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夜闇

作者: 苦水甘茶


 ふと、目が覚めた。


 寝起きでぼんやりした頭は、奇妙に混乱している。それは、真っ暗な中で目覚めたからなのか、十分に眠った気がするのに体が重たいからなのか、よくわからない(あるいはその両方のためか)。

 厚いカーテンでぴっちりと閉じられた部屋は、外からの微かな光も遮っていて真っ暗だ。何も見えない。いや、濃い黒と薄い黒によって浮かび上がるシルエットがなんとか見える。そのシルエットのおかげで、ベッドの向かい側に置かれている机と椅子、それから本棚の存在を知ることができた。


 (今、何時だろう)

 ベッドの上で横になったまま、首だけを動かしてベッド脇の棚に置いてある置き時計のシルエットを覗く。しかし、暗いので時計の針は何時を指しているのかわからない。さすがに、小さく細い針のシルエットを視認することはできないみたいだ。

 時計の横に、スマホを置いてあるはずだが、腕を動かして見る気にならなかった。何時であるかを知りたくもあるが、それ以上に体を動かしたくない。

 確か昨日(今の時間が0時を過ぎていたらだが)の夕方の5時半ごろ、小説を読み終わり、少し休憩を、と思ってベッドに横になったことは覚えている。そこからずっと眠ってしまったようだ。だとしたら、感覚からして今は2時か3時くらいだろうか?

 時間を確かめることは諦め、体を仰向けにして天井を見上げた。相変わらず真っ暗で、見えるとしても照明の丸いシルエットくらいだ。いつも朝、目覚めた時に見える天井のシミは、今は見えない。


 ずっと天井を見続けていると、何かが見え始めた。

 これは、もう眠りに入ってしまって夢を見ているだけなのか、まだ起きているのに、黒いスクリーンに勝手に映し出された幻覚なのか。

 ぼんやりした頭は、別にそれが夢であろうと現実であろうとどちらでもよかった。それが、楽しいことであろうと辛いことであろうと。

 面白くもない映画を見ているような気分で、時間は過ぎていく。





 スマホのアラームが鳴っていた。外はもう明るく、カーテンの隙間から光が漏れて部屋は薄明るい。原因不明の薄ピンク色のシミが、白い天井にアメーバのように広がっている。

 夜中に見たあれは、やはり夢だったのか。様々なことをクリアに見た気がするのだが、繊細に思い出すことはできない。

 自分だったのか、それとも自分ではない誰かだったのか、その誰かが、何かをして、時間を過ごしていた。特別でもないそんな時間はいくつもいくつもあって、何パターンもの夢を見た(気がする)。

 その場にいて、ただ見ていた。いや、もしかしたら自分はその中の登場人物でしかなく、あれは誰かの夢だったのかもしれない。

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