第三話 角娘ちゃんは折る
再び路地裏に戻ってきた角娘。
彼女はとあることに気が付いてしまった。
「角で作った飲み物……とっても美味しかった。角はお金になるんだ」
そう。
角娘ちゃんが気が付いたこととは、この世界で角はお金になるということである。
そして。
「…………」
角娘ちゃんは周囲に人がいないのを確認した後、フードを外す。その後、彼女は両手を頭に持っていき。
さすさす。
さすさすさす。
角娘は頭についている立派な二本の角を触る。
彼女は気が付いてしまったのだ――この角を売れば、お金が手に入るかもしれないということを。この角が売れれば、ひもじい生活から脱出できるかもしれないということを。
だが、それには一つ問題があった。
「角って折ったら痛いのかな?」
角に神経が通っているのかがわからない。
それこそが角娘ちゃんの抱える問題である。
(でも、仮に痛かったとしても……このまま死んじゃうよりはいいよね)
どうやら覚悟を決める時が来たようだ。
角娘ちゃんは両手で片方の角を握りしめ。
入れられる限りの力を入れる。
「女神ちゃん……せっかくもらった角だけど、ごめんね!」
その瞬間。
バキっと、そんな音を立てて角娘ちゃんの角は折れるのだった。
なおこれは余談だが。
角に神経は通っていなかったのか、痛みは全くなかったのであった。