第十一話 角娘ちゃんと狐娘ちゃん
「ちょっと、あんた! 今度こそしっかり見たんだからね!」
と、背後から聞こえてくる声。
角娘ちゃんがそちらへ振り返ると、そこに居たのは――。
「昨日、あんたが角を投げてゴブリン倒したの……絶対に見間違いじゃないわ!」
もふもふ狐尻尾。
もふもふ狐耳。
そう。
そこに居たのは、狐娘な少女だった。
角娘ちゃんは、そんな彼女へと言う。
「だ、誰ですか!? わ、わたしにいったい何の用が――」
「あたしの名前は狐娘ちゃんよ! 用なんて決まってるんだから!」
と、ずいずい近づいて来る狐娘ちゃん。
彼女は角娘ちゃんの目の前までやって来ると、そのまま言葉を続けてくる。
「ゴブリンだけじゃない……あんた、その再生する角を高値で売っていたでしょ!?」
「う、売っていません……よ?」
「そんな嘘ついても無駄なんだからね! あんたが角屋ちゃんのところか出てくるところ、あたしはしっかり見たんだから!」
と、狐尻尾をピンっと立てている狐娘ちゃん。
角娘ちゃんは、直感的に思う。
この流れは非常にまずい。
きっと、狐娘ちゃんの狙いは角だ。
彼女は角娘ちゃんを捕獲し、角を売買。
もしくは武器として使おうとしているに違いない。
(わ、わたし……捕まって実験とかされちゃうの!?)
そんなのは絶対に嫌だ。
正直、生きたまま身体を切り刻まれたりされるなら、死んだ方がまだいい。
しかし。
(せっかく女神ちゃんに転生させてもらったんだもん! 死ぬのもだめ……幸せに暮らさないと、女神ちゃんにも悪いよ!)
と、角娘ちゃんは決心。
となれば、逃走あるのみだ。
ジリジリ。
角娘ちゃんが、狐娘ちゃんの隙を見つけて、逃げ出す準備をし始めた。
まさにその時。
「さぁ、覚悟はいいわね?」
と、ニヤリと笑みを見せてくる狐娘ちゃん。
彼女は今にも、飛びかかってきそうな態勢をとってくる。
逃げるなら。
このタイミングをおいて他に――。
「あんた、今日からあたしの仲間になりなさい!」
と、狐尻尾をふりふり狐娘ちゃん。
あまりにも意外な一言。
角娘ちゃんは想定外の出来事に、思わずバランスを失う。
結果。
「あ――きゃっ!?」
盛大に尻もちをついてしまうのだった。