Phase1 イゲン・ルート・オンライン
この物語は 拙著 オルティア・レコード とゆるい
リンクが有る
スターシステムを採用している作品です
プロローグ
コツコツ ...カッカッカッ
せわしなくテレビ会議室に向かう一人の初老の男の姿が有る。
顔は初老らしい皺が刻まれ本日は更に一段と老けた面持ちであった
額には大粒の汗、手の指はせわしなく動いていた
やがて大扉の前で生体認証を済ませ中に入る
会議室と言っても大勢の人が居るわけでは無い
彼は端末の電源を投入した。
向こうに見えるは 夢幻テックホールディングス 最高経営責任者(CEO)
会長 レーベン・バックラー が頬杖を付き顎を乗せ訳あり顔でこう尋ねた
「新国君、ウチの 主力商品VRMMOイゲン・ルート・オンラインの
バグの件はどうなって居るかね? 解析が進んで居ないようだが? 」
「はぃ 済みません バックラー会長 我がイゲンテック社 全力を上げて解析を
勧めておりますが外部からのモニターでは数字上の齟齬が確認されおりませんで
どうしたものかと開発室でもブリーフィングを......」
ここでモニターの向こうの人物は手を組み替える。
「君たちの民族は、致命的な過ちを犯していないうちから自分の非を認めるのかね
まぁ、ボクはそれが君たちの民族の美徳である事も承知の上だが? ハハハ」
とモニターの向こうの顔が緩む。
「はぁ、目下開発室長 斎木以下、事に当たらせていますがモニターの数値からでは
追えないことも多く どうしたものかと......」
とやはり民族の特徴が露見して語尾が尻すぼんでしまい言葉にならない。
此処最近のことだがVRMMOゲーム イゲン・ルート・オンライン内でプレーヤーキャラが
現実のプレーヤー毎行方不明に成ったり
アイテムがドロップしない・やたら強い・ ”血” が出るなど
プレーヤーの中には”向こうから”来る”本物”ではないかと思われる魔物が迷い込んで来たり
不可解なバグが発生していて都市伝説的な噂として広まりつつ有るのだ
獲物の匂いを嗅ぎつけたマスコミの中には進んでキャラを作成しゲーム中に交代で
張り付いて居るものもいた。
特に”流血表現”には煩くVRMMOのレーティングが上がると巨大な15才以上の課金アイテム市場
を失うばかりか政府の一言でVRMMO自体のコンテンツが禁止品に成るかも知れない
危機をはらんでいた。
だからどうしてもこのバグが意図的ではない事をデータで以って
証明しなければならないのである。
次の査察までは猶予があるがそれでものんびりとは構えていられない状況である。
まさにコンテンツそのものの命運が掛かっていた
「まったく、頭が硬いね君たちは何なら本人を潜らせればいいじゃない
VRMMOゲームに社員を潜らせることが会社の社風にそぐわないていうならボクが君に
指示しようじゃないか そうすれば君たちのいう建前は守れるだろ
あくまで遊びでなく業務活動なんだから だったら 夢幻テックホールディングス
から志願者に手当を直接出そうじゃないか ......うん...そうしよう、
早速その者の口座を教えてくれ給え
これは、ボクからの命令だよ 君ならすぐこの場で 潜る人材の名を挙げられるだろ
このボクもニホンのポータルにアバター(仮想体)で一プレーヤーとして潜らせてもらうとするよ
美人のおねーさんのアバター(仮想体)でね っはは楽しみだな」
と自分より遥かに若く 脳裏に浮かんだ、開発室長の斎木 涼より幾分若い若干25才の
最高経営責任者(CEO)はからから笑う
「後で、そちらも潜ったらアバター(仮想体)名と種族を教えてくれ給え
ボクも美人のおねーさんで潜るつもりだし
外観性別と中の性別なんて違うことなんてこの手のゲームじゃよく有ることだし性別は
問わないよ」
「はい直ちにプロジェクトチームを組み事に当たらせます。 」
「あとこれも命令だ。 その者のアバター(仮想体)はシステム特権を付けてもいいよ
これはあくまで技術的調査だ オペレーティングシステム擬似人格体の作成も
特別に許可しよう 好きなアバター(仮想体)にして対話出来るようにしていいよ
対話で彼? ・彼女? のからバグの原因を聞き出せるようにすればいいんじゃない? 」
さすが若い人間の発想は違うと新国 滋はふぅと溜息がでる
早速自分のポータル・デバイス カイバーウェアに電子著名付きのデータがダンロードされ
イゲン・ルート・オンライン バグ調査プロジェクトにゴーサインがでた。
この物語をデータアーカイブ小説 ”オルティア・レコード” の作者に捧げる
1話 イゲン・ルート・オンライン
時は新暦 5xx年
旧暦は2500年で大きな時変を迎え幕を閉じ、暦を改めて新暦が始まり現在に至る。
VRMMO が一般の市民にようやく浸透し、
ポータル・デバイス カイバーウェアの所持 と エルマーチップの埋め込みが
国民の行政管理用として
義務付けれた、ニホンとは異なるニホンにあるVRMMO の開発会社
イゲンテック社 社員 開発室 室長
普通の日本人で背は180センチと高い 天才プログラマー
斉木 涼 30才独身男性 は此処でタッチキーに指を滑らせていた。
「うわぁ〜 分かんねぇ 何処にバグがいるんだよぉ また此処にカンズメか
おまけに頭痛までしてきた
ちくしょー 雛の奴に鎮静剤処方してもらうかぁ」
とごちている。
傍らにはデータアーカイブ小説 ”オルティア・レコード”を印刷した電子ペーパーが
ある
データアーカイブ小説とは嘗て 旧暦 2005年ごろ
ネット小説などと呼ばれていてプロやアマチュアが
こぞって創作小説を投稿したもので1000年経った現在はこのようなコンテンツ
を失わないように大規模データアーカイブとして保存されていて新暦 5xx年も
尚、活発な創作活動のヒントやネタ探しに活用されていた
幸いこれらアーカイブ物は、著作権も切れていて、
斎木 涼は自身が手がけたプロジェクト イゲン・ルート・オンライン を創造するに当たり
世界観をこのデータアーカイブ小説 ”オルティア・レコード” を参考に
データが化けて読めなくなった箇所は、
モンスターや世界観や登場人物などの設定を独自の解釈を加えてゲームとして成り立つように
ソフトの屋台骨を創生したのである。
政府の肝入りの新世代コンテンツ推進プロジェクトコンペに最優秀作品に選抜され
国家予算が割り当てられた
彼 涼 がタッチキーに指を滑らせているここはソフトウェア産業特区の大半の占める
夢幻テックホールディングスの子会社ソフト部門の開発室の一角で
深夜も彼の呼びかけに賛同して数人のスタッフと共に
とある頻発しているいる プログラム上のバグ(誤り)を調査していたのである
即興でトレーサー(追跡)用プログラムを組みそれを走らせて網に掛かったら更に
範囲を狭めていってヤツ(バグ)を追い込むのである。
一見、旧いゲーム画面のような画面がホログラムモニターに
映し出されていた自キャラを操り、あたかも迷宮のようにオブジェクト化したソースコード群
(文字列群)をたどる。
「斎木さん またデバック(バグ穫り)ソフト考えたんですか? 」
「あぁ、文字列追うなんてのはボクには合わないな 感覚だよカン・カク」
「このデバッカー売り出したらまた特許入るんじゃないですか? 」
「会社を儲けさせるつもりはないな でもそれいいかもな
9:1ぐらいだったら考えてもいいや 」
「がめついですね」
「そりゃ人類史始まってからカネは大事なものだからな
少しでもボクの懐に入らないとね
これ制限かけて後でサーバーに上げておくから自由に使っていいよ」
「あざーす 斎木さん 使わせていただきます」
「うん いいよ でも上司に向かって あざーすは無いっしょ 君たち」
「すみませんでした。 」
「ボクは気にしないけど新国最高執行責任者(COO) 前では気を付けてくれ
後で、お目玉喰らうのボクなんだからね」
「オッス」
「いいよ、あと適当に休みを取っていいし自宅が遠い人から上がっていいよ
若い子も親御さんが心配するといけないし お上が煩いからね」
「斎木さんはいいっすね 此処の敷地内に自宅があって美人の妹さんもいて」
「莫迦言っちゃいけない 雛のヤツはボクより言葉使いに煩いし
こっちが彼女に世話に成っている様なものだよ
食事当番もツケが溜まっていてそろそろ雷が落ちそうだ くわばらくわばらっと
この会社に飼い殺しにされているようなものだよ はは」
こんな会話でそろそろ、時計の数字のゼロが4つゾロ目になろうとしいた。
「んじゃ、俺は上がらせてもらいますよ 親父やお袋の介護が有るもんで」
「おれも嫁さんが待って居るので 後、あす遅出して良いですか」
「いいよ、ID通すのを忘れないでよ」
「「...「お先です」...」」
と数人のスタッフも上がり涼は一人思考迷路の中を彷徨っていた。
(そういえばここ一ヶ月ぐらい 雛の料理食ってないな)
と冷たくなった珈琲に口を付けた。
「いい上司っぷりではないか 斎木君 」
「これは 新国 さんもしかして、全部ご覧になっていられましたか? 」
「あぁ、全てな 君がまた新しいデバッカーソフトを即興で作成して
会社云々言っていたあたりからな。 」
「しっ失礼しました。 」
「気にしなくていい 君の無くなった親父さんとは同期の中でともにソフト開発を競った仲だ
まぁデバッカーソフトに関しては 9:1は無理でも処遇は考慮しようじゃないか ハハハ
それで進捗はどうかね 例の バグは何処に巣があるのかね? 」
「それですがわたくしにも分からないのですよ どうにも数値上じゃ限界ですね
...で... 無理を承知でお願いなんですが ボクを VRMMO無いに潜らせて貰えませんか
決して遊びでは無いんですがねぇ これは”現地”に出向かなと分からないと思うのですがね
どうでしょう? 」
「君は運がいい(?) かな ついさっき最高経営責任者(CEO)
レーベン・バックラー会長 から直々に 指令が下ってね今まさに君の言ったような事を
言われたよ 私のようなお硬い技術者にとって 例え業務でも一般プレーヤーに
混じってVRMMO オンラインゲームってのは抵抗が有ってね」
「わた......ボクも造るのは好きでも ...プレイや攻略には興味ないですね
雛のヤツはアカウント有るかわかりせんが」
「そうかでも 今回はどうしても潜ってもらうぞ
アバター(仮想体)は好きに作成してれていいしデバックモードの搭載・
調査するためにシステム特権を付けてもいいしあと半ばブラックボックス化している
オペレーティングシステムの擬似人格体の作成も許可をもらっている。
ゲーム自体はよくわからんが 武器や防具等も有るんだろ」
「えぇ、攻略はプレーヤ自身の体技も有りますが
武器や防具は重要な要素ですね。
できればボク専用の武器アイテムを造る許可頂きたいのですが? 」
技術調査目的ということであればこれくらいの特権はあってもバチはあたるまい
他のプレーヤからチート行為(不正行為)の評判さえたたなければ調査もスムーズに進むだろう。
今回は技術調査の会社命令で国家プロジェクトの後ろ盾がある巨大ソフトでもあるし
思い入れも当然有る。
是非、自分の目の黒いうちは面倒を見切りたいと思っていた。
VRMMO イゲン・ルート・オンラインは
現在、拡張に拡張をかさねて500EBにも及ぶという
量子メモリの恩恵でこれだけのデータでもまだ余裕が有るらしいが。
その上、アイテム仕様は公開されていて
各社が独自にアイテムを開発して各国政府に認められると課金アイテムとして
課金やゲーム内通貨で販売可能なのでそこで齟齬が生じたのかも知れない
やはり自ら潜るのが一番最善策に思えた。
「もちろん、だた会社にはアイテムは登録申請してくれ
マスコミ対策もせねばならんし、一般プレーヤーから物言いが来たらこういうことで潜ってますということを
公にせねばならん 後、作成した武器以外の所持は許可できんから
慎重にな」
「はい、では出来ましたら 一度お見せします電子申請の許可が降り次第潜りますんで」
「うむ、いいだろう君の作品をあすの19時の会議まで見せてくれ
そこでぼくは理想のアバター(仮想体)を考える
現在では、マウスやトラックボール等で立体造形する必要は無く
ホログラムディスプレイの電源入れてデータグローブをはめ大まかな形を捏ねる様に造形して
手には立体ホログラム造形用の
スタイラスペンで細かい調整をする
まるで実際に粘土を捏ねる様に立体オブジェクトを操作出来るのである
尤も、単なる操作はカイバーウェアの視点移動でカーソルが操作できるが
立体はやはり手に取る工程が一番いいと自負していた。
オルティア・レコードでは 作中人物の大錬金術師が手違いでホムンクルス体の少女の
躰に入って冒険する物語だったが
少女体にするつもりはなく
カッコいい銀髪碧眼の好青年風に仕上げる
髪は長髪でオールバックで襟元近くで結わえて青年執事風にした
職業は、作中でホムンクルス体の少女は剣術の心得が無いようで
召喚士を選んでいたが
ボクもそれに倣うかなと思い
リョウ (斉木涼)
愛称: リョウ 男性
種族: ヒト族
武器
背は現実
メイン魔導書 旧き闇の蛇
サブ武器 鞭 骨噛みの尾
とし
メイン武器
魔導書 旧き闇の蛇
レアアイテム 設定
強化スロットを最大の8スロットにして空で作成
鞭 骨噛みの尾はゲーム内に存在しないがあくまで副武器である
レアアイテム 設定
強化スロットを最大の8スロットにして空で作成
職業 : 召喚士
召喚獣 ケルベロス x1
ヘルハウンドx2
大氷狼の子供x1
上位召喚 遺産の少女x2 10体枠
メイン魔導書 レアアイテム 旧き闇の蛇
サブ武器 レアアイテム 鞭 骨噛みの尾
で作成するいずれもスタートクライントには未収録のデータであるが
事前の解析を防ぐため、このVRMMO イゲン・ルート・オンラインでは
キャラクターが目にして初めてアイテムデータやマップデータが
読み込まれる方式を採用しているので喚び出して周りのプレーヤーの視界に
入らなければ読み込まれる心配もないのでこれに決定した
後は一番こだわりのオペレーティングシステム擬似人格体である
これにはブラック珈琲をすすり気合をいれた。
ゲーム専用OS名 シーディアだがそのままだとあからさまなので
愛称: ネーベリア
種族: システム擬似人格体
ボクが潜った際にシステム管理者特権で対話するためのもので
言わば対話型のデバッカー兼OSのインタフェースであり
孤独なデバック作業で単調に成りがちな場の雰囲気を和らげる為
高度なAIとディープラーニング機能を備えの癒やしのマスコットでもある様に
豊かな感情を持つ擬似人格を創造し
外界とのデータベースともリンク可能に機能をもたせる。
肝心の容姿であるがデータアーカイブ小説 ”オルティア・レコード”
作中のライブ・アーテファクトと呼ばれる遺産の少女を
参考に
背は150センチ
髪は銀光沢の銀髪
瞳は鈍い金色
唇はシルバーピンク
ピンクベージュのメッシュが血管の様に入っている
ゆるふわのウェーブロングで毛先がカールしている
すこし生意気な妹 雛の性格をモデルベースにする。
フリルやレースが良く似合う少女に仕上げ 相棒に設定する
相棒のNPCは課金アイテムで高価だが自社で独占販売しているので
ポケットマネーで権利を購入した。
不死属性キャラクターで 多少の戦闘は出来る様にと黒薔薇の鞭を
袖柄に仕込み外観は概ね満足する。
そして小説の作中でも彼女らの髪は自在に動かし遺物にアクセスしてたのでこれも採用し
プログラムコアにアクセスしたりコードをディスアセンブラ(コード逆翻訳)する機能をもたせた
これらの機能はかなり危険なのでAI任せにはせず
暴走を防ぐ意味で腕輪型アイテムの端末にメニューをとして
搭載し此処で機能をアンロックして彼女に指示するつもりであった。
これが無いと修正やコンパイル(マシン語翻訳)も出来ないし今回の目的の大儀でもある
デバックツールとしてはこれでもかというくらいは機能をもたせた。
まぁ例えゲーム内でモンスターにやられても姿が霧散するだけで
死なないがボクが死に戻ってホームポータルに戻されたら12時間のクールタイム
を設けている、これは周りのプレーヤーに怪しまれないようにするためでもあった。
「えっなにこれ可愛い 涼兄ぃ このキャラでプレイするの?
うわぁ気合入れちゃってまぁ 涼兄ぃの好きな小説みたいにとうとう女の子に目覚めちゃった? 」
小説では錬金術師がオンナノコとして自覚する過程が書かれていた。
唐突な声掛けに驚くと 旧式の補助液晶ディスプレイには妹の姿が移っていて
メインのホログラムディスプレイの少女をペンで突いていた。
「うぉ、雛かよ 驚かすなよ チガウチガウ これは、いまゲーム内で起きているバグ調査の
為のデバックツール兼マスコット相棒 だよ
ボクのキャラはこっち カッコ良いだろ」
と自分のアバター(仮想体)を見せる。
「ふーんまぁセンスはいいわねこっち(アバター)が現実だったらいいのにな」
「どうせボクはこんな感じだよ いつまでもボクって言う癖も抜けないし
まいったよ」
「ふん まぁいいわ仮眠取れば? 午後一には起こしてあげるから」
「そうかじゃあ たのむわ 午後一には起こしてくれ おっとこれを保存してっと
あとは上の承認待ちで決定をクリックだけだしな」
と作業端末の電源を落とすとすかさず睡魔が襲う時間は3時半であった。
「ふふ 相変わらずの涼兄ぃさん 」
とボクより20センチも低い背からは流れるような黒髪をなびかせ
彼女もさっきまでシャワーを浴びていたらしくほのかに湯気とシャンプーの匂いを振りまいて
IDカードを端末に通した。
彼女 斎木 雛 は此処イゲンテック社の階上の医療部門の責任者で
多くのスタッフ抱える才女でも有り女性医師でもある。
そしてこのボク 最高技術責任者 (CTO) 斎木 涼 のたった一人の肉親でもあり
出来すぎる妹でもあった。
両親は、父はVRMMO のダイブ時の事故で、母は患者の診療中に医療機器の暴走に巻き込まれ
既に鬼籍に入っている
皮肉なことにボクは父と同じVRMMO 開発者として、そして妹は母と同じ医師としての
道を歩んでいた。
次回 2話 変容と始まりの街
お楽しみに
設定集は後ほど投稿します
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