サザンクロスは背後に跳躍する。

太刀を構えなおす不知火の視界、月明かりの下サザンクロスは形状を変形させ、両足を刀身とした一振りの巨大な刃のような形状に変化した。

変形するという事態を全く想定していなかったイゾルデは一瞬気圧される。 ピンク色の巨大な刃は何の合図も無く加速し、不知火目掛けて放たれる。


『――壊れちゃいなさいっ!!』


それは音を置き去りにし、周囲の建造物も海も全て吹き飛ばす衝撃と共にイゾルデの認識を越え、一直線に不知火に接近する。


「――南無三ッ!?」


激突の最中、不知火は刃でその攻撃を受け流していた。

轟音と共に火を噴き軋む刀身。 次の瞬間にはサザンクロスは遥か後方、変形を解除し大地に両手足を着け減速していた。

攻撃を終えたサザンクロスが着地する方が不知火が倒れるよりも早い。 その攻撃は音速を超え、停止しているイゾルデにとっては捉えようが無い程の速さだったのである。

長大で頑丈な野太刀という武装でなければ攻撃を受ける事は出来なかっただろう。 事実その太刀でさえ罅割れ刃は悲鳴を上げている。


『エクスタシ〜! やっぱアタシって速すぎじゃない?』


「ぐう……っ」


『あらやだ、まだ生きてるし。 まーもう瀕死だし、もう一回食らえば流石に死ぬわよね』


サザンクロスが再び変形しようとしたその瞬間だった。 上空から降り注ぐ無数の弾丸に咄嗟に反応したサザンクロスは脚でその攻撃を全て蹴り落とす。

上空には月を背に舞うキルシュヴァッサーの姿があった。 両手に構えた巨大な拳銃を連射し、空中でそれを投げ捨てると太刀で真上から斬りかかる。


『来たわね、キルシュヴァッサー!』


「イゾルデッ!!」


「おぉおおおおおおおっ!!」


背後を振り返るサザンクロス。 その視線、装甲を破壊されボロボロになった不知火が太刀を構えて近づいていた。

サザンクロスは今キルシュヴァッサーの攻撃を受け止めている最中である。 反撃は出来ない。 当然行動は回避に向けられた。

横に薙ぎ払う不知火の一撃は破壊力満点でサザンクロスを襲う。 その攻撃を屈んで回避した狙いは、長大な不知火の刃を振るう事によるキルシュヴァッサーとの相打ちだった。

しかしその計略は成功しなかった。 キルシュヴァッサーは空中を舞っていたのだ。 刃を屈んで回避したサザンクロスの真上に。 背面に手足四本、全てを置いてバランスを取っていたその真上に、である。

コンビネーションの勝利であると言えた。 真上から深々と胸に突き刺されたキルシュヴァッサーの刃。 それを突き刺したまま捻り上げ、サザンクロスの肩口まで引き裂いて逆手に振り上げる。 桃色の体液が空目掛けて噴出すと同時に甲高い叫び声を上げ、サザンクロスは沈黙した。


「……イゾルデ、大丈夫?」


「ああ。 それよりもそいつ、まだ生きているぞ」


引き裂かれた上半身を腕で押さえ、サザンクロスは倒れたまま僅かに動いていた。 止めを刺そうと刃を構えるキルシュヴァッサーの背後から声がかかる。


『うん、強いね。 やっぱり手加減してたら勝てないか』


二人が振り返る先、そこにはもう一機ミスリルが立っていた。

厳密にはそのミスリルは立っていない。 空中に浮遊していたのである。 四角い箱のような物の上にヒトガタの上半身が接続されたような不思議なデザインにマーブル模様のカラフルなカラーリング。 もう一機のミスリルは小さな四角い箱を手にしたまま首を傾げる。


『でも、色々不具合があるみたいだね。 今回は目的も達成出来たから、ぼくらは手を引きたいんだけど』


「逃がすと思うか?」


『思わないね。 でも、君たちじゃぼくには勝てないから遠慮した方がいいと思うよ。 言い方が悪かったかな、うん』


気づけば二機を四角い箱が取り囲んでいた。 六つ、小さな箱は空中をくるくると舞いながら踊るように二つのキルシュヴァッサーを包囲している。


『――見逃してあげるって言ってるんだよ、人間。 日本語わかるかい? ぼくは君たちともサザンクロスとも違って争いが嫌いなんだ』


その声は少年の声だというのに背筋に悪寒が走るような、そんな凄みがあった。 イゾルデと海斗が怯んだ一瞬、箱のミスリルはその傍らを通り過ぎていた。

浮遊する箱は結合し、傷ついたサザンクロスを拾い上げる。 振り返ったミスリルは最期に二機のキルシュヴァッサーを見つめ、微笑んだように見えた。

うっすらと色を無くし、消えたミスリルの影。 一気に緊張が解けた二人は刃を鞘に収め、それから月を見上げた。


「……悪夢だな、まるで」


「……だね」


二人の呟きは波音に掻き消される。

そしてそれは、ほんの異変の始まりに過ぎない事を、二人はまだ知らなかった。



〜キルシュヴァッサー劇場〜


*うぐう…お腹すいた*



『霹靂の〜その4』


響「い、一大事ですっ!!」


香澄「それはこの、どうでもいいあとがき部分で取り上げてもいいような事か?」


響「それはどうでしょう……。 あの、何か最近アクセスランクに乗るようになったんですけどー……」


香澄「レーヴァテインの時点で乗ったことなかったっけ?」


響「そうですけど……レーヴァテインの連載一月目のアクセス数覚えてます? ユニ月で70とかでしたよ」


香澄「……日じゃなくてか?」


響「月、です……。 今思うと恐ろしく人気なかったですね」


香澄「あ、ああ……。 何だかそう考えるとキルシュヴァッサーはうまくいってるなあ。 パロディっぽくしたのが功を奏したのか、それともロボット小説に対する風向きがよくなったのか……」


響「結構人気なのってロボットなの多い気は確かにしますね」


香澄「このままブームメント的に獲得した読者がいなくならないようにしないとな」


響「月ユニ70はもう嫌ですっ!! うああああんっ!!」



『君の名はその2』


イゾルデ「そういえば」


サザンクロス「何?」


イゾルデ「何でサザンクロスなんだ?」


サザンクロス「変形すると十字架っぽくなるから。 あとキング○イナー的な意味で」


イゾルデ「……。 エクソダス請負うのか?」


サザンクロス「それはないんじゃないかしら……」



『ロボットならば』


木田「なあなあ、キルシュヴァッサーって合体とかしねーの?」


海斗「合体?」


木田「だから、キルシュヴァッサーと不知火で合体するとかさ。 ゴッドキルシュヴァッサーとかにならないの?」


海斗「ならない……んじゃないかなぁ……」


木田「でもミスリルは変形して剣になるわけだし、キルシュヴァッサーも……」


海斗「えーと、これはなんかのフラグなの?」



『ツンデレその2』


木田「そういえばさ、最近ヤンデレって聞くじゃん」


海斗「この話まだ続いていたんだ……」


木田「で、思ったんだけどさ。 ヤンデレって好きすぎて病んでるんだろ? じゃあツンデレは好きすぎてツンツンしちゃうんじゃないか?」


海斗「……つまり、○○デレっていうのは、好きすぎた結果であり、○○の部分の度合いはあんまり関係ないってこと?」


木田「そういう意味ではありすちゃんはツンデレってことだ!!」


海斗「じゃあアレクサンドラはヤンデレなの?」


木田「……ぽいけど、違うんじゃないか?」



〜完〜


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