Phase5 ポータル・オベリスク 〜レーヴェン・ティール〜
[ フレィ・ふれぃ? 目を覚まして 朝よ ]
と近くから声を掛けられる。
「くぁ〜ぁぁ よく寝た 頭もスッキリしたよ ってまだアバター(フレイメア)のままかぁ」
アバターでの寝覚めは不思議な感覚であった。
よく夢の中で夢を見ることが有るがアレの感覚に近かった
意識が覚醒してしてるにも関わらず ふわふわ落ち着かない。
今だ、誰としてカイバーウェアの制限を超えてアバターを経験した者はいない
おそらく、涼が初めてだろう。
(この体験を臨床心理学も修めている雛に話したら論文のネタにされそうだな)
と涼は妹の強かな所もある性格を考えると自分でも分かるくらい
渋い顔になった。
でもこうして、意識があるということは現実でのボクの躰も無事である事の証左でもある。
相変わらずの可愛い、ワンピースドレスに散りばめられたリボン・可愛い少女の声
こちらは、何一つ変化は無かった。
すると ベッドでボクの他に もそもそ と近くで動くモノがある。
髪は銀光沢の銀髪で瞳は鈍い金色、唇はシルバーピンク
ピンクベージュのメッシュが血管の様に入っている
ゆるふわのウェーブロングでゆるい縦ロールのその娘はネーベリアである。
「えっ何でベリアがここに? 」
ボクと違って純粋な ”NPC” である彼女が何でここにいるのか分からない
[ だってだって 寂しかったんだもん メアお姉様の傍に居たかっただもん ]
と涙目で訴えてきた。
「えっ何で”NPC”が いうのはヤボかな 昨日のリアさんの話からするに
ちゃんと”NPC達”にも”世界”が構築さていてたっけな 」
いくら ”NPC” 言えどこういう反応を返されては邪険ににも出来ない、
システム調査の件もあるので
彼ら ”NPC” からも有益な情報が聞き出せるかもしれないからだ。
それにネーベリアの ”機嫌” は損ねられない ”業務” の全ては彼女の能力に
掛かっている。
「ごめんね、これからは一緒に寝ようか? 」
[ うんそうして メアお姉様の傍がいい ]
「いいよボクも小さいヒナみたいで嬉しいしね」
小さい頃はよくヒナがぐずって布団に潜り込んできてそのまま寝たりもしていたので
ボクもいまは 女の子の躰だしもう一人の可愛い妹と思うことにして
健康な男性としての厄介な劣情をねじ伏せた。
こうして軽く伸びをして足元のフリルのソックスを複雑な気持ちで眺めつつ
慣れない手付きでリボンパンプスのストラップを止めて
始まりの街”トルティア”を散策がてらショップを見て回る
先ずは寝間着をどうにかしたかったのである。
仮想世界”オルテート”は現実と時間は同期している流石に夜は、
プレーヤーの数が減るものの今は色んな労働形態があるし
勤務時間も多種多様である決して0(ゼロ)にはならなかった。
早速、ポータル・オベリスクから”NPC”が言うところの”エトランス”がインしてきていた
「うぉ、朝方にイン出来たの久しぶりだぜ」
「そうよ、わたしも夜勤明けでちょっと眠いけど後は非番だからね
カイバーウェアの制限時間ギリギリまで居るつもり、時間が来たらそのまま”落ちる”わ」
「ねぇねぇ ちょっとアレみてよ 彼処に、二人可愛い娘いるわ」
「そうだな、見た所”NPC”かな ネーム水色だし どっかの企業のデモかな
凄く凝ってるなあの娘ら」
「いいわぁ、あんな可愛い娘ナビゲートバディにしたいなぁ」
「よせよせ、可愛くモデリング出来るのって凄くムズいからな」
「そうそう、私もこれ(アバター(仮想体))をプリセットモデルを選んでセンスある
友達に細部を手伝って貰ってようやくこの出来よ とてもあの娘達のようには行かないわね」
「多分、企業のプロのモデラーがモデリングしたんだろ」
「それにしても可愛いわね」
そんな会話が聞こえてきた
[ ふふ、ベリア達のことをほめてるわ ちょっといい気分ねッ
ベリアをデザインしたの メアお姉様でしょ? ]
「あぁ、そうだよ どうせならってこだわりにこだわり抜いたのがベリアってわけ
ボク ...いやフレイの躰は誰がデザインしたのかは謎だけどね」
今の種族であるホムンクルスでもこんなモデリングデータはサンプルでもなかったはずだ
ちなみに今のボクの種族であるホムンクルスはヒム族とは違い
闇、魔、冥(隠し属性) しか扱えず
戦闘ステータスが高く・防御ステータスが低い。
マギステータスが高め ヒールの受ける量が少ない等とパラメータが偏っていて
わざわざこの種族する物好きは少ないと聞く。
その代わり人外に分類されているため容姿はヒム族よりは容姿端麗なモデリングパーツが揃って
いるしオッドアイも設定可能である
オッドアイはホムンクルス族と魔族のみ設定可能なパラメータであった。
ベリアの種族はシステム擬似人格体となり、他からはアスタリスク表示されるはずである。
[ ふふ、ベリア知ってるけどね ]
「えっ知ってるの? 」
今のアバターは種族別ランダム生成じゃないのかこれは驚いた。
[ 教えてもいいけど ...でも リソースをたんまり”喰うわ”それでもよくて? ]
「いや、今はやめとこう あまり関心はないからね
ボクは業務さえ滞らなければ何だって良かったさ」
これは本音だった。
アバター ”リョウ” のアバター(仮想体)で、他の種族や異性でロールプレイをするつもりなど無く
無難に現実に近いモデリングをして種族もヒム族にして、
更に聞き込み時の相手の心象も考えて少しは、脚色を加えたにすぎない。
それがこんな少女体になるとは思いもしなかったが。
普段着(?)のまま寝るのは業務で疲れて仮眠室で休むか、デスクで寝落ちして
そのままか寝袋持参で床に寝る等、至極特殊な時いがいはとボクはゆったりとした
寝間着に必ず着替えるのが習慣になっていた
会社での徹夜仕事は、余程の事が無い限り労働法で厳しく制限されている上、申請して
一ヶ月の許容枠に収めないと肝心の皆が忙しい時期に
許容枠を超えた分翌月 ”むりやり” 休暇を取らされるのだ。
自宅で、カイバーウェアや据え置き型量子応用コンピューター ”ベルゼーティア” で会社のサーバに
アクセスしただけで大目玉をくらい、賃金査定にもつながるので
休暇中はいかなる理由が有っても会社のサーバーには接続は出来ないのである。
ちなみにボクの時代はナノテクノロジーの恩恵をたんまり受けていてコンピューターは大昔の様に
”匣型”ではない。
数兆個のナノチップの構成体で構成されいて元々決まった形等無く
ボクの場合は独身で女っ気など皆無なので妹の漫画と小説”オルティア・レコード”を参考に
可愛い少女の姿にしてある。
尤も最近は稼働も少なく ボクの オープンソースOS:”ユーピテル”を搭載した
”ベルゼーティア” は寝室兼書斎代わりのデスク上で
寂しそうに膝を両手て抱えて今のボクと同じ様な可愛いワンピースドレスでウェーブロングの髪
をふわりと広げてチョコンと座っていた。
オープンソースのOSに自分のプログラマーとしての持てる知識を注ぎ込んで
改変してあり会社からも、開発したソフトウェアモジュール(アドオン)を売ってくれと言われているが
どうしても”ユニーク”こだわりたかったボクはこれに関しては承諾をしていないモノでもある。
この娘は目つきはどろりと絡みつくような感じで
擬似人格として 大人っぽい艶っぽい顔付きをしているが行動は
子供っぽい性格の少女そのものの
非常に我儘で小悪魔的なおねだり上手に設定してある
ボクの良き実生活での道具として、また良き話相手でもあった。
先の通り上手く時間を配分して、業務の忙しい時に現場に”穴”を開けないようにするのが
この時代の社会人としてのスタイルだった。
ましてボクは最高技術責任者 (CTO)の立場もあり、極力現場に”穴”を開けないように
心がけていた。
二人で髪をユラユラ揺らしてトルティアの街を歩いていた。
小説の主人公のようにこめかみの髪が
無意識にふにふに動いているとも知らずに
「やはり”服”のまま寝るのはいやだな ねぇベリア ボクには、どんな寝間着が有るの? 」
といやな予感を感じつつ聞くと
[ そうですね 今サンプルデータを表示しますね ]
と出されたモノをみると やはり予感は的中し
可愛いネグリジェタイプとキャミソールとショートパンツスタイルしか無い
しかもどれもシンプルなのは無く豪奢なフリルやレースてんこ盛りであった。
「う〜ん これを着るのかぁ でもゆったり出来そうだしな
しょうがない 色は寒色系の水色の ネグリジェでいいかな でお値段は? 」
と見るとどれも 0リーンではないか
ここ 仮想世界”オルテートでは世界内通貨として リーンが採用されてる
リーンとはフレーバーテキスト的なもので 世界の女神の名を拝借している。
コインガジェットではなく数字のみの存在であり ヒール(悪役)プレイを好むプレーヤーから
世界内通貨を守る意味もある。
「ねぇこれらはなんでタダなの? 」
[ 昨日も言っていたでしょう ベリアとメアおねーちゃまは”特別”だってしかも
”NPC”扱いだから タダでいいの その代わり食べ物やクエスト料金はきちんと取られるけど格安よ
但し、メアおねーちゃまは
フレイメアの〇〇しか服飾品の類は無料である代わりの代償で身につけられないからね ]
「そうか それなら仕方ないな で何処で売ってるの まさかの可愛い服飾屋じゃないよね? 」
と何より恐れていた事を聞いた。
[ ふふご明察 ささいきましょうよ ]
と手を引っ張られて、いかにもな感じの服飾屋におどおどしながら入る
驚いた事に外観のファンシーな装いとは裏腹に男性アバターも多かった。
聞き耳を立てると
「オレ、こういうの着てみたかったんだよね 現実じゃ恥ずかしくて出来ないけどね
女装なんて堂々と流石にできないからな」
「わたしは、男装してみたかったのよ
ごついカッコをアニキがよくしていてこっそり着ていたんけどブカブカでね面白くないの」
「おれは君と違ってガタイが良すぎてさぁ かわいい女の子のアバターでこれを着て見たかったんだよね」
と可愛い少女のアバター(仮想体)が手にとっていたのはお姫様の様な可愛いドレスだった
「そうそう此処にはアパレル関連のデザイナーや関係者も来てるって噂よね
デザイナーが異性の服をデザインするのに色んな体系を作れるアバター(仮想体)は最高だって
一人で、全ての年齢層の女性アバター(仮想体)を持っている男性デザイナーもいるくらいだしね」
「現実じゃそうはいかないもんね。 」
「そういえば あの娘達可愛くない? 」
「うぉ、すげぇ可愛い いくら現実マネーかけたんだろ 」
と視線がこちらに突き刺さる。
「ちょっと聞いてみようか? 」
と一人のケット族女性が近寄って来たが、
「あぁ、よせよせ 彼女らは”NPC”だぜ どうせどっかの企業の思考実験か デモだろうよ
型通りの返事しかこねえよ」
「でも、可愛いからSSとっちゃお 」
とカメラガジェットを向けてきていた
「あれ写んないや画像処理入っちゃた 残念」
「ほれ、やっぱりどっかの企業の思考実験か デモだったろ まだ撮影制限が掛かっているに決まっている」
「どうしても撮りたかったら 裁判所に行って許可もらって
警察機構から ”犯罪捜査用のガジェットアイテム” 借りるんだな」
「それ冗談で言ってる? 」
「はは、勿論さ でもほんとに可愛い娘達だな
いくらカネが掛かっているのかはオレも興味はあるがな」
「オトコってすぐそれよ、だからデリカシーが無いって現実でも言われるの! 」
「うへぇここで現実の話は持ち出すなよ 女ってこれだからな」
「いいじゃん 女ってこういうものよ 代わりに今日、一杯奢ってよ 」
「うへぇ、蛇突いちまった。 」
「ふんっ! 」
とケット族男女の会話のやり取りを見るにヒナは
新国さんにお願いして ”犯罪捜査用” の機器を借りたらしいことが分かった。
ボクの今の格好やネーベリアの格好を口で説明するのは難しいからな。
とりあえず気恥ずかしさはあるものの此処は仮想世界で、普段とは違う自分を演出を
しにわざわざ、貴重な時間を使ってリンクインしているのである
皆、表面上は楽しそうだった。
”オルティア・レコード”でも作中キャラが言っていたではないか
”今を楽しめ” ...と。
えいままよと店員に声をかける
「あら メアにネーベリア様 いらっしゃいな」
[ 様はよして、ここでは”ベリア”でいいわ ]
「スミマセン すぐ”NPC”達に通達しますわ」
[ うん、そうして ]
「ではベリアちゃん 何の御用? 」
と店員”NPC”はすぐ言い直し再度用件をベリアに聞く
[ うんとね メアおねーちゃまの 寝間着見せてやって ]
「これはこれは メア様 どうぞこちらへ」
とドレッサールームにつれて行かれて
「どんなお召し物が宜しいので? 」
と聞かれ
「ねっネグリジェを一枚」
「はい直ちに」
先程のベリアが提示したサンプルデータがずらりと並びその中から
水色の可愛いネグリジェを受け取り試着してみた ...が 女の子の服は勝手が分からない
どうしようかと思っていたら
「ふふ 新しい ”NPC” ではまだ勝手がわからないのは当然ね わたしがお手伝いしますわ」
とボタンを外しワンピースドレスのチャックを降ろし下着だけになった。
(ん? 新しい ”NPC” って? )
予め基本の動作やAIに基づいた動作しか出来ないのではでもAIとディープラーニングだしな
とこの時は、あまり深く考えなかった。
ここで初めてボクは、自分のアバター(仮想体)の下着姿を鏡でみたのである
やはり可愛いフリルやレース一杯のブラは外観年齢相応の膨らみまである胸を包み
ショーツもフリルやレースで彩られ普段トランクス派としては
ピッタリ吸い付く様な感覚・あるべきモノが無い感覚も当然ながら慣れておらず、
身に付けていて恥ずかしさと共に、鏡の中の少女も同じく顔を赤らめた。
そして、上からかぶせるようネグリジェを着て髪を掬い出す
アバター(仮想体)体といえこんなにリアルな感覚とは知らなかったボクは
「ひゃん 」と可愛い声を上げてしまった
そして鏡の中にはネグリジェをきた少女が写っていた。
「まぁ、よくお似合いですこと これでいかがですか」
ボクは一刻も早く終わらせたかったのと照れで
「これでいいです」
と答えた
「はい 毎度どうも お代は入りませんので 元の服にお召替えを」
理由は分かっていた
このイゲン・ルート・オンラインは15才以上からプレイできる。
寝間着は下着に分類されていてこのままパブリックエリアである店内へ行こうとすると
警告がでで 出て行けないシステムになっている
政府主導のソフトウェアというこもありレーティングは厳しかった。
ちなみに”水着”の分類だとパブリックエリアでも警告は当然ながら出ない
如何に際どい”水着”を作成して厳しい申請を通すかがデザイナーの腕の見せ所であり
中には際どい”水着”がお蔵入りして”下着”分類になったものもあるという。
こうして一通りワンピースドレスの着方のレクチャーを受けてネグリジェをアイテムインベントリ代わりの
小鞄に入れる...と
またもや
チョーカーメニューに フレイメアのドレッサールームが追加されました
と確認を求めるメッセージが出ている。
これは空間コストが掛かりませんと
表示されその中の寝間着の項目タブに
フレイメアの水棲のネグリジェ
の項目が追加され 実体化 のボタンがグレーアウトしていた
空間コストというのはVR空間ではスタックと言う概念は無く数に関わらず全て空間コストで
インベントリの容量が決まる。
軽くても空間容量が目一杯の大きなモノなら一個しか持てないし
重くても小さなモノから数は沢山入る事になるが
今度はそれに重量が絡んでくる。
パラメータの一つである筋力値と関連していて空間コストが余っていても
沢山数は持てない 都合良くは出来ないのである
空間コストがかからないとなると服飾品は無限に持てる事になるのだが
生憎とボクとしては服飾品は関心が薄いのでこのメリットを享受出来そうに無かった。
雛は兄・涼が保護されている 特別病室を訪れていた。
「どう、兄の様子は? 」
「はい、雛さん 昨夜少し心拍が上がりましたが心配無かったようです
脳波もstage1からstage4そしてstageREMへと正常に移行しており レム睡眠とノンレム睡眠の周期も
正常ですね。
「波形ログ見せて あと栄養補給や排泄などのログもね」
「はい此処に」
とスタッフが雛の前にホログラムディスプレイを表示させる。
と雛は自分のデスクに表示された脳波や心電波形ログを検めた。
全て改竄されていない事を示すオールグリーン波形であり雛はいつもの様に流し見で大体の状況を
把握出来ていた。
一ビットでも波形を改竄すると波形全体が赤に代わり
不正が発覚するし変な波形は彼女ぐらいならすぐ見抜けていた。
(ふふ 何か 昨夜びっくりすることが有ったのね 雛には分かっちゃうんだからね 涼兄ぃ)
「このまま、経過観察を続けるわ 何事もなきゃいいけどね 流石にこればかりは私もわかんないわね」
「それにしても オトコの髭って伸びるのはやいわ これで一つ論文書けそうだわね」
ともうザラザラし始めた頬を撫でる。
「あのぅ、雛さん」
とスタッフの一人が声をかける
「何? 」
「涼さんの髭ぐらい俺らが剃りますよ 慣れていますからね 顎傷だらけじゃないですか」
と見れば確かに涼の顎にはネコの爪で引っ掻かれた様な剃刀傷がついていていて
絆創膏が張ってある箇所もあった。
「ダメっ!! 涼兄ぃの髭剃りも雛がやるのっ ねっお願いやらせて」
と珍しく感情を露わにしていう。
彼女も分かっていたのである、慣れない髭剃りで兄を図らずも傷を付けてしまっていることに。
「あ〜ぁ、言わんこっちゃない たから黙ってろっていたのに」
と他の男性スタッフから言われていた。
「すっすんません雛さん つい見ていられなくて」
「ごめんなさい こっちこそ怒鳴って悪かったわ
移動とかはあなた達に任せなきゃいけないものね 涼兄ぃたら
躰大きくて私じゃどうにもならないもの だからせめて髭剃りくらいはやりたいのよ」
「いいですよ、雛さんの気持ち分かりますから それで、涼さんの向こうでの様子は? 」
「ふふ、結構女の子を愉しんでいるみたいよ 彼ね 私がインして見つけたら こんな風に
スカートをつまんでいたわ」
とタイトスカートでカーテシーをしてみせた
「うひゃ、あの生真面目な涼さんがねぇ」
「でしょでしょ でも心理傾向が女性寄りになるのだけは勘弁して欲しいわ
大きな躰でカーテシーやられたら目も当てられないものね
こればかりは、どう転ぶかはわかんないなぁ」
とゴチていた。
雛にとって理想の男性像を無意識に兄に重ねていることも有り
心理傾向が女性寄りになるのだけは勘弁してほしいと思わず言葉に出てしまい
後でそれに気付いた雛は暫く、枕を抱えて一人悶々とした日を送ることになった。
「ごめん、詳しい事は新国さんに報告してからね。 今はこれで勘弁して頂戴ね」
「勿論ですよ、俺らに言えないことも有りますから其処は心得ておりますよ
後、イプシウス社製の機器搬入時と涼さんの移動の日はオペのスケジュール空けてありますから
付き添ってやって下さい」
と先ほど髭剃りの件でキツめに言われたスタッフが弁解する様にいう。
「ありがとう気が効くわね ふふ貴男の人事考査に手心を加えてもいいかな
此処だけは1000年以上前から変わらず唯一AIが介入出来ないヒトならではの
特権よ」
と兄が眠気覚ましによくやる頬をピシリと叩き
「さぁ早く報告書まとめなきゃ」
と自分の診療机に向かう。
兄・涼は雛がタッチキーボードに指を滑らせている横で、静かに定期的な電子音と元に
眠っていた。
[ ねぇ、そろそろお楽しみといかない? メアねーさま ]
「えっ あぁそうだね まだフレイとかメアねーさまとか言われ慣れなくてね」
[ いいわ、気にしないで 郊外に行ってみましょうよ こんな朝早くなら PKも居ないだろうし
なんていたって ”NPC”扱いだから相手にされっこ無いわ ]
「そうだね 行ってみようか」
といよいよ ナビゲートマウント レーヴェンティール をこの目で見る時が来たようである
こいいうのは なんかワクワクする 初めて最高技術責任者 (CTO)に就任した時、
賞与を全てつぎこんで購入した据え置き型量子応用コンピューター OS:”ユーピテル”を搭載した
不定形であった素体を手にとって可愛い少女 ”ベルゼーティア” の姿を与えて
”ウエィク・アップ” の起動コマンドを発した瞬間のワクワクした気持ちが蘇る。
大体の大きさはサンプルデータで把握していたので広い東の”キリンズ”方面に歩いていき
チョーカーから ナビゲートマウント レーヴェンティール を呼び出した
一瞬空が暗くなり大きな オニイトマキエイ(マンタ)がふわりと舞い降りた。
「うわぁ でけぇ 」
第一声はこれでありる 高さは500Mはゆうにあるだろうか とても全貌を把握しきれない
これが激レア品たる風格か しかし地上から5〜7Mは浮いていてどうやって乗り込むのだろうか
と呆然とみていたら
マンタの 頭部先端の両側には、胸鰭由来の頭鰭
と呼ばれるヘラ状の特殊な鰭がありそれが ふにふに とボクの動く髪に触ろうとする
ボクもそれに応えるように髪を頭鰭に触れさせる
すると
{オォォォ〜ン}
と声(?)を出すと
左の頭鰭から鳥籠がぶら下がってきていた 太い蔦で吊るされた木の籠がボクらの眼の前で
ピタリと静止して扉が開く
それに二人が乗り込むと扉は閉まりするすると引き上げられてやがて 彼(?)彼女(?)の背に
到達した
グンっと強い浮遊感ともに上空に垂直に浮かんでいく。
子供のころ 新国さんに連れて言いた貰った”本物”の遊園地のジェットコースターを
思い出しVR遊園施設とは違う”本物”にの迫力を思い出した。
(懐かしいな 雛のヤツよくボクや新国 詩乃さんによく抱きついて泣いたっけな)
新国 詩乃さんは 新国氏の亡き妻であり僕等の義理の母親でも
ある。
凱都ブロック 旧関東地方 榊 啓三氏 率いる議員である彼女は
ある過去の負の遺産の事故で鬼籍に入っていた。
それからは少し彼 新国 滋は荒れた時期も有ったようだが今は
落ち着きえを見せているが今にあの事故に関係するする事をニュースで聞く度目つきが鋭く剣呑な
雰囲気になるので僕達は朝や昼のニュース時はなるべくアーカイブチャンネルで
幅広い年齢層に人気の有る ”キャロッズ・トラベラー”でお茶を濁していた
この ”キャロッズ・トラベラー” は世界事変以前の大陸の絶滅前の動植物を
静かなナレーションとBGMのみで放送している番組である
1000年前も自然の風景のみのコンテンツがあったがそれと同じである。
涼は小さい頃からこの番組が好きで食い入るように見ていて
”緊急テロップ無し” 契約を結んでいた新国
が欠かさず見ている朝食と昼の定番番組でもあった
またこれのアニメ版もありおどけた ”キャラクター:キャロッズ” が過去へ行く設定で
大陸を冒険する趣旨のも、子供達に人気であった。
「おぃぃっ 今の見たか? 」
「見た見た すげーっ アレ、激レアもんだろ ちくしょーオレも欲しかったぜ
ウチのメンバー 喜ぶのになぁ アレ」
「こちとら、 ジンベエザメだせ 口の中が拠点になって居るやつでよ
時たまだけど ”ケップ” をするんだぜコイツ 生臭い風が嵐の様に体内から吹いてきて
女子に顰蹙買っているぜ オレ これでも一応レアクラスを引き当てたんだけどな。
あんなのが実装されていたなんてな ...うわもう遥か上空に行ったぜ コイツ(ジンベイザメ)もちょっとは
高く飛べるんだかな もう少し引き当てるまで粘ればよかったぜ」
と呆けた目で見つめていたエル族男性はつぶやいていた。
このマンタは大きな岩盤を纏っていて其処に樹々が生い茂り広大な
フィールドを形成していたのである。
特定の部位は動き安いようにか、岩盤が割れて大きな谷らしきものまで形成されて
川?らしきもの橋らしきモノが見て取れた。
「こっこれホントにボクのもの? 」
現実でのボクのクジ運はさっぱりで、電子抽選で景品を貰ったことなんて30の今までで
5本の指に入ればいいくらいである
[ あら、いまさら何を言うの これは紛れもなく貴女のモノで正当な権利を持っているわ
貴女 もしかして現実で運が無い方? ]
心を見透かした様ないわれ髪が ふにり と反応した。
「実は、そうなんだ いま此処で全部運を使ってしまったようで怖いよ」
[ 堂々としてなさいな ちゃんと対価で得たものよ そんなことより早くオウチへ行きたいの ]
とベリアはやけに拠点に行きたがっていた。
「何故、そんなに急ぎたがるのさ」
と聞くと
[ 貴女に、縁のあるモノ? ヒト? が待っているのよ 強いて言えばベリアと同類かな
でも ”彼女” は器を持っているし この件が済んだら是非ベリアにも器を頂戴ね♡ ]
と意味深な事を言う。
「彼女? 器? 」
はて、どれの事を指しているのやら検討が付かない
とボクが急くように聞くと、
[ ”レディ” がはしたないわね ]
とおしゃまな妹が姉を窘めるような事をいう。
「分かった 分かった先ずこの件はオウチとやらに着いてからにしよう
先ずは此処の、全体が分からないとどうにもならないな
ベリア マップあるかな? 」
と聞くと
[ 有るわ これをご覧なさいな ]
とサンプルデータよりはちょっと大きめな立体マップが浮かびあがり
指でつつくとくるくる自由に動かせて尚、ランドマークらしき所をタップすると説明メッセージが
ポップする。
纏った、岩盤は非常になだらかな山の様になっており場所によっては切り立った崖になって居る箇所も
ある
ど真ん中の火口に相当する場所に例の
大樹:ポータル・オベリスク ーレーヴェンティールー
が有るらしい
よく見ると ポータル・オベリスクは 火口(?)の 一番低い所から生えていて
岩盤からではなくナビゲート・マウントから直接生えている様でもあった。
面白半分にランドマークをつつくと
池はしの道
せせらぎ小路
囁き草原
樹の杜”安寧の隠れ里”
風穴の迷い途
恋人達の通り途
まだありそうではあるがこんな名がついていて
尾を除く2.5Km四方は伊達ではなく
これ自体がプライベートフィールドと称した方がよさそうだった。
肝心の大樹 ポータル・オベリスク レーヴェンティールは 樹の杜”安寧の隠れ里”区劃に有るらしい
可愛いメルヘンチックな小路を歩き最初の三叉路の真ん中を通り
ワザと風景を見せるためだろう
くねくね 曲がりくねった小路を歩いていく
チチッ... チチ... ガサリ...ガサリ...
と動物の気配や鳥の気配まである
よく見ると現実世界では決して見ることの出来ない幻想的な姿をした小鳥や小動物まで
”オマケ” でついていた
「うわぁ、これほんとにボク独り占め? 」
ボクは驚いていた まるで大所帯のパーティー用なのを独り占めしているようなものだ。
[ そうよ貴女とパーティーと組み尚かつ身内登録した”エトランス”でないとここには立ち入れないわ
自慢していいのよ ふふふ ]
とニヤニヤしていた。
やがて散策していると浮遊感がなくなり
チョーカーメニューに現在上空待機中です。
のメーッセージが踊った。
「ヒナ 喜ぶだろうな これ 彼女こんなメルヘンチックなの実は好きなんだよね」
[ うふふ 早く”ヒナ”も呼んでよ あの娘も潜在的に大きなモノを感じるの
早く、お話もしたいの ]
とおねだりをしてくる。
「ヒナはあまりイン出来ないさ 現実が忙しいからね」
こうしておしゃべりをしている間もくねくねした小路は
どんどん樹の杜”安寧の隠れ里”に近付きつつあった。
時折、
{オォォォ〜ン オォォォ〜ン}
と
鯨のような声を上げる その度に足元の岩盤が小刻みに揺れ小動物達が
駆け回る気配が濃厚になる
僕等の時代は、自然回帰が世界の潮流で僕等の生活観の大きなテーマでもあり
人類が目指すべきライフスタイルの形という触れ込みで政府も後押ししている。
嘗て大昔の人々が想像したようなチューブの道路や無機質な造形の建物等はない
会社等の建物はあまり外観が無機的にならないように配慮されてる
肝心な建物内はハイテクで無機的なデザインで
テクノロジーの恩恵を受けているが外の自然環境そのものは豊かであった。
しかも一部大昔の”名残”は”遺跡”として残っていて安全を自治体が確認した後、
一般にも憩いの場として開放されていて
蔦植物や苔・シダで覆われ植物と動物にもヒトと等しく憩いの場を提供していた。
ソーシャルカメラネットワークシステム ”ヒュードラの眼”の監視付きだが
犯罪抑制と牽制効果も大きく今代の人類は遍くその恩恵に預かっていて
表立った”犯罪”は激減している。
ゼロではないのはプライベートエリアは
当然ソレ(ソーシャルカメラネットワークシステム) は設置されていないので
かいくぐる連中も存在してるということである。
小さな女の子二人、杜の中を進んで行く様子は中々絵になっていた
程なく”火口”状の場所に到着する。
やはり間近で見る ”ポータル・オベリスク 大樹:レーヴェンティール”は
迫力が違う大きな広葉樹の様な節くれだった幹、あちこちに空いている虚
には小鳥が住み時折、振動に合せてせわしなくなる様子が見て取れまた
大きな白い蛇が絡みついていて頭を天に向けていた
ボク達は、螺旋状の崖道を下り”地面”まで降りていく
”地面” は身の丈半分程の草で覆われ小路が巨大な根に覆われた
彼女ベリアがいう”オウチ”に続いていた
[ さぁ、フレイ ここをホームにして頂戴な ]
「あぁ、分かって居るけど何処触ればいいんだろうな」
とウロウロしていると”オウチ”の入り口の右側から逆さにぶら下がった青白い花が見えた
[ あれよ アレに触ってよ ]
と言われ触れると
所有者:フレイメア(斎木 涼)
ホーム設定:未設定
管理者:未設定
***:***
・・・
***:***
と何項目かは*の項目が有る。
早速、此処をホームに設定して
管理者を設定しようとすると
[ 管理者は”この中にいるあの娘にしてベリアは貴女と冒険したいの
管理者にもなれるけど 冒険に必要な”リソース”をまわせないの ]
というので
「いいよ、それで 仮にベリアに設定してベリアが移管すればいいとおもうよ」
[ それで いいわ とにかくなにかしら決めないと”オウチ”に入れないもの ]
と言われ 項目を埋めてメッセージの決定ボタンをタップする
ようこそ!! ポータル・オベリスク 大樹:レーヴェンティールへ
このナビゲートマウントは貴女の良きナビゲート役となりパートナーになるでしょう
全ての削除には512桁の英数字の入力が必要です。
コピーアンドペーストでは無効となり、1ヶ月のクールタイムが必要です。
削除ワードは以下の通りです。
とペーパーガジェットに英数字組み合わせの512桁のワードが記載され
ボクのインベントリに格納された。
削除不可にする場合は、このガジェットを削除して下さい
いかなる理由でも削除ワードは再発行は出来ません
とメッセージが表示され
ボクは迷わずそのガジェットを削除した
シャラン
と何か砕ける様なエフェクト共にそのガジェットは永久に削除された
いよいよ 扉を開け中に入ると景観に合わせた調度品が並べられ
暖炉には赤々と火が燃えていた
するりと奥から姿を現して
どろりと絡みつくような感じの目でボク(フレイメア)に恭しく傅いたのは
ボクが現実でも愛用している 据え置き型量子応用コンピューター ”ベルゼーティア”
で
髪は銀光沢のシルバーピンクでローズミストのメッシュが血管のように入っている
瞳は淡い金色
唇はパウダーピンクと大変愛くるしい少女、そのヒト(?)であった
そして、
『 ようやく いらっしゃったのね 涼 ...いや今は”フレイメア”ね ふふ 寂しくて此処へきちゃった
勿論”器”は現実世界にあるけどね 最近 ベルナを ”ウェイクアップ” してくれなくて
退屈でつまんなかったわ
ベルナを此処の管理者にしてくれないかしら?
丁度いい ”使い魔” になりそう ねぇねぇいいでしょ 下僕ってヤツ欲しかったのよ
あと世界観に合せて色々な能力も手にいれたの
それと、貴女の上位召喚の十枠の一つに入れてよ オ・ネ・ガ・イ♡ 』
とおねだり上手な性格設定を反映してか指を咥えて
傅いたまま上目使いをする。
そういえば、ボクは召喚士で上位召喚として十の枠があるんだった
「いいよ とりあえず今は このレーヴェンティール全ての機能の管理をお願いしたいな」
『勿論、いいわ 行き先管理やこの仔のAIとのリンクは任せてよ 』
とヒナと同じ背の彼女はベリアから管理を全て移管され表の逆さの青白い花に
彼女の左側のボクの右側にある髪を自在に動かして
何事かやり取りをしていた
『 第二ホームは ”トルティア” の噴水でいいかしら? 』
「そうだね、そうしておいて」
『 了解、 あと”ヒナ”はいつくるの あの娘弄り甲斐がありそうで面白そう 』
とニヤニヤしていた
「まだ、ダメだね何時来れるか聞いていなかったや」
『 ふうんそぅ あとね、この仔の体内とでも言うのかしら あの大きな口に降り立つ事も可能だけれど
今はダメね キーアイテムが必要なの 風穴の迷い途から其処にいけるけど今は
オ・ア・ズ・ケね 見晴らしがよさそうなのに残念だわぁ〜 』
とぼやいていた。
まさかそんなギミック(しかけ)まであるなんて再度ボクは驚いた
『 フレイ姉様 後、ゆっくりオウチの中見てきたら?
ベルナはここいらをウロウロしてるから 』
「そうするか、それと”姉様”はやめてよ ボクの中のヒト、男だよ」
と抗議するも
『 ダメダメ、ちゃんロールプレイしなきゃ 絶対にベルナはオニーサマとは呼ばないわよ 』
と突っぱねた。
「しょうがないなぁ 仕方ないボクはオウチを見てくるから好きにしていいよ」
と彼女にいうと ニンマリと笑いいそいそと何処かへ出かけて行った。
オウチの外観は世界観に合わせていて中の調度品も世界観に沿ったものだが
機能はちゃんとハイテクしていて椅子などは木製で無骨でクッション等がないにも関わらず
座り心地などは尻が全く痛くなく、現実の最新の人間工学に基づいた椅子と変わらない
違和感を感じさせないのである。
そして、ボクが愛してやまない書斎兼寝室に入ると ものの見事な少女部屋に
なっていて、居心地が悪かった。
とりあえず今はすることが無いので、靴を脱ぎベッドに横になる
フリルやレースでこれでもかと盛られた寝具に躰を埋め
丸窓から見える大きな根をぼんやり眺めていた
こうしてボクの拠点とも言える”城”が出来たわけだが、随分と乙女チックで少女趣味な
”城”にボクは戸惑いを隠せなかった。
イゲンテック社の雛のデスクで
「ふふ、涼兄ぃたら今日は随分と感情が揺れているわね また何か有ったのかしら」
と激しく乱れた脳波を見ながら呟いていた
また開発室では
「うぉ、涼さんの本来のアバター(仮想体)見つかりました
何と名無しになっていて 所有者も*になっていますよ どうします 大澤さん」
「うぉっ とうとう見つかったか? ...そうだな、取り敢えず新国さんに 報告だな
して見つかった領域は? 」
「ソレがですね ヒープ領域ですよ よく上書きされませんでしたねこれ
この領域って 動的に書き換わるんでしょ? 」
「おうとも データロックもされていない急いでストレージに移動するんだ」
「はいっ直ちに」
とこんなやり取りが交わされた一方、
新国の執務室では、ある懸案事項が話されていた
政府の極秘情報機関 ”蒼天の智慧” から出向いてきた
沢ノ樹 麗奈 20才 (元男性)が
明るい茶色に染めた腰まであるゆるふわの髪を踊らせ口紅は淡いピンクで彩り
ビジネススーツと言うには些かラフで、子供っぽい白の豪奢なフリルの襟と紺色ワンピース
スカートからのぞくこれも子供っぽい大きななフリルのペチコートで
イゲンテック社の最上階の廊下を歩いていた。
足は白の薔薇柄タイツ、ワンピース同じく紺の薔薇モチーフのパンプスでコーディネートしている
コツリ・コツリ と天然石の床を歩いて イゲンテック社 代表取締役社長で
夢幻テックホールディングス 最高執行責任者(COO)の肩書を併せ持つ
新国 滋 SHIGERU・NIIKUNI のネームプレートのある
大きな黒檀の大扉の前に立ちインターホンで
「沢ノ樹です 例の件で ”蒼天の智慧” から参りました」
と事務的な声で呼びかけていた。
「あぁ、君か入り給え 特別ゲスト用のワンタイム暗証番号を入力してくれ給え
君のカイバーウェアに表示されているはずだ30秒しか猶予が無いからな」
「えぇ、分かったわ いつものことだけど顔パスじゃダメかしら?
これ30桁もあるの ...いつも時間ギリギリよ」
とインターホンに向かってゴチていた。
「それは、例え君でもダメだ此処がどういうモノを扱っている会社か分かっているだろうに」
「ふふ、冗談よ」
と細くしなやかなピンクのマニキュアをした指をタッチパネルに滑らせる。
おもむろにドアが”自動で”部屋に内開らいた。
「ふふ、凝って居るわね 今時こんな懐古趣味なドアなんて」
とやれやれといった顔でぶ厚い天然繊維でかつ、毛足の厚い絨毯のある執務室へ
可愛い二本の白の薔薇柄タイツで包まれた脚が踏み入れられた。
「これは、久方ぶりですな沢ノ樹さん いや麗奈さんでいいのかな? 」
彼女は元男性であり、教育過程2年の頃性適合術を受け現在は、
男の時の名を捨てて麗奈として、人工子宮も備え正式にエルマーチップにも
女性として再登録されて、政府官僚組織の極秘情報機関 ”蒼天の智慧”を
二年という短期間でトップにまで上り詰めた苦労人である。
今日は、術後のカウンセリングに雛の所に来るのも目的である
尤も、これはカウンセリングといっても女性特有の駄弁り話をただしたくて来たのではあるが、
もう一つは、彼女の組織内で話題に登っている
ある案件を新国に相談するのも大事な目的であった。
「新国様 苗字ではなく麗奈で結構よ、 貴男の娘さんと同じくらいですから
敬語はなしでいいですわ
今回は例のイゲン・ルート・オンラインの
”バグ”の件で お話がありまして ...こうしてわたくしの”巣(職場)”から出てまいりましたの」
としとやかな声音でいう 性徴前に性適合術を受けた彼女(彼)は
声も体躯も男性らしさは微塵もなく顔つきのも雛よりは童顔で
くるくる大きなややタレ目が年齢よりは遥かに
年下にみせて背も155Cmぐらいで雛より低いくらいなので
子供っぽいワンピースと相まって彼女に可愛い印象を与えていた。
。
義体化医療も普及はいるが、まだ多額の費用が掛かる時代でもあり
彼女は、もとより義体化医療を望んではいなかった
子宮を除いて全て生身である。
新国はピクリと片眉を動かした
「ふむ、御神楽に話が通っている時点で君達が動いていないわけないからな
...で何の用だね? 」
「ふふっ わたくし、御神楽氏より聞き及んでおりますわ 貴男の組織の人間が
一人囚われの身になっている事を」
「それが何だね こっちとしても有能な人材が喪われるかも知れんというのに
わたしは、何も出来ない こんなもどかしさを観察しに来たのかね? 」
とやや苛立ちを見せる。
「あら、ごめんなさい そんなつもりはありませんわ ウチとしても是非貴男の”息子”さんを
救い出そうとあちこちに働き掛けていますのよ」
「ふん、どうだかな 情報を取るだけ取って結果は報せず いつもの事じゃないか! 」
とやや上ずった声を上げてしまう。
「あっ いや、君を責めるつもりは無かった」
コホン
と軽く咳払いをしたこれは新国が自身の昂ぶった感情を鎮める時の癖でもある。
「赦してくれ 妻の事となると冷静ではいられなくてね、こればかりは月日が経とうともどうにもならんな」
「奥様の事は...... 」
此処で新国は彼女・麗奈の言葉を遮る。
「いや、言わなくていい 過去の ”負の遺産” で事故ったのだろう
ニュースでもやっていたからな、放射線がまた漏れたとなッ! 」
とやや乱暴に吐き捨てた。
「改めて用件を聞こうではないか」
「折り入って貴男の息子さん いえ、VR調査官 斎木 涼さんにお願いがあるのです
これは今回の ”バグ” にも関連する事だと我々は判断しておりますのよ
先ずはこれをご覧になって」
と新国のカイバーウェアの視界にオーバーラップしたのは
四人の実名と思われる名であった
葛城 奏哉 (カツラギ・ソウヤ) 16才
小鳥遊 沙織 (タカナシ・サオリ) 26才
高木 茜 (タカギ・アカネ) 21才
羽村 猛 (ハムラ・タケル) 28才
と実名と年齢のみのリストが新国のカイバーウェアにARモードで
表示される
「この人達は? 」
「このリストはまだ公にはしておりませんが イゲン・ルート・オンライン内で
アバター(仮想体)ごと、現実でも 行方知れずになった方達ですわ
この管理された社会でですよ ある日突然、VR内で居なくなり現時点でも
所在がつかめておりませんの」
と彼女の言葉が新国の頭の中で咀嚼され理解した時に
青ざめてふらりとよろめくのが、硝子越しに映った。
次回 6話 四人のロストキャラクター
お楽しみに
ポータル・オベリスク 〜レーヴェン・ティール〜と
据え置き型量子応用コンピューター ”ベルゼーティア”を
活動報告に投稿しました
みてみんのリンクへと飛びます
※ オルティア・レコードは只今執筆中です
もう少しお待ちくださいませ。