ガイダンス 前編
朝起きて学校へ行く。
大好きな友達とお喋りする。
授業はちょっぴり退屈だけど、それでも問題が解けると嬉しい。
そんな普通な毎日を歩めていたわたしこそ、世界一幸せだったのかもしれない。
まあ、もう関係のない事だ。
もうすぐわたしは、私立ブルスティーチェ女学院(以下ブル女)の生徒。つまりピカピカの高校1年生なのだ。厳密に言えば入学式の前なのだが、気にしてはいけない。何故、このタイミングで高校に来たかというとブル女は完全寮制。1年の4月1日から3年の3月31日まで、夏休みなどの連休でさえ家に帰ることができないのだ。そんなこんなで学校に来たのだが人がいない。同じ中学校や塾からはブル女に来る人がいなかったので1人できたのだが、やはり心細い。確かに集合場所はこの体育館のはずなのに……
「おはようございます。」
ふと声のする方向を見ると、1人のとても美人な少女がいた。小柄で華奢だが、圧倒的な存在感を放っている。とにかく挨拶しないといけない……緊張する。
「お、おはよう ございます。」
「入寮会の説明は、こちらでよろしいのかしら?」
「だと思うんですけど、見ての通り誰もいなくて。」
「それはそうでしょうよ。」
「?」
「あなた、聞いていないんですの?もう1人は、戦闘中の不注意による事故で入院中ですのよ。」
なんかよくわからないわたしは、質問するにも何処から聞けばいいのか分からなかった。何とか切り出そうと思ったとき、寮長らしき人が入ってきた。
「あら、全員揃ってるのね。」
「おはようございます。」
「お、おはようございます!」
「元気がいい子だ。今年は、いい人材を抜いてきたようだね。まあ、もう1人の馬鹿は入院中らしいけど腕は確かなはずだから。」
「だと、いいんですけどね。」
また、わたしに分からない話をしている。
それから2人は、なにかを話していたけれどわたしは聞いていなかった。どれくらいたっただろうか、頭の中で話を整理していたら日が暮れていた。普通にはありえないと感じるだろうけど、わたしはよくあることなのだ。人より集中力が高いのだろう。ところで、2人は何処へいった?
「また1人になってしまった。」
何気なく呟いたその時……
「なんで今、能力を使うんだい。今時の若いのと来たらろくな者がいないのね。ヒーラーの彼女は、自分の部屋に行っちゃうし。」
声は確かにあの寮長(?)なのだ。ただひとつ、おかしいのはあの方の姿が見えないことだ。キョロキョロしていると……
「サポーターなのに、探知も出来ないのかい。本当にダメだね。ヒントをくれてやるとしたら、早く下を見るんだね。」
わたしの影から、あの寮長が首から上だけを出して見つめている。
「キャー」