第六話 角娘ちゃんは目覚めてみる
「だめ……全然見つからない」
お金を盗まれてから一時間後。
現在、角娘ちゃんは路地裏で一人、膝を抱え俯いていた。
その理由は簡単である。
(どうしよう……せっかくまとまったお金が手に入って、ひもじさから脱出できると思ったのに……もうなくなっちゃった)
角娘ちゃんは異世界にやってきてから、とてもとてもひもじかったのだ。
しかし、自らの角を売る事によって、ようやくそこから脱出できるはずだった。
結果が今である。
手に入れた希望を奪われ、残ったのは折れた角のみ。
もちろん、角はまだ片方残っている。そのため、再びお金を手に入れることは出来る……だが、半年生活できるお金が盗まれた事は変わらない――そのショックが角娘ちゃんを攻め立てる。
(わたし、また死んじゃうのかな。女神ちゃんに怒られちゃうな……こんなんじゃ)
角娘ちゃんは頭を抱え、さらに体を丸める。
もはや現実逃避である。
こんな事をしていても、何一つ事態は好転しない。
こんな事をしている暇があれば、ダメ元で周囲を探した方がいい。
角娘ちゃんはそんな心の声を無視して、現実逃避するが。
「っ!」
角娘ちゃんは自らの頭を抱えた際、とんでもない事に気が付いてしまった。
それは。
「あ、あれ……折れた角が、再生してる?」
そう、角を売るために折った角娘ちゃんの角。
先ほどまで確実に折れていた角――それがなんと、折れる前と寸分の違いなく回復していたのだった。