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明日の星の銀鈴に。【凍結】  作者: しすれーる
第一章 異世界という現実
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閑話 世界の記録





 ―――空白だ。


 この世界は、空白でしかない。


凡ゆる、遍く、総て全てがまだ無い、空白だ。


 時間の概念も、座標の概念も無く。ただ『自分』がそこにあるというだけの存在しか認知できない。


 意識だけ、精神だけ。目の前が暗闇や、聞こえる音や、寒暖も何も無いそれだけ。


 肉体もなくそれだけで、たゆたう月日はどれだけだったのか。

 いつしか、気付くと、『自分』には “姿” が生まれていた。


 色という概念も無かった世界に、ぽつりと佇む金髪碧眼の、中性的な見た目をした子供。幾重にも重なりずりずりと引きずる白い衣に身を包んだ “それ” が、『自分』なのだと気付いた。


 次に見つけたのは、手に握られていた絵筆。

 何色にも変ずる絵の具に浸されていたそれは、見ていると自然に使い方が『頭』に入ってきて、描きたい衝動に駆られるものだった。


 使い方の通りに振るってみれば、ぴしゃり、と茶色の絵の具が飛び散って、それが大地に。

 水色は晴れ渡る青空に。

 青色は深く透き通った大海に。

 緑色は岩だらけの大地に根差す植物に。

 赤色は青空に燃える太陽に。


 太陽が、光が生まれると、自然と影も生まれる。そうして、太陽と対する月が連鎖的に生まれた。


 やがて『回る』という概念が生まれると、その2つは互いの領分を決め、性質から真反対の時期を受け持った。そうして昼と夜が生まれる。


 次々と、次々と。

 万物はそれから生まれ、空白に溢れていく。   


 橙色桃色黄色紫色土色濃色褐色粉色香色が―――。


 興の乗るままに振るうと、見たこともないものが簡単に生まれていく。

 一通りやってみて、絵筆を止めて『良し』と言う。


 必然。逆極の『悪し』を言うたと同じ。

 『自分』はら連鎖的に物事は生まれるという事柄を忘れていたのか。

 そうして、神のように万能ならずの欠陥を持つ人間が生まれた。



 やっと。そう、やっとだ。

 膨大な時間経過の後に、一通り振るったからこそ、気付いた。


 “描き過ぎた” ――生み出し過ぎたのだと。

 心底面白い世界に、永遠に楽しめる世界にしたかったのに、人間は進化していって、勝手に世界を握っていった。


 今更、描くのをやめても、遅過ぎて。

 繁栄できるほどの十分な環境は、創ってしまったのだから。


 人間に対抗するための何かを描きたい。が、もう描けない。絵の具は描き過ぎて無くなったのだ。

 過ちを後悔する中でも、人間はどんどん発展していく。


 毛深い猿から進化して身体が環境に適するように変わり、やがて道具を使うようになり。

 雨風が生まれると、それを防ぐために建物を建てた。

 人間の欠陥――脆弱な為に。呼吸と飲食が必須な為に。不便の為に。多寡な感情の為に、 “楽” をする為に惰性の為に。


 服も建物も住処も食も、何もかもを工夫を入れて昇華させていく。

 進んでいく文明を見て、『自分』は恐怖を覚えた。


 ―――速すぎるし、先が見えない。

 

 どこまでも、どこまでも。

 たとえ生活に足りているとしても、限りある環境を壊してまで究極を突き詰めていく。突き詰めるほど、世界は穢れていく。


 怖い。

 だが、止めることも出来ない。何故ならば、変革の絵筆は使い切ってしまったから。

 迂闊な事も口に出来ない。どうやら、絵筆からこの永遠性の言葉さえも、変革をするから。

 言葉にして、止められたなら。しかし、その止める為に発した言葉の逆極の現象を、『自分』は知らない。




 いつしか、なにもすることが――出来なくなっていって、それをただ傍観するようになった。

 いつも思うのは、やはり恐怖だ。だが、その裏に何かある。


 幾年経ったか。人間が、信仰を捨てていた。その陰で、『自分』の眷属と同種の力を宿した人間がちらほらと見えるようになっていた。


 自分たちを生み出した存在の先祖返りか、もう人間のみでその域に達したのか。どちらかは分からないが、その人間達は隠れ生活していた。


 面白い。

 そう、思った。


 気付く。恐怖の裏は、愉快だと。

 恐るべきスピードで移り変わっていく人間の世が、興味深くて面白いのだと。



 やがて、同族同士で人間が人間を迫害して、大規模な戦争が起こって。無駄に発達していた技術が、その破壊を大幅に引き上げて、更に世界は壊れた。




ふと気付く。

かたわらに、一冊の本とペンが落ちていた。あの過ちの中で、ついでに描いていたのを記憶の端に思い出す。

 描くことはもういい。何かするなら、人間達の行動を記録してみるのも良い。

 そうして、『自分』――いや。


 ―――いい加減、創ったもののように “名” が欲しい。

 いつまでも変わらず果てることがないのはか、この身体の性質だから変えられない。だが、あの者達は全員被ることのない名を持っている。変わりたいのなら、それに習うとしよう。  


 そう、あの発展する輝くもの達のように。


 ―――『我』は、ティシュトリア、だ。

 ペンと本。書くなら、創世記などだろう。だが、それは書きたくないのだ。幸い、この本は世に影響を全く与えない。


 自由に。そう、人間のように。

 『我』が欠陥を持つとしたら、この変化欲だろう。


 面白そうな者達を記すとしよう。

 ちょうど、人間達が日記や戸籍書類を書いている。それを真似るとしよう。






■霧霞雫(キリガスミ シズク)


人類が自滅して滅ぼした残界にひとり、およそ千年以上存在する、精霊と契約した少女。

意識が生まれた時には既に血に精霊に通ずる力を血に宿していて、解らないなりに似た性質の力の精霊と契約し、害になる狂った精霊を鎮めるのに呼び掛けの言葉を精霊に教えてもらった。

変わり映えのしない、停滞した崩壊の世界に飽き飽きしていて、それを作り出した《人間》について思うところがあるそう。

一時的住居にしていた廃墟で《影》の暴走に巻き込まれ、崩壊の前の栄えている世界へ転移。現在ルーヘスト王国の近衛騎士に厄介に。ちなみに《第一級零量》な為に危険人物。


□精霊に連なりし力のプロセスをここに記す。


  動作

周囲の仮契約(何かしらの繋がり代可)の精霊にエネルギー(対価)を払う

精霊が状態を書き換える

現実に現象が現れる



 傷付くことを恐れるらしかず、この者は血を対価にする事もあるか。

 跳躍、指弾、舌打。日常のそれを発動条件にすれば、さぞかしやりやすろう。




 さぁ、次は物珍しく契約なぞしている精霊だ。



■セィリア・ベルティア・フィルストラ

(雫には愛称ベル)


雫と本契約して智を得た精霊。偉そうな喋り方。

雫と会わなければただの仮契約ポジションの精霊だったと思われるが、本契約前得た知識を自我を持てた為に雫に一部継承。未だ不継承の所の知識は、各々らの『詠う』と『使う』との認識の違いからか。

ベルティアの宿るペンダントは、銀色チェーンに、♢型のペンダントトップに無色の宝石がはまっている。眠っているときは光らないが、起きていると光って、大声など高ぶるほどに強光に。




■シュヴルス・ルタ・ランスロット


雫がやってきた世界、キャリシオンのルーヘスト王国第二王女側付き筆頭近衛騎士。

短く切り揃えられた蒼髪と、騎士服の基本色の白色が印象的。(騎士服の白は大まかに『純白を保てる程に強く研鑽を怠るな』と『純白の裏を忘れるな』。裏は、己の成した事の痕跡は消えても罪業は忘れるなということ。)

雫のことをぎこちなく(言語が違ったため)シズクと呼ぶ。名前呼びするのは暴れられると王都が陥落するので、変に気を逆立てないようにするため。名前呼びしてても、恐怖はあるし雫のことをまだ《零霊》だと捉えている。

得意なことは魔法。皮肉なことに剣の才が勝り過ぎていて、勘違いされやすい。



 精霊現象を扱える騎士とやらも興味があるが、確か契約はこのようなような……。




契約には、本契約と仮契約あり。基本的に “結び付き” の強さが段違いであるが、代表的な特徴は以下。


ひとつ。

『仮契約は無数に(本人の気質や許容量による)出来るが、繋がり(パス)が弱いので引き出せる力が弱い。

加えて、理論的無数に契約出来るが、数は本人の許容量に依存するので、仮契約の契約内容は簡易的な事しか不可な上に、許容量を使い切れば本契約は永遠に出来なくなる』


ひとつ。

『本契約は得るものとして、契約内容に “望み” を1つだけ組み込むことが出来る。尚これは契約者が満たす事が可能なものならば複雑性は加味しない。

加えて、一存在にひとつ、つまり向き合うまたは相対する形で交わされるものである』



 人間の国の報告書や書物のように思えてきたがまぁいいだろう。




 幾千経ったか。先程書いたように、他の世界から紛れ込んできた面白い者を見つけた。

 無為に書き続けたが、それの方が面白そうだ。



 ―――願わくは、更なる愉快な出来事が起こらんことを。




           『   』

        世界神 ティシュトリア


 

こんにちは、絵詠紗羅です。

拙著ですが見て下さりありがとうございます。


***4月19日話内容が被って更新した為、新内容に書き改めました***

***4月29日読み返すと誤字発見。修正しました***

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