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一章1『残界』
———異様な程に軽くて世界と糾って
———崩壊と破綻を歩く敗残霊の足音。
早朝。
薄暗くて、霧の立ち籠めるどこか。乾き切った足音が、微かに響いた。
銃火器のような音にも聞こえるそれは、しかして違う。
等間隔で、僅か。
灰色の天蓋へ紛れてしまいそうなそれは、白亜の廃墟の残骸の上を風のように縫っていく。
ほそい。
細く。
こまかな。
細かく。
行く先が無い消えていく音。
でも、それを生む影は、大きく阻む壁のような濃霧を切り裂いて、ずっとずっと、前へ先へと、駆けてゆく。
乾いた軽快な音。でも、それは空気を読まず《《周り》》にそぐわない。
存在を訴えている音。でも、周囲からすれば微かでしかない。
けれど。
たとえ濃霧で霞んでいても、ひとつの人影は、確かにそこに在ると、云われている。
しゃらり。
印象的な『銀』が揺れる、
壊れかけたコンクリートの建物の群れ。
否、既に使えなくなって、壊れた廃墟の群れ。地面でさえ、崩れかけた瓦礫で埋まるほどの、雑多な世界。
———そう、そこは滅びた世界。




